22話 「海の恵み、いただきます」
「ようやく、これを見せられるな。」
自信満々で袋から貝を豪快に出すポテチ。
その顔はとても楽しそうだ。
「本当に沢山あるな。牡蠣にサザエ、小さなアワビ・・・。」
数えていると、変なものが目につく。
「おい、ポテチ!亀みたいな、動物の手なんか一緒に入れるなよ!」
「あっ、それ。お前が言った様にカメノテだぞ。」
「???」
「立派な、貝だぞ。」
すると、コーラがカメノテを確認する。
「へぇー。面白いものをとってきたな。これは海水でそのまま茹でると絶品で出汁がめちゃくちゃ旨い。」
「そうなのか。めちゃくちゃ旨いってわかるってことは、食べたり飲んだりしたのか?」
「ない!」
・・・ですよね。
「そうか。だけど出汁があっても使い道がないよな。」
「そんなことはないぞ。海水でゆがくからそれをそのまま塩にする。蛸を茹でた場所で今度はこれを茹でよう。」
「おっ、いいな。じゃっ、遭難者。これで砂取りをしてくれ。」
ポテチ袋にカメノテを入れたものを渡される。
下の部分は1センチ間隔で3.4ミリの穴も空いている。
「ポテチ。お前も器用だな。」
「なんとなく分かるからな。海水の中で袋を揉んだり、激しく揺すったりしてくれ。」
「わかった。砂取りが充分になったら教えてくれよ。」
遭難者は海へ向かう。
ポテチも新しい海水を汲みに歩き出し、すぐにコーラがいる場所に戻る。
二人の姿を見送りながら、コーラは一人頷く。
「海水を仕上げるのは干す方がいいよな。」
残ったコーラは石鉄板から1.5m程上の場所にアルミ板を出す。見た目上は分からないが、3センチ程の深さにしていた。
「これでしばらく置いたら乾燥しやすくなるだろう。」
1人満足そうにすると、ポテチが戻る。
「海水汲んできたぞ。」
「おお、ありがとう。」
すぐにアルミ缶に海水を移し、火にかける。
ちらっと蛸を見たポテチが思い出したように口を開く。
「そういや、蛸って1杯はコーラで冷やすんだよな?」
「おおっ、忘れてたわ。」
「俺さっ、限界ギリギリのコーラって飲んだことないんだ。出してくれよ。」
「俺もないな。よし、出して飲もう。」
2本のコーラが出現すると、冷気の煙をだし、明らかに冷えていると分かる。
「これで開けると、シャーベット状になるぞ。」
「よし、早速飲もう。」
2人は勢いよくコーラを飲む。
「あ゛ーーーっ!」
「くぅーーーっ!」
喉を通った冷たさが、全身へ一気に駆け巡る。
「ふぅっ。爽快感が凄いな!」
「固まる手前って凄いな、遭難者!」
「・・・」
「……あいつのこと、忘れてた。」
完全に忘れられていたらしく、砂取りの状況を確認してみる。
「あと少しみたいだな。」
「おーい、聞こえるか? 砂取り!後少しだから、強く揺さぶり続けてくれ!」
声を張り上げて伝えると“わかった”と返事が返ってくる。
「今のうちに蛸、冷やすか。」
「だな。」
蛸を冷やして、2人は遭難者が帰って来るのを待つ。
砂取りを終え、戻って来くると、遭難者が呆れた様に言う。
「また増えてる。」
「あっ、上のこれか?塩の仕上げは沸騰より天日干しが楽だからな、温めているのよ。」
「その下のは?」
「えっ?これか?蛸1杯は冷やすって言ったろ?」
30センチ程のボックスにシャーベット状のコーラと蛸が浸っていた。
「ふうん?見たことない形のコーラは?」
「うまかったぞ?」
そういうことじゃないんよ。
「お前もポテチも目を離すとすぐ、何かやるな。」
「えへへっ……。」
と何故かポテチが照れる。
褒め言葉じゃないのよ??
「まあまあ、お前もコーラ飲んでみろよ。」
「ちょうど喉は渇いてるけどさ。」
受け取った瞬間、手に冷気が伝わる。
飲む前なのにすでに気持ちがいい。
「めっちゃ冷えてるな。」
「いいから飲めって!」
急かす様に促され、コーラを飲む。
「あ゛ーーーっ!たまらん。」
「蛸も焼けてるぞ。食え。」
いつの間にか石鉄板で焼いた香ばしい匂いの蛸が出来上がっていた。
ペットボトルを串状に変形させ、焼き上がった蛸を刺して渡してくる。
「旨えぇー。コーラとの相性もすげぇ。」
「コーラで下味ついてるしな。」
3人で蛸を堪能する。
「落ち着いたことだし、他の貝も焼こうぜ。」
「貝殻がついてるから、そのままだと焼きにくくないか?」
遭難者が眉をひそめると、コーラは横長においていた石鉄板を縦にし、空間をあける。
「アルミを粗めの網にしてっと。」
網状になったアルミを石鉄板の横に設置する。
「これでいいだろ。」
「いや、良くねえよ!」
「???」
遭難者からの強い否定に、2人は驚いていた。
「石鉄板作った意味がないだろ。」
「作ろうとした時はアルミの発想はなかったからな。」
「そんなもんだぞ。」
……柔軟すぎるだろ。
「アルミ網が嫌なら、石鉄板で焼くか?出来なくはないぞ。」
「いや、網でいい。気に入らないってことじゃないからさ。」
わがまま言ったみたいになってしまったな……。
「ああ、すまん、すまん。殻付きの美味い焼き方教えてくれよ。」
「おお、網目は後でコーラが調整するだろうし、適当に殻を下に置いたらいい。」
ポテチは牡蠣やサザエなどをささっと置いていく。
「このアワビの小さいのもか?」
「トコブシっていうんだぜ。」
「知ってたのか?カメノテもそうだけど。」
「知らない。」
……知らないだろうことはわかってはいたさ。
「下処理は済んでるし、そのまま焼けるぞ」
数種類の貝を置き終わると、コーラが網の修正をする。
「しばらくは待ちだな。」
「そうだな、カメノテはもうすぐ茹で上がるから先に食べるか。」
アルミをオタマの様にして、上手いことすくっていく。更に皿とテーブルの様な台を作って置く。
「身の所にある皮を剥いて食べるんだ。」
ポテチとコーラが先に食べ、剥き方を教える。
「味はどうだ?」
「旨い。」
「うん、旨いな。お前も食ってみろよ。」
「ああ。皮はこう剥けるのか。……ではいただきます。」
海水だけでこんなに旨くなるのか。
驚きつつ、もう一つと手が伸びた。
「うまかったみたいだな。蛸もあるしもっと食べよう。」
その間にも、牡蠣やサザエの匂いがしてくる。
「牡蠣は裏返すか。サザエは食べれそうだ。」
蛸で使った串でサザエの身を刺し、引き抜いて食べる。
「トコブシもいいぞ。」
「どんどん食べる物が豪華に増えてくな。」
「旨いからいいじゃないか。ほらっ。」
勧められながら、どんどん食べていく。
後は牡蠣を残すのみとなった。




