31話 「秘密基地は夜も騒がしい」
「あー、酷い目にあった。」
満点の星空を見上げならがら、力を抜いて休む。
その間、ずっとバシュン、バシューンと、音が聞こえてくる。
「よく飛ぶぞぉ。」
「やるなあ、なら俺は尾翼を取り付けて……。」
バシューン!
「よし、よく飛んだ。この感じなら全部自作できるな。」
「ほうっ、私に挑戦するのかね?そんな細くて脆弱なのに。」
「バカを言え、お前の形なんてもう飛距離も上げられないだろ。まあみてろ!」
パシュッ……ピュイィィー。
「どうだ、記録更新だ。」
「はぁっ?!軽くしただけじゃねえか。ロケットは重さこそ正義。見せてやるよ。」
バシューン……ドンッ!バババババッ!
「どうだ!これぞロケット。」
「汚ねぇ、ただの2段噴射じゃねえか!」
「しかも一定の距離でシリンダーが外れる高性能だぜ!」
「固定した紐つけただけだろ!だったら見てろよ!」
パシュッ……ピィィン!ピィィン!ピィィィン……
「どうだ!炸裂ロケットォ!」
「さっきから、ポテチよ。お前はわかっない。」
「なんだと?」
「ロケットってのはな、本体は回転なんてしないんだよ。尾翼をつけてからずっと回転してんじゃねえか!そんなもんはな偽宇宙船と一緒だ。」
「だったら!!!」
パシュッ…バババン!…パシュッ!シュコォー、パシュッ!シュコォー
「うっ、やるなぁ」
「はっはっはぁ。どうだねコーラ君、尾翼だけを回転させて安定性と飛距離、更に高さを兼ね揃えたロケットは!」
「だったらこっちは!」
「なんだ、二回りデカくして」
バババシューンン…バン!ゴォォォ。バン、シュゴォォォ!
「切り離しが見事じゃないか。」
「どうだ、これが本来のロケットの魅力よぉ!」
「ぬかせ!ドンドンいくぞ。」
パシュッン…シュイィィン!スパパパパ
バイン!ゴゴゴゴゴ…バン!!!ガォォォーん
……さっきからうるせぇ。
この夜空に相応しくないうるささだ。
「ほら、俺の方が飛んだ!」
「はあ?俺のロケット感は最高だろぉ!」
「おい、遭難者ぁ」
「なんだよ、2人して声を揃えて。」
「どっちがより遠くに飛んだか、あっちに移動して確認してきてくれよ!」
「行くわけねえだろ!!行かなくてもお前たちならわかるだろうが!」
「行ってきてくれよ、あいつがなかなか認めないんだ!」
「そりゃ、お前のことだろ!なあ頼むよ。」
「いやだ!途中から俺に狙いを定めるのは目に見えてる。行くだけ無駄だ。」
「・・・」
「それ、絶対人に向けるなよ?怪我では済まなそうな音をしてるからな。」
「音だけかもよ?」
「そうだな。」
「やめとけ、収拾がつかなくなるから。一個、ルールでも決めてそれで決着つけたら?」
「いいだろう。」
「望む所だ!」
「なら、頭上の1番輝いてる星にめがけて打ち上げなよ。高く飛ばした方が勝ちな。」
2人は自信満々に笑みを浮かべると、準備を始める。
「ならカウントをするから0で飛ばすんだぞ。」
「3.2.1……0」
バシューン……!
バババン、コォォ!
バアアァッン!
パラパラパラッ……。
「・・・」
「・・・」
「おー、激しくぶつかったな。はい!引き分け。」
「はめやがったな。」
「ぶつかるなんて計算できないだろ。ぶつかるかも程度にしか思ってないよ。」
コーラは潮時かと諦めた表情だったが、
ポテチは大事なものを失ったかの様に膝をついていた。
「充分遊んだだろ?はい、撤収。」
聞こえていなかったのか、ポテチはまだ動かない。
「……いつか。」
小さく呟きながら、コーラは静かに近づくと、
肩へぽんと手を置いた。
「有人飛行で宇宙まで飛ばそうぜ。」
「ああ……。」
ようやく立ち上がる。
そして二人は同時にこちらを振り向いた。
「あいつ、一人乗せてな。」
にっかり笑う。
昼間に何度も見せたあの笑顔だった……。
「通信機能がついてるなら考える。」
「必要ないな。」
「無理だしな。」
「俺に死ねと?」
2人は無言のまま、拠点の方へと戻っていった。
……全く、あいつらは遊びの延長でやばいことばかりしやがる。
ゆっくりと歩きながら、拠点に戻るとコーラから声をかけられる。
「おう、お前の分のベッド、作っておいたぜ。」
「本当は2つ作ってどちらがいいか選んで欲しかったんだがな。ベッドがコーラ、掛け布団は俺ってことになった。」
「短期間なのに立派だな。ありがとう。」
ペットボトルとポテチ袋って万能なんだな。
と勘違いしてしまう、その位ベッドとしての使い心地が良かった。
早速仰向けになって寝転ぶと、満天の星空が飛び込んでくる。
「改めて凄いな。この景色は。」
「うーん。もうちょっとしっかりさせたいかな。」
「まだ秘密基地っぽさが足りないよな。」
「なら、隠し扉とか?」
「ほう。」
「脱出シュートとか?」
「他には?」
「後は拠点を見つけられにくくするための目隠し木とか?」
「それ、いいじゃないか。遭難者。」
「どれも出来るな。脱出シュートを作るなら2階を作らないとな。」
ふと、岩の上を見る。
「2階から脱出じゃなくてさ、上に避難ってのは?脱出シュートなのに上に行くって秘密基地らしいだろ?」
「おお、冴えてるじゃないか。」
「いいね。それは作ろう。」
「気に入ってくれたならよかった。でも2人とも、今は作るなよ。」
「なんでだ?」
「もう今日は空を飛びたくない。」
「飛ぶとは限らないけどな。」
「安全だとしても、今日は実験台にはならん!」
「なら、起床時だな。」
「はっはっは!ポテチ、お前は随分と優しいじゃないか。」
「なんだよ、急に。」
「秘密基地のギミックなのに、簡単に披露するなんてさ。本当にやばい時に使ってこその隠し玉だろ?」
ポテチは「ほおっ」と声を漏らし、感心したような顔を見せる。
「そうだな!ここぞって時に出した方がカッコいいよな。」
「そうだろ?その時を楽しみにしておくよ。」
ポテチは強く頷いて、既に満足そうだった。
「……上手いな。」
すぐ横でコーラが小さくつぶやいた。
もう、今日はこれ以上動きたくない。
出来れば話をするだけにとどめておきたい。
「明日になったら目隠し用の木でも探すか?」
「そうだな。ポテチ、どんなのがいい?」
「デカい木だな。」
「デカい木にするのはいいけど、その木を移動させたことで、周辺に影響がないようにしてくれよ。」
「わかった。気にかけとく。」
「コーラもその辺頼むよ。」
「ああ、じゃあ、今日はもう寝るか。」
「ああ。」
満天の星空を見上げながら、ゆっくりと目を閉じる。
今日は本当に、色々あった。
まさか、楽しい先に地獄があるなんてな。
明日もこんな感じなのだろうか?
……いや、もう考えるのはやめよう。
そう思いながら、俺は静かに眠りについた。




