14話 「バーベキューの前に歯磨き」
「もう行くのか?」
「当たり前だろ。
朝の感動体験が待ってるからな!」
どうやら植物集水術の結果が気になって仕方ないらしい。
「……本当に楽しそうだな。」
「ん?」
「いや、何でもない。」
気付けば、自分も少しだけ口元が緩んでいた。
「ほら、行くぞ!」
「夜はどうでも良さそうだったのに、やけに気合が入ってるじゃないか!」
「お前が焚き付けたんだろ!」
「確かにそうだったな。」
ポテチの言葉にコーラも同意する。
手に持っている袋で水を集めるつもりだろうか、ブンブンと振り回し、上機嫌だ。
「おおっ!」
採取場所に着く前から成果が分かった。
昨夜は真横に近い角度で固定されていた袋が、今では水の重みで大きく垂れ下がっている。
「すげぇ! 本当に溜まってるじゃん!」
「だろ?」
「ほら、お前もお前も回収しようぜ!」
とポテチがコーラと自分にいう。
「あのさ。」
「なんだよ?1番水か?飲んでいいぞ!」
「そうじゃない。お前って呼び方じゃ分かりにくいからさ、あだ名とかで呼び合わないか?」
と2人に提案する。
「まあ、そうだな。」
コーラは同意してくれる。
「あだ名?いるか?」
「コードネームみたいな物さ、新たな人に会った時に呼びあってたらカッコイイだろ?」
「そうかな。」
ポテチは少し乗り気だ。
「無人島に持って来た物で呼んだ方が面白いと思うんだ。お前達のも、物と言うより能力みたいなもんだろ?」
「能力か。カッコイイかも。」
「だろ?と言うことで、ポテチとコーラな。」
一気ににテンションが下がるかと思いきや、そうでもなかった。
「単純でいいじゃん」
とコーラは言い。
ポテチは俺のあだ名を考えている様だ。
「ならお前は遭難者だ。」
「まあ、そうだな。」
「でなきゃ、行き倒れ。」
「そうだな。」
と2人で話している。
「勝手に落とし所を探すな!」
探すな!と言った自分の言葉で、聞きたかったことを思い出す。
「そうだ、ポテチもコーラも無人島に誰がいるかもうわかるだろ?瀕死の奴っていないか?」
そう言うと2人で目を合わせ、ある人物を指さす。
「俺?」
思いっきり頷かれる。
「なら、体力が衰えてたり、遭難したり、脱水症状手前とかってやつは・・・。」
「……私だけだったんですね。」
皆、上手くやっているらしい。
体力が衰えていたのも、
遭難しかけていたのも、
脱水症状寸前だったのも。
どうやら私だけだったようです。
「皆上手くやってらっしゃる?」
うん、と頷かれる。
「元気なのはいいことだね。ははっ」
そう言うと、
「元気出せよ、遭難者」
「まあ、採れたての水でも飲めよ。遭難者!
ちなみにこれはそのまま飲めるぞ。」
「遭難者は仮の名にしてな?悲しいから」
そう言って、あだ名で呼び合うことになった。
「よし、全部回収できたな。」
結局ポテチが手に持っていた袋では重くなりすぎて運びにくくなったため、ペットボトルに入れ、台車を作って運ぶことになった。
「そういえば、今アカシックレコードの存在を知っているのは、何人だ?」
「俺たち3人含めて、5人だな。」
「あと2人って、豪華客船とネット通販?」
「んー。そんな感じかな。遭難者と同じでこてっこてな名前になってる。」
2人も来ているか。
「そうか、実は俺が持って行くものを決めた時、まだ決めてないクラスメイトはいたんだ。」
「どうした急に」
コーラが尋ねてくる。
「2人は覚えているか?誰が何を選んだかを。」
今は分かるが覚えてはいないとの反応だった。
「実は教室内で、はっきりと声に出してアカシックレコードと口にしたんだ。なのに覚えているのはその時に話をした2人だけ。」
「それで?」
「教室内でやり取りをした人物と内容だけしか憶えていない可能性がある。」
おそらくグループ判定のある人物の持ち物・・・、
この際、能力と言おう。グループ内の能力と記憶は残っていると判断していいだろう。
「基本的にグループ以外の記憶は共有してないと思う。どうだ?」
「はっきりわからないが、お前の言うグループ内だけの共有で、行動も一緒にできているみたいだな。」
「アカシックレコードなのに、はっきり分からないのか?」
「答えは出るらしいんだけどな。」
「俺達が受け取れないんだと。」
「……」
受け取れない。
その言葉に、何か引っ掛かるものを感じた。
「残念だったな!」
ポテチに肩を叩かれる。
「あ、ああ。」
さっきまで考えていたことが、
ふっと頭から抜け落ちた。
何が気になっていたんだっけ。
……もう覚えていない。
結局、その違和感の正体を掴むことは出来なかった。
拠点に戻ると今後の話をすることにする。
「俺達がこれからやるべきことについて、意見はあるか?」
朝飯の時間帯なのだろうが、優先順位を2人に意識して欲しかった。
「バーベキューだから、火だな!」
とポテチが先陣を切る。
「なら、塩もいるよな。」
そう言って見合わせると、早速海に行こうとする。
「ちょっと待て。それより大事なことがある!」
「なんだよ?」
「今、火が必要って言ったよな?バーベキューをするなら、確かに塩もいる。」
ポテチは「だから行こうぜ!」と海の方を指差した。
だが、駄目だ。続けて言う。
「それなら包丁に似たのもいるし、鉄板は石を代用出来る。コーラがいれば掘り出せるから、手配出来るだろう。」
コーラも何故かうんうんと頷く。
「でもな、それは優先順位は低いんだ。」
「じゃあ、何が先なんだよ!」
ポテチは楽しいことを1番にするタイプだ。
「今からやるべきことは、歯磨き、風呂、トイレだ!」
「はあっ?なんでだよ!」
「長く生活するからだ。
コーラやポテチなんて、虫歯一直線だろ。」
「順番は後でもいいだろ!」
「まずは歯磨き。そんなに時間はかからないはずだぞ。」
「いやだ!」
「いやだって言うと思ったから最初にするんだ。」
「順番おかしくね?」
とコーラも言う。
「おかしくない!
虫歯になったらどうする!
歯医者はいない!
歯が痛くても誰も助けてくれない!」
「だから歯磨きだ!」
「お、おう……。」
「それからトイレ、これは分かるか?」
「適当にすればいいだろ!」
「そう言うと思ったから先にやりたいんだ。」
「海とかでもいいじゃんか!」
「その考えがいけない、
もう一度言う。長く生活するんだ。
どんな影響があるか分からないし、
衛生面は絶対に気をつける必要がある!」
まだ嫌がるポテチにこう提案する。
「だけどな?火は歯磨きの準備ができたらすぐやるぞ!」
「いいのか?」
「ああ、やりたがらない内の1つが終われば大前進だ。ほっといてもお前達なら火をおこすことに成功するだろうしな。」
「順番はこうだ。」
「まず歯磨き。」
「次に火。」
「同時に包丁。」
「海鮮。」
「それからトイレ。」
「最後に石鹸か風呂。」
そう伝えると、
「やったぜ!」
「火だ!」
「海鮮だ!」
と、ポテチはすっかり上機嫌になっていた。
その様子に安心して、
「一日で全部やるからな。」
と伝えると・・・。
「なあ?」
「なんだよ?」
「やっぱり歯磨きは後にしないか?」
と言い出す。
「駄目だ、やらなければやらない程、手をつけなくなる!朝飯前の運動と思って、やろうぜ。」
再度焚き付けて、歯磨き探しをすることになった。




