23話 「次の獲物は伊勢海老」
「牡蠣の蓋が開いてきたな。もう食べられるぞ。」
「よし、手袋でもして、手が熱くならないようにしよう。」
「蓋は俺が開けるから。」
ポテチは手袋を作り、コーラはアルミを牡蠣の隙間へ差し込む。
「ほいっ。」
テコの原理で殻を開き、そのまま渡してきた。
絶対に熱いはずなのに、手袋のおかげで何も感じない。
「いい匂いだな。」
串で身をすくい、そのまま口へ放り込む。
「……っっ!!」
熱い。
口の中だけが、とんでもなく熱い。
「そりゃ熱いだろ。」
「そうか、少し冷まさないとな。」
二人はそれ以上気にする様子もなく、それぞれ工夫しながら牡蠣を食べ始めた。
遭難者は熱さと格闘しながら、コーラを飲み、ようやく落ち着く。
「……ああ、熱い。手が熱くならなかったから油断した。」
「・・・」
二人は遭難者の声など聞こえていないかのように、美味しそうに牡蠣を頬張っている。
「……俺にももっとくれ。」
その後は三人とも黙々と牡蠣を食べ続けた。
「ふぅっ。美味かった。」
「だな。」
「堪能した。」
ポテチ、コーラ、遭難者が共に満足そうにする。
「あれっ?」
「どうした?遭難者。」
「冷やされた蛸がある。」
「あったな、そういえば。」
「もう、夜に食おうぜ。腹一杯だ。」
ポテチは腹をポンと叩き、提案する。
「そうするか。」
そう言って、コーラは蛸が入った箱に蓋をする。
更にアルミで覆い、陽が入らない様に設置した。
「さて、炭はまだまだ時間がかかるし、燻製もすぐには出来ない。どうする?」
コーラからの相談を受け、
「そうだな。塩の準備でもするか?カメノテの湯も大分減ってるし、ペットボトルにセットした海水もこれから火にかけたら早そうだ。」
と遭難者は答えるが、ポテチは伸びをして倒れ込む。しっかり倒れた場所には袋で作ったシートを置いている。
「ちゃっちゃとやるか。」
「そうしよう。塩があったらポテチ。氷だって作れるんだぞ。」
「うーん?任せた。」
やれやれという反応をしながら、コーラは網を置いていた場所にアルミ缶を置く。
「ペットボトルの海水をここに入れて、時折り混ぜてくれ。」
「わかった。ポテチ、寝てるとこに悪いが、手袋をもう一度作ってくれ。」
「ああ、これでいいか?」
「ありがとう。それから日差しは今が1番強いだろうから、テントでも作ったら?」
即座に、ふわっとテントのような物が現れる。
……いや。
貝殻の中に入るような巣籠もり部屋、と言った方が近い。
「雑すぎ。」
「ポテチのことはもう気にすんな。遭難者、このヘラで混ぜてくれ。」
コーラは鉄板の上に置いていた容器にカメノテの湯を注ぐ。湯はドロドロになっていて、すぐに乾いて塩になりそうだった。
「さて、しばらく沸騰させたら同じくこの容器に移してくれ。仕切りがあるから混ざらず置ける。」
「わかった。それでさ、この後だけど、風呂、トイレはなんとかしたいんだが、どうかな?」
「あー。トイレな。実はなくてもいいかなって思ってるんだ。」
「なんでだ?」
「少し言いにくいんだけどな?俺とポテチはペットボトルや袋を自由に出せるだろ?」
「ああ、そうだな。」
「さっき、魚の内臓を処理したらさ、ペットボトルの台を消したら内臓も消えたのよ。」
「つまり?」
「袋とかに用を足した後、消せばいい。」
「俺は?袋を借りて、出した後処理してくれるのか?」
「うーん、まあそうだな。」
「トイレ作る方が面倒だから、そうしよう。」
巣穴からポテチの声が聞こえた。
「と、言うことだ。一旦はそうしよう。」
「わかった。」
ひとまず。
この無人島のトイレ問題は、あっさり解決した。
「次は風呂なんだけど・・・。」
「それは夕方にでもお披露目するから!」
とまたしても巣穴から声が聞こえる。
「だな。これは後からのお楽しみだ。」
「そうか、考えがあるみたいなことも言ってたよな。」
ポテチが自身満々に言うから、怖いんだよな。
でも予想するのもまた怖いからやめておこう。
「まあ、まずは塩だな。海水と真水を分ける装置もまだ使える時間だし、海水を汲んでくるよ。」
「わかった。容器に入れるタイミングになったら教えてくれ。」
海水をかき混ぜながら、辺りを見回す。
いい天気だ。こんな環境ならバーベキューも旨いし、コーラも美味い。
「贅沢だよな。」
天を眺めながらしばらくするとコーラが戻ってくる。
「そろそろいいぞ。容器は地面に置くから、入れてくれ。」
容器に海水を注ぐ。水分がかなり抜けているのが分かる。
「コーラかき氷とかいいな。」
と思わず言ってしまう。
「なんだよ。もう塩を使うことを考えているのか?」
「ああ、氷ってさ、化学の粋そのものだろ。塩さえあれば、凍る寸前の世界まで引き上げられるんだ。そりゃ気が急くってものさ。」
「まあな。半分以上化学ではないけどな。」
「それは言うなよ。奇跡には違いないんだから。」
2人で笑っていると、ポテチが巣穴から出てくる。
「塩手に入ったかあ?」
「放置しとけば出来上がるぞ。」
「そうか、なら釣り行こうぜ!」
「なんでだよ!急に。」
「だって生活に必要なものは準備出来たんだろ?」
「寝床はある。生活必需品もある。火もある。氷でさえ作れる。」
と答えてみたが、言ってて異常だなと思ってしまう。火と氷あるよ!ってなんだよ?
「それで、何が釣りたいんだ?」
いつものことだと言わんばかりに、コーラがポテチに聞く。
「伊勢海老だ!」
「随分ピンポイントだな?」
「貝を見つける最中に気付いたんだ。釣れる位置にいるって。」
「獲得なら出来るけど、釣るのは難しいぞ?」
「なんとかならないのか?」
「岩場の伊勢海老を狙うんだろ?あいつらはトゲで岩に張り付くから、足がもげるくらいしか出来ない。」
「クレーンゲームで景品を掴んでも、重さに耐えられずアームが外れるみたいなもんか。」
と2人の会話にぼそっと入り込む。
「へえっ。」
何故だかポテチが、こちらに好奇な目を向けてくる。
「そんなに釣りにこだわるなら夜って手もあるぞ?」
ここでようやくポテチの視線がコーラに戻る。
「夜まで待てない。」
「そうだろうな。なら、さっきも言ったけど捕獲なら出来るぞ。」
「うーん。それしかないか。」
「最初から岩場に張り付いてるからまあ、無理だな。」
「釣る時の感触を味わいたかったけど、仕方がないか。」
ポテチもようやく納得したらしく、釣りではなく捕獲することで折り合いをつけた。




