35話 「予定にないことをしやがる」
「よし、風呂の水を沸かさないとな。」
焚き火がある場所まで戻って来ると、3人で準備を始める。
「しかし、随分と豪快に持って来たな。」
川から汲んだ水は、5m四方ほどの容器に収まっていた。
「まあな、一つの場所から持って来るのも良くないから、何箇所かに分けたけど、かなりの量になったな。」
「わざわざ、後何m歩けばここが見えていた。なんて解説付きでな。」
「いいじゃないか、木苺とか取って回ったし。」
「それで?お前が今かじっているのはなんだよ、ポテチ。」
「サトウキビ。」
木苺が入った袋を持ちながら、半分ツッコミ待ちの様にも感じる行動を起こす。
「お前、今から暇だろ?それ、砂糖に変えといてくれよ。」
「いきなりだな。」
「いきなり変なことしたのはお前だろうよ。」
「めんどい。」
「あのな?お前の後ろにある物体はなによ?」
「サトウキビ。」
「それを放置したら?」
「腐る。」
「わかってるじゃないか。風呂が出来上がるまで1時間はかかるだろうから、その間によろしく。」
「めんどい。」
「だったら採ってくんなって話なんだよ!」
「よーし、4つに分けて沸かし始めたぞ!ってどうした?」
風呂沸かしの準備を終えたコーラが戻って来る。
「あららっ、なんでそんなに持ってきたんだよ。」
「いや、ビックリするかなって。」
「ビックリはするよな。でも持って来たからには作業するのは当然だな。」
チラリとサトウキビの束を見る。
“はあっ”と一度ため息をする。
「見たところ100本はあるな。ちまちましてたら時間がかかりすぎる。時短しよう。」
それからがあっという間だった。
腰くらいの高さにサトウキビの茎が乗る程度の、波状のくぼみを作る。
その先にはアルミ製の機械を作り出した。
機械は20センチ程の長さだろうか、横には両サイドに回転ハンドルがあり、出口には排出口の受け皿。
受け皿は5つに分かれており、それぞれ筒につながっていた。
筒の下に大口のペットボトルが置かれていたが、ほぼ土中と言える場所だった。
「とりあえず、皮を剥こう。一回で20本位皮が剥けるだろうよ。」
「いや、待て。まずこの筒はなにさ。」
「極限まで細かくします。」
「ペットボトルが土に埋まってるのは?」
「高さが足りないから、埋まっているだけだ。まあ、たまたまだな。」
そう言い終わるとコーラはザッとサトウキビを置き、横に転がして溝に入れる。
アルミの部分が開くと、始めの部分は空洞でその先にギザギザがあり、出口付近は仕掛けがありそうだったが、よく見えなかった。
「よし、ポテチ一緒に回すぞ。」
回し始めると、サトウキビがどんどんと機械に流れていく。
バリバリと音をたてながら、皮の部分が機械の下と、入り口側のペットボトルの中に落ちる。
剥かれたであろうサトウキビは、その姿をあらわすことなく、細かな粒と汁となって、ボトボトと出口から落ちていった。
が、筒にはいるやいやなガガガガガッ!と豪快な破砕音が響き渡る。再度現れたのはサトウキビの面影など微塵もないほどにすり潰され、もはや固形物とは言えないほどのものだった。
「まるですりおろしたリンゴみたいだな。」
「感心してる場合じゃないぞ、遭難者。次をセットしてくれ。」
ポテチとコーラがハンドルを回す間に次のサトウキビをセットする。
ほぼ苦労することなく皮が剥け、ペースト状とも言えるサトウキビが出来上がった。
「よし、いい感じだな。150キロって所だな。ポテチ、濾す為の袋を作ってくれ。」
「どのくらいの大きさにするんだ?」
「今から台を作る。それに合わせてくれ。」
ドン!と出てきたのは高さが2mは超えるアルミ缶だった。
「デカすぎ!」
と思わず声が漏れる。
「一気に濾したいからな。この中に袋を入れてくれ。」
袋の準備が終わると、コーラはいつもの様にサトウキビが入った容器の厚みを変えて持ち上げ、アルミ缶に流す。
アルミ缶下に置いているペットボトルに汁がボトボトと流れ出る。その間に蓋をして、出現したのは丸太だった。
「何故ここで丸太?」
「ダンボールで作ったレバーだよ。3mはある。これを3人で一気に押し下げて搾り出すぞ。」
「そうか。いきなりだからビックリしたよ。なあ、それならもっとレバーを長くしたら?」
「???」
ポテチは不思議そうな顔をするが、こちらはそれに気付かなかった。
「それでさ、大量に水も仕入れたんだから、それを乗せたらいいだろ。自分たちで乗る必要もないしさ。」
「確かにそうだな。」
コーラは段ボール丸太を2倍の長さにする。
さらに、水を入れた容器を移動し、丸太に乗せる。
「よし、セット完了だ。水の容器の支えを外したら一気に搾り出せるぞ。」
「そこまで重くなくてもいいだろ。」
「まあ、インパクトはあった方がいいだろ?ポテチ、カウントしてくれ。」
「3.2.1.0!」
ズボボボボッ!
実に心地が良くない音を豪快にあげる。
「めっちゃ搾り出させてるって音だな。」
「なんか俺、お腹痛くなって来たかも。」
「腹を押さえるなよ、ポテチ。」
しばらくすると、汁が全て落ち、緑色をした液体のみが出来上がった。
「そうしたら、鍋に入れて熱を加えるぞ。」
「そのまま投入するのか?」
「そうだな。焦げ付かない様にしないといけないけど、まあ大丈夫だろ。」
「湯煎したら、焦げ付かないだろ。」
「なんだ、遭難者。お前もアカシックレコードで調べたんか?」
コーラとの会話を聞いたポテチが口を開く。
面をくらい、思わず固まってしまったが、すぐさま
「おい、やめろよ!」
とコーラが止めにはいる。
どうやらバカにする言葉ではないらしい。
「まあ、お褒めの言葉と受け取っておくよ。」
気を取り直して、鍋に水を入れ、その中にさらに鍋を入れて湯せんをする。
「さて、この液体が70度位になったら石灰を入れるんだけど・・・。」
「なんだ?」
「石灰ってのは珊瑚とか貝殻を高熱で焼いて作るから数時間かかるんだ。」
「えっ?だったらこの汁その間に悪くなるんじゃないか?」
そんな会話をしている中、ポテチが何かを混ぜていた。
「おまえ、それ・・・。」
「石灰と水を混ぜてる。」
「実は昨日作ってたんだ。」
と指で鼻をさするコーラ。
「3分間クッキングかよ!」
「いやあ、石灰ってさ、水の浄化とか衛生面で凄く重宝するから準備していたのよ。」
「サトウキビに使う予定は?」
「もちろんない。」
呆れていると、ポテチが今度は袋を火にかけていた。
「何してんだ?」
「今出来上がった木炭を真空で燃やしてんだ。性能が格段に上がるんだぜ。」
「そうだぞ、よし。準備も整ったし、石灰水を早速入れるぞ。」
呆れ顔が戻ることがないまま、砂糖作りは続いていく。




