16話 「ロマン武器は危険だけど、いいよね。」
「アルミナイフは封印ってことで、包丁は石とかで作ろう。」
「だな。この枯れ木だけ切ったら封印する。」
「……。」
ポテチだけが、なぜか黙っていた。
「どうした、ポテチ。」
「コーラだけズルい。」
「危険なものだからな。」
そう言いながらも、遭難者は少し考える。
「……お前でも出来そうなやり方は、あるにはある。」
「やりたい!」
当然のごとく、即答だった。
「普段使いするなよ! 絶対するなよ!」
「わかった。」
まるで信用できない返事だな。
「ポテチの袋を糸状にして、赤色とかで目印を入れるんだ。」
「目印?」
「そう。その目印の部分だけを振動させるイメージで使う。危険な場所も分かるし、動かすイメージもしやすいだろ?」
「なるほど。」
ポテチは袋を細く伸ばしていく。
やがて、一本の糸のような形になった。
さらに、一部分だけ赤く染まる。
「よし、やってみよう。」
縦に立てた丸太へ、赤い糸をそっと当てる。
抵抗はなかった。
本当に、何もなかった。
赤い糸は、そのまま地面へと辿り着く。
「……。」
「……。」
「……。」
ズズッ。
数秒遅れて、丸太の半分が横へずれ落ちた。
「封印だな。」
「封印だな。」
「……。」
ポテチだけが黙っている。
「封印だぞ! 約束しただろ! 試すだけって!」
「わかったよ!」
全然納得していない顔を見せる。
だから提案したくなかったんだけどな。
ロマン武器って、出来るかどうか試したくなるもんなんだよな。
結局、枯れ木は全部木炭にしたかったので、ポテチとコーラの2人で枯れ木を切って整える。
「斧を作ってからと思っていたが、はやくできたな。」
持って来た枯れ木は木炭にする為に、
全て埋め焼きにした。
「さて、後回しにするつもりだった木炭作りの準備も終わったし、魚でも見に行ってみるか?」
「そうするか。」
「もの足りなさそうだな、ポテチ。」
まだ、切る楽しさを感じていたいのだとわかる。
「なら、どうだ。近くに包丁に適した石はあるか? 石をスライスして鉄板代わりにできたりするか?」
と、提案してみる。
「なんで石なんだ?」
「石を切ったら爽快だし、石でバーベキューって格好よくないか?」
「……カッコいい。」
「だろ?本音を言うと、道具が欲しいんだよ。」
「今、一番欲しい物はなんだ?」
と、コーラが横から聞いてくる。
ニヤリと笑った。
「塩。」
「じゃあ作ればいいじゃん。」
「そこなんだよな。」
思わず苦笑する。
「ポテチ袋とアルミを併用して海水を蒸発させたら、どのくらいで出来る?」
「すぐ出来るな。」
「だろ?」
「変形出来るって、相当便利で危険なものなんだよ。」
「だから、塩は一旦後回しにしたい。」
「なるほどな。」
「そんなことより、石切りは?」
「……行くか。」
「だな。」
とりあえず海岸方面で石を探すことにした。
石が集中する途中にあるペットボトルの罠がある場所に着く。
「ペットボトルの頭の部分が見えてる。」
「しっかり入ってるな。ここから潮が引いていくから、魚は手に入るな。」
「今入ってる魚は食べれる?」
「うーん……。食べれそうだ。」
朝ここに来た時にも思ったが、これを無人島に来てすぐにやれたのが凄い。
「そう言えば拠点に魚がいたけど、もう食べたのか?」
「まだ、食べてないぞ。」
とポテチが答える。
「そうかなとは思ったけど、なんでだ?」
「火もないし、塩もなかったってのもあったが・・・。」
2人とも何故か黙る。
「なんとなく他のことを優先した。」
としばらくして続きが帰って来た。
あれだけ仕掛けておいて、
しかもまだ食べてないんだから、ほぼ遊びの延長だよな。
「なら、これから食べようぜ!どう調理したらいい?」
「塩がいるな。内臓とって、蒸留水で洗う。それから焼いたらいい。」
「火を用意してないんだから、塩も用意してはないよな?」
「ああ、まだだな・・・。いや、ちょっと待て。」
そう言うと、コーラはペットボトルを出して海水をくむ。
5本程のペットボトルを少したいらにする。
「ポテチ袋出して。」
そう言うと、ポテチの袋を下敷きにして、海水が入ったペットボトルを黒くする。
ペットボトルの蓋を器用に伸ばして空のペットボトルに繋げた。
「これでよし。」
「水でも取り出すのか?」
「違う、これで塩を作るんだ。」
ポテチがジーッと見る。
「これから石の鉄板作ってバーベキューだよな?」
「そうだぞ。」
「塩は出来ても、間に合わないだろ。数時間はかかるじゃないか。」
「ポテチは、馬鹿だなぁ。」
「なんだと!」
「なあ?」
と、何故かこちらに同意を求めてくる。
答えを求められても、君達と違ってアカシックレコードが使えないんだぞ。
「こっちはアカシックレコードがないんだ。詳細は分かりかねる。」
「ほら、俺だけじゃなかった。」
「何の安心だよ。」
「ただ、水分はそこそこ抜けるんだろ?」
「抜けるだけじゃ食べれないだろ。」
と、ポテチが突っかかってくる。
「そこから残りは火にかけてもいいし、アルミを広げて天日干しでもいい。」
「……。」
「塩が出来てないっていうのは失敗じゃない。時短になってるなら成功ってことだ。魚を洗う水にもなるしな。」
「そういうことだ。」
コーラが頷く。
「ポテチ、少しでも早く蒸発できるようにしてくれ。」
「どうする?」
「縦に袋を出して、黒い部分に光を集める。」
「鏡みたいにするのか?」
「そんな感じだ。」
「なるほど!」
ポテチは言われた通り、銀色の袋を何枚も立て始める。
黒くなったペットボトルへ、
じりじりと太陽の光が集まっていく。
「おお。」
「こう見事だと、じっくり見たくなるな。」
「だな。」
コーラは頷くと、岩場の方へ視線を向けた。
「でも、塩が出来るまで待ってるのも勿体ない。」
「石の鉄板探しだな。」
「そういうこと。」
足を止める自分を促すように、
二人は岩場へ向かって歩き出した。
このあたりは石もそこそこにある。
蛸壺がある場所も近い。
「そう言えば、ポテチ。」
「なんだ?」
「蛸壺の中に蛸が入っているかどうかって、どの位気にしてる?」
「めっちゃくちゃ気にしてる!」
「どこまでなら事前に聞いていい?そもそも、この周辺に蛸がいるかどうかとか。」
「蛸がいるかどうかなら調べてもいい。」
「なら確認してくれ。どうだ?」
「いるな、隠れてる。」
「なんで聞くんだ?」
昨日。
蛸壺の中身を想像させるようなことを言って、
ポテチに怒られた。
だからこそ、どこまでなら聞いていいのか探りを入れておきたかった。
ポテチが蛸壺の回収を楽しみにしていることは知っている。
その楽しみだけは、奪いたくなかった。
ここから本格的に、蛸狩りが始まる。




