25話 「どこのアミューズメントパークだよ!」
「ふっ、遂に古代文明を復活させる時が来た……」
髪をかきあげながら口上を述べるコーラ。
“そこまでやってくれるんだ”
そう思っていると、
――バァァァン!!
左右の海面が爆ぜた。
壁のような水飛沫が空高く舞い上がる。
「うおっ!」
驚く暇もなく、
バァン!!
今度は十字を切るように、水柱が交差する。
「まるで、ここから先は神域だと言ってるかのようだ・・・。」
アゴの汗を拭う仕草を見せるポテチ。
バシャァン!と飛沫が落ちると、
音は止まり
波はしずまる……。
ただ、静かな風が頬を通る。
――こぽっ。
小さな泡が一つ。
こぽ。
こぽ、こぽ。
泡は円を描くように増え、
海面そのものが沸騰しているかのように激しく泡立ち始めた。
「……来るぞ。」
珍しく真面目な声で呟くポテチ。
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!
海の底から地鳴りが響く。
泡が弾け、
白い飛沫が空を覆う。
波が逆巻き、
海そのものが持ち上がっていく。
「見よ!」
コーラが両手を広げる。
「これが栄光の古代遺跡だ!」
ズバババババッ!!
黒い影が浮かび、
ゆっくりと姿を現す。
「あ、あれが伝説の……。」
思わずポテチが息を呑む。
海面を押し退けるように巨大な岩盤がせり上がる。
バリバリ、バリバリバリ!
不気味な音が出続け、泡の勢いも最高潮に達する。
「はあー、はっはっは!」
バアアァッン!
天を衝くような水飛沫が上がる。
霧の様な飛沫が消えると
これまで眠っていた岩盤が、その全貌を現し、
一気に泡が晴れた。
ざあああぁぁ――。
岩肌を流れる無数の滝。
静かに姿を現したその光景は、
まさに海底から蘇った古代遺跡そのものだった。
「ふうっ……。」
と息を吐き、パチパチと拍手をする。
「いやあ、堪能したよ。まさかこれほどとは。」
感想を述べると、コーラは右手をお腹へと下ろすと深々とお辞儀をする。
その仕草も見事だったので、もう一度大きく拍手をする。
すると、ポテチも何故か同じ仕草をする。
お前も?と疑問に思いながらも、空気は壊したくなかったので、さらに大きく叩いた。
「エキサイティングな演出だったよ。」
「満足そうで何よりだ。」
にこやかにコーラが話すと、
「なあ、あの岩の天辺ってどうなってるんだ?」
とポテチが投げかける。
「ああ、あれはな。」
と言いながら、手招きをするので2人で近く。
……すると、コーラが3人の足元からペットボトルを高く伸ばし、岩の天辺を見下ろす形になる。
「気になるって、何も無さそうだぞ?」
と不思議がると、コーラとポテチは顔を見合わせ、
ニヤッと笑う。
2人はそれぞれの腕をこちらの肩にかけると、
「まあ、まあっ、座ろうぜ。」
その先に見えたのは、
海へと繋がる“道”だった。
――ガコッ!!
「ちょっ……待……」
止めるにはすでに遅かった。
青空が広がり、風が顔面に突き刺す!
「やっほおっっ!」
とテンション高めの二人。
対してこちらは、
「ばばばばばっ。」
としか言えない。
なんとか視線を下に向けると、海はまだ遠く、身動きが取れないのでキツさが増す。
「楽しいなあ、おい!」
……楽しくねえよ!
「うひょーっ!」
勘弁してくれ。
「よっしゃー。」
とコーラが叫ぶと、滑り台の先端が上に伸びる!
「やっ、やめっ。」
という声も虚しく、3人の体はペットボトルを離れ、打ち上げられた。
ざばあぁぁん。
完全に沈むと、
ペットボトルで3人の体を引き上げ、
大笑いするポテチとコーラ。
「お前ら殺す気か!」
「いや、楽しかっただろ?」
「身動き出来なかったわ!」
「エキサイティングだったろ?」
「恐怖に全振りだったわ!」
あまりの温度差に、手で目を覆う。
「せめてカウントはしてくれよ。」
「そうかわかった。」
と声が聞こえると、体が持ち上げられた感覚がした。
「ちょっと待て!」
「なんだ?」
「おかわりは求めてない・・・。」
「そうか。」
またしても、2人はそれぞれの腕をこちらの肩に回す。
「身動き出来ないのがさらに怖いんだって!」
思った通り、遠い所に海が見える。
「3!」
「2!!」
「1!!!」
楽しそうに
そして高らかに2人の声が揃う!
「うおおおっ!!!」
こちらも覚悟を決めて声を出す!出した方がキツくないらしいからだ。
「0」
と共に“ガコッ”と音がし、
――バシャァァッ!!
滑り台の両脇から海水が噴き上がる。
……こんなの聞いてねぇ!!!
「ばばばばばっ。」
塩辛え、目ぇ痛え。
なすすべなく、降下する。
2人は目に塩が入らない様に、それぞれペットボトルと袋を変化させてゴーグルを装着していた。
……汚ねぇ。
まじで汚ねぇ。
「お…ま…え…ら…。」
目に入った海水は涙へと姿を変える。
「あははははっ、塩辛ぇ!」
と2人は余裕そうに笑う。
……こっちは拷問だよ!
なんとか下を向くと悲しいお知らせが目に届いた!
回転滑り台になっているのだ。
通過すると、
ふうっ……と無重力の様な感触を味わう。
「最高っ!」
楽しいか?俺には拷問だよ。
海面が近づき、もう大丈夫だと思ったが、
そこは流石はコーラ。これで終わる訳がない。
先程と同じく先端は上に伸びている。
「いっくぞおっ!」
と声が上がると、体は宙に浮き
海面に着水して――
……くれなかった。
ずん。
「ぐえっ。」
水面に張られた透明なペットボトルに弾かれ、
ボヨ〜ン。
「あははははっ!」
ポテチとコーラは腹を抱えて笑っている。
反動で高々と舞い上がり、
今度こそ飛沫を上げて海へ着水した。
「お前らぁ。」
ペットボトルで浮島を作り、その上に乗る。
「最後の最後で、腕外すなよ!」
実は2人より遠くに打ち上げられていたのだ。
「いや、最後まで腕を組んでいたら勢いが出なかったからな。」
「安全にも配慮した結果だ。」
「安全!? お前達だけの安全の間違いだろ?」
「ちゃんと海に落ちたじゃないか。」
「1人だけ沖まで飛ばされて危険だったんだよ!」
2人はいやいやという表情をしながら、
「楽しかっただろ?」
などとほざく。
「地獄だったわ!」
「エキサイティングだったろ?」
「じ・ご・く・だったよ!」
「お前、目が真っ赤だぞ?」
「自分達だけゴーグル付けてたからな。わからないだろう、このつらさは。」
海水と涙で変化した目を見て、
2人は反省するどころか、
「ウケるっ。」
二人は悪びれる様子もなく笑っていた。
段々と怒るのもバカらしくなり、仰向けになって空を仰ぐ。
「今、青空が広がっているよな?」
「ああ、いい天気だな。」
「うすら白ぇ。」
「もう一回やるか?」
とポテチから声をかけられたので、
もう勘弁してくれと断りを入れた。
だが、2人は本気で残念そうだった。




