21話 「燻製作り、始めます。」
作業中のコーラは美味い。
「ここまで冷えてたらさ……。」
「なんだ?」
「塩を振って冷やす土台にしたら、別の容器で氷って作れるか?」
「余裕だな。」
「革命か。」
氷の難易度低すぎじゃないか?
……なんでそんなことまで出来るんだよ、という言葉を呑み込む。
「よし、コーラも飲んだし、魚の処理だな。ナイフ貸してくれ。」
ポテチがコーラに要求すると、ナイフを成形して渡す。
「沸騰するまで、手伝うよ。」
と2人で、手早く魚を出し、締めていく。
その後、エラと内臓を出す作業をする。
「じゃ、よろしく。」
遭難者に鱗取りを任せ、コーラは蛸を茹でに行った。
「さあ、やるか。」
コーラは沸騰したコーラ鍋に蛸の足をちょんとつけると、一瞬で足がくるりと丸まる。
鍋には入れず、まず他の蛸も同じ様にする。
蛸の足が全て丸まったのを確認してから、鍋へ投入する。
「よし、しばらくはこのまま煮ればいいな。」
コーラは鱗とりを手伝う為、2人の所に戻る。
「随分早かったな。」
「ああ、蛸を投入するだけだったしな。」
「そうか。それにしても・・・。」
「なんだ?」
「蛸の匂いが強すぎないか?」
ここまで匂いが来ているのが不思議でならない。
「そうか?まあ、不快な匂いではないし、気にすんな。」
「ただ、腹は減る。」
と、ポテチが腹を触る様に言う。
「確かにな、まあ、ちゃっちゃとやろう。ポテチ、手袋つけてくれ。」
ポテチが作る手袋はとても便利だ。感触は伝わらないし、作業に集中できる。
それにしても、2人が作り出す物は万能すぎる。
元はペットボトルとは思えない鱗取り用の道具もそうだ。
気持ちがよい程に剥がれていく。
「魚は全部開いて燻製にするけど、いいか?」
とのコーラから提案があった。
「何が1番いいかわからないし、美味いならいいんじゃないか?」
本当にわからないので、そう答える。
「味はいいと思うぞ。この魚も刺身にも出来るけど、醤油がないからな。今回は全部保存食だ。」
「焼いて食べたりしないのか?」
ポテチが串を両手で持ってかぶりつく仕草をする。
「食べれる魚はあるけど、食わないだろ?」
「なんでそう思う。」
「ポテチ、お前が持ってきた、その袋の中身が自信にありそうだからな。」
「まあな。燻製の準備が終わったら楽しみにしておけよ!」
とにかく鱗をバリバリと剥がしていく。
「よし、もうすぐ全部終わるな。燻製の準備をしてくる。」
コーラは煙が出ている場所から少し離れた所にアルミ缶の箱を置く。煙が外に出る様に箱上の部分は少し空いている様だった。
「鱗を剥がし終わったら、持ってきてくれ。」
ポテチと2人で魚を持っていくと、箱は5つ出来ていた。
しかし、箱には開く部分はなさそうだった。
「これ、どうやって開けるんだ?」
「ああ、単純なことさ。」
そういうとコーラは箱を開く。
「自在に変化出来るからさ。引っかける部分があるから、魚の目の所をこれで刺して通してくれ。」
棒状のペットボトルを渡されたので、言われた通り両目にそれぞれ棒を刺す。
「5枚でワンセットにしてくれ。」
魚を並べながら、箱の構造を眺める。
「これさ。」
「なんだ?」
「ただの巣箱じゃん?」
箱の下部と上部に穴が空き、煙突付きの巣箱にしか見えなかった。
「煙の真上に置いたら食べ物が焼けるからな、煙を調整するのさ。」
「上の穴もそうなのか?」
「おっ、よく気づいたな。まだ煙を通してないからわからないだろうけど、いい感じで煙が抜けるんだぞ!」
「そうなのか、奥が深いんだな。」
奥が深いのにさらっとやるよな。今更だけど・・・
「そろそろ蛸が茹で上がるから、行ってくる。」
コーラは今度は蛸の所へ作業しに行った。
「あいつ、忙しいな。」
「出来る楽しさを感じてるみたいだぞ。」
「お前も楽しそうだけどな。」
「そりゃそうさ!鉄板もそろそろ焼けるし、魚を箱に入れるのももうすぐ終わる。」
食べるより、“作れる”こと自体が楽しいんだろうな。多分。
「おーい、2人ともちょっとこっちに来てくれ。」
「わかった。すぐ行く。」
魚の設置は終わったので、コーラがいる場所に向かう。
蛸はすでに湯がき終わり、全て取り出されていた。
「ちょっと食べてみろよ!」
1口大に切った蛸の足を渡される。
「なんだ、これ!旨いし、柔らかい。」
いままでで食べたことのない味わいに驚きを隠せない。
「だよな。凄くいい出来だ。」
「このままで充分食べれそうだけど、どうするんだ?」
「そうだな、2杯は焼いて食べる。1杯はコーラで冷やす。残り6杯は燻製でどうだ?」
「それでいいぞ、他にとった物もあるしな。」
ポテチは何度も袋へ視線を落としながら言う。
「燻製はどうやるんだ?」
「おっと、そうだった。足を1本ずつにして、吊るすから、まずは切ろう。」
コーラはペットボトルで作業台を作る。
「頭は開いて吊るすから。ほい。」
コーラはそう言って、二人へアルミ包丁を渡した。
「ありがとう。ただ、今回はポテチにもらった石包丁を試させてもらうよ。」
アルミ包丁は受け取らず、石包丁をケースから取り出し、足と足の間を押し込んでみる。
「サクッと切れる。」
重みを乗せるだけで刃が入る。石包丁とは思えない切れ味だった。
「ポテチにもらった石包丁。いい感じだぞ。」
「そうか、よかった。このまま足を全部切ってみろよ。頭は開いて、干す準備をするから。」
「わかった。」
ポテチとコーラは2人で頭の部分を開き、広げた端をアルミで挟む様にして吊るす準備をする。
「切ったやつも、貰っていくぞ。」
頭を吊るす準備を終えたコーラが声をかけ、足を持っていく。
「足は穴に通して固定する感じにするか。」
コーラは細長いアルミ板を作ると、その表面に蛸の足が収まる半円状の溝を等間隔に並べた。
「太い方から二センチくらいのところを、この溝に乗せてっと。」
入りきらない太い足は、コーラが軽く押し込む。
すると溝の幅がするりと広がり、ぴたりと収まった。
「よし。」
コーラが軽く指を動かす。
半円だった溝がゆっくりと閉じ、蛸の足を包み込むように円形へ変わっていく。
蛸の足はアルミに包み込まれ、しっかり固定された。
「これなら逆さにしても落ちないな。」
「全部切ったぞ。」
遭難者がコーラのいる場所に近づくと、加工された蛸の足をみる。
「嫌になる位に綺麗に足が並んでるじゃないか。」
「きっちり燻製にできる様にしたからな。さっ、この溝に足を並べてくれ。」
言われるまま、黙って足を並べる。
「よし、これをこうしてってと。」
コーラが蛸の足をなぞるように指を滑らせる。
他の足も同じように固定されていく。
これも全てアルミの箱に入れる。
「よし、じゃあ仕上げをするぞ。」
ペットボトルを筒状にし、アルミ箱の穴にくっつける。反対側は煙が入る様にセットする。
ゆっくりと煙が箱の中へ流れ込み、
やがて上部の穴から細く煙が立ち上った。
「よし、成功だな。後もこんな感じにするから。」
コーラは残りの箱にも煙が流れるよう手際よく繋いでいく。
しばらくすると、五つの箱すべてから細い煙が立ち上った。
「下準備は全部出来たな!」
ポテチが満足そうに頷く。
「よし、なら食べるぞ!」




