↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけが使えないアカシックレコード ~規格外のクラスメイトたちに命乞いして無人島を生き抜きます~  作者: クレハ コウヨウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/48

27話 「世界にさよならしなくちゃ」

一瞬で渦潮の遥か上空へとぶち上げられた。


身体が浮く。


一転してフワリと無重力が訪れる。


打ち出された衝撃だけで、

心をズタズタにするには充分だった。


球体が開く。


「は?」


眼下には青い海。


遥か下では、さっきまで飲み込まれていた渦潮が小さく渦を巻いていた。


……ここから落下するのは分かり切っている。


「なんでここで生身を晒すんだよ!!!」


「まかせろ!」 

ポテチが叫ぶ。


袋が瞬時に形を変え、

頭上で一枚の巨大な薄膜へと広がっていく。


「どうだ!優雅な特大パラシュートの感触は?」


風をはらみ、清々しい風が3人を包む。


ポテチの袋に吊るされながら、

ゆっくりと、

まさしく優雅に海へと降下していく。


「ああ……助かるのか……」 


ガタガタと震えながら、

私は青空にたなびく巨大なポテチのロゴを見上げた。 


ーーそういえばポテチのロゴ。初めてみたな。


呑気な感想が頭をよぎったが、

まだ命はひろってない。


ここは海の上だ。


着水したらどうするんだ?

そう思い、2人の顔を覗く。


 案の定、コーラとポテチはパラシュートの紐を握り直しながら、お互いを見合わせてニヤリと笑っている。


まだ何かある!!!


「なぁ、これ着水する瞬間に、また噴射したら滑空できるんじゃね?」


「いいね、それ採用」


シュコシュコ――

とまたしても死神の声が空に響きわたる。


「やめてくれぇええええっっ!!!!」


虚しい悲鳴を空は優しくも残酷に包みこんでくれた。


「大丈夫。着水するときに使うからさ。」


「そう、そう。安心して空の旅を楽しめよ。」


「楽しめるか!!」


「そうは言っても、見てみろよ。この景色を。」


ポテチが両手を広げてアピールする。

空から見下ろす景色はとても雄大だった。


「島からまだ離れているだろ?」


「ああ、離れてるな。」


「だからいるだろ?ロケット噴射。」


とんでもないことを言っているが、受け入れるしかなさそうだ。


「この島以外は陸ってないんだな。全体もまるで見えない。」


「100km以上あるからな。」


いつもならこんな時はコーラが答えるのだが、

今回はポテチが話をしている。


どうやらペットボトル噴射のイメージを膨らませているようだ。


「よし!決めた!」


「ちょっと待てよ!」

とコーラの決断にポテチが止める。


「もう一回あの渦に行くってプランは?」


「残念ながらないな。」


「えっー。なんでさ。」


「遭難者が死にそうな顔をしてる。」


「最初からずっと勘弁してくれと思っているよ。」


ようやく自分の思いの丈を話すことができた。

これですんなり帰れれば最高だ。


「だがな、エキサイティングはまだまだ続くぜ!」


何故か白い歯を輝かせニカッと笑うコーラ。


「そうこなくちゃ!!」


ポテチも大喜びだ。


このバカどもに良心など存在しなかった。


「なぁに、帰り道にちょっと寄り道するだけさ。何もわからないと怖いだろう?ルートを教えてやる。」


「地獄のルートなど知りたくないわ!」


「まあ、聞けって。さっきの古代遺跡、てっぺんを飛び越えただけじゃもったいないだろ? 」


「避けてください。」


「今度はあの中央にある、巨大な石のアーチ(を弾丸みたいにぶち抜いてビーチへ帰る!」


「どうやって開けたんだよ!!」


「最高! よしコーラ、あの門のド真ん中を狙え!」


ポテチの笑いが止まらない。とんでもなくウキウキしてやがる。


「任せとけ!」 


冗談じゃない。

あの遺跡の門は、どう見ても狭い。


少しでも進路がズレたら、岩壁に激突して木っ端微塵になる。


「よし、体勢準備。」


今の高さは大体15m程の高さだ。


不安で一瞬目を閉じる。


目を開けると信じられない光景が広がる。


「貼り付けられてる!!」


パラシュートはそのままだが、海面にいつでも突入できる様に翼が広く三角形になっていた。


「なんで、おれだけ仰向けなんだよ!!!」


2人はしっかりうつ伏せで

滑空準備が整っている。

当然ゴーグル付きだ。


「うつ伏せにしてくれよ!」


「最初からこれだし、やっぱり締めはこうでないとな!」


「最後まで嫌がらせかよ!」


「しっ、喋ると舌を噛むぞ。」


コーラが恐ろしく冷静な声で警告を発した。


覚悟さえ、置き去りにしなければならないのか。


「ポテチ!」


コーラが合図をすると、ポテチはパラシュートを消す。


海面に触れるかどうかの瞬間にペットボトルをいっせい噴射させる。


海水を猛烈巻き上げ、激しい白煙と共にギガマッハ級の推進力が生まれる。


 ――ガガガガガガガガガガッッ!!!!!


音を置き去りにする猛スピード。 


そのために調整したであろう翼は触れることなく進んで行く。


「ぶべべべべっ。」


当然ながら声などあげられない。

凄まじい風圧で顔面の肉が後ろへ引っ張られる。


「風すげぇ、翼も頑丈!」

ポテチは相変わらず興奮気味だ。


なすすべなくまたしても人形の様に固定されたまま、再び爆速の地獄へと突入していく。


「進路いいぞ!」


コーラも絶好調なようだ。


「門って狭くないか?」


「大丈夫。通過時はたたむから。」


そんな会話をしていたが、聞こえる訳もない。

風の音も、ペットボトルの噴射も聞き分けられる状態ではなかった。


目の前に、あの古代遺跡の巨大な石門が迫る。


迫る、というか、

一瞬で視界の全てが岩肌で埋め尽くされた。


ーーもう、やめてくれぇ。も、

殺されるー。もいうことはできない。


「いっけえええええ!!」

「イエエエーーーイ!!」


 ―――バシューーーーーーーーーンッッ

と門を突き抜ける!


鼓膜を激しく震わせる、猛烈な空気の破裂音。


凄まじい衝撃が身体を押し潰す。

門を通り抜けた際の超強烈な風圧が、

うつ伏せになって無抵抗な体を

これでもかと引きちぎらんばかりにバタバタと揺らす。


その風圧のあまりの凄まじさに、

背後で遺跡の一部がガラガラと崩れ落ちる音がかすかに聞こえた。


……殺人マシーンだろ!これ。


なんとか目を開けると、すでに遺跡を遥か後方に置き去りにしている。


「後は何があるんだ?」

振り絞って声をだす。


「後は着地だけだ!飛ぶこともできるぞ!」


頭に両手を持っていき、バツのサインを送る。

必死の抵抗だった。


海岸に近づくとゆっくりなスピードになり、

計算尽くされた様に砂浜にたどり着く。


「よーし、ナイス着陸体制!」

いや、確かにすごいよ。


「遭難者、お疲れさん!」


シューーーーーッ!と

いうボトルの残響音と共に、船はその役目を終え、ようやくその動きを完全に停止した。


「本当にここは地上か???」


ようやく解放されたのだが、地面と再会をはたすも世界は周り続けていた。 


三半規管は完全に終了しているのだろう。


今がどうなっているのかも分かりはしない。


「ああ、世界にさよならしなくちゃ」

何故かそんな言葉を残し、砂浜に倒れこんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。