13話 「昨日とは違う1人の朝」
朝、目を覚ますと、拠点にはまだ朝日が差し込んでいなかった。
それでも辺りは十分に明るい。
日はもう昇り始めているのだろう。
ポテチとコーラはまだ寝ている。
海にでも行ってみるか。
2人ならどこに行っているかわかるし、自分さえ迷わなければ大丈夫だろう。
メモとかも欲しいな。優勢順位は低いけど。
拠点のすぐ近くに砂浜はあった。
もうすぐ日が出そうだった。
波の音と潮風が気持ちがいい。
「いい朝だな。」
昨日の朝とは別世界の感覚だった。
2人が見たであろう景色を探す事にする。
まず目に止まったのは、ダンボールの山。
「何だこれ?まさか……足か?。」
そう言えばダンボールでロボ足作って寝たって話をしてたな。
思ったよりも目立つ。
余裕が出来たら完成系も作りたいな。
雨よけでポテチ袋を覆わせてもいいし、
ペットボトルで丸ごと被せてもいい。
娯楽としていいなと思った。
次に見えたのは、蒸留水。
うん、かなり雑に並べてある。
袋が敷いてあるものと、ペットボトルで被せているもの。数えたら25個あった。
確か、10だの、その倍だのと言っていたな。
随分と雑だなと思った。
探すのも時間がかかった。
「目印がないのがまずいけない。」
アカシックレコードの補助を使えばすぐに見つかるかもしれないが、そもそも自分の場合だと探せない。
大きい石か、枝を刺してみるか。
近くに大きめの石を探すにしても1人だと時間がかかるーー。
まずは目印程度で枝を刺すことにして、枝を探しに行く。
砂浜から少し離れると、流木や乾いた枝が打ち上げられている場所があった。
「これなら使えるか。」
適当な長さの枝を何本か拾う。
細すぎると風で倒れるし、太すぎると地面に刺さらない。
先端が尖っているものを選びながら、蒸留水を置いてある場所へ戻った。
25箇所全てに刺す枝はない。
袋がまとまっている場所を囲むように4本。
ペットボトルを被せてある列の端にそれぞれ1本。
さらに、少し離れた位置にあり、見つけにくい場所の5箇所にそれぞれ1本。
「これで多少は見つけやすいだろ。」
それでも雑なことには変わりない。
今度、皆で時間がある時にちゃんとした目印を作った方がいいかもしれない。
大きな石を積むとか、流木を組むとか。
2人の優先順位って絶対1番は『楽しい』だよな。
思わず苦笑する。
昨日までは、こんなことを真面目に考える日が来るとは思わなかった。
ふと、海の方を見る。
水平線の向こうが、わずかに赤く染まり始めていた。
「お。」
足を止める。
じっと見ていると、ゆっくりと、確実に太陽が姿を現した。
波の音。
頬を撫でる潮風。
少しずつ暖かくなっていく空気。
誰もいない砂浜に、朝日だけが広がっていた。
「……綺麗と言える朝日が拝めるなんて。」
思わず声が漏れる。
昨日は余裕なんてなかった。
今日はやりたいことが沢山できている。
食料、水、拠点の整備。
こうして朝日を眺めていると、不思議と応援されてる気がした。
「2人も、これを見たのかな。」
ポテチとコーラは、まだ寝ているだろう。
起きたら朝飯の話になるかもしれない。
あるいは、また変なものを作り始めるかもしれない。
どちらにしても、騒がしい一日になる。
「さて。」
もう一度、蒸留水の目印を確認する。
枝はちゃんと刺さっている。
少なくとも、自分が探し回る時間は減るだろう。
「さあ、2人が起きる前に海岸でも散歩するか。」
右と左。どちらに行くかを考えると、右は砂浜が続き、左は岩などが見えた。
罠を仕掛けるなら、左だよな?
蛸壺も仕掛けたと言っていたから、そちらに行っている可能性は高い。
歩いている砂浜は静かだった。
波の音だけが、規則正しく耳に届く。
昨日までなら、この音さえ不安を煽るものだった。
だが今は違う。
「2人のおかげだよな。」
ぽつりと呟く。
昨夜は、驚きの連続だった。
植物集水術を口実とした、
アカシックレコードの実験。
お互いを「お前」と呼び合う二人。
そして、蛸壺の結果を楽しみにする会話。
ありがたいことに、自分もその輪の中にいた。
「助けてください、なんて頭下げたんだよな。」
数時間しか一緒にいないが、気のいい2人だと思う。
砂浜を歩きながら、空を見上げた。
朝焼けが少しずつ広がっていく。
「それにしても……。」
波打ち際へ視線を向ける。
「豪華客船に、通販か。」
2人は無事に出会えただろうか。
自分が2人を覚えているんだ。きっと2人も、
『アカシックレコード』『豪華客船』
『ネット通販』の3つは覚えているはずだ・・・。
この島には、他にもクラスメイトはいるはず。
果たして、全員が生き残れているのだろうか。
今すぐ動けなくてもいい。
せめてアカシックレコードのことだけでも
伝えておきたい。
それだけで、生き残れる可能性は上がるはずだ。
皆には出来るだけ自分みたいな生死をわける選択に迫られてほしくない。
でも第一は・・・
「まずは、自分が生き残ること。」
そして――。
「出来れば、皆で生き残ることか。」
砂浜の先に目を向ける。
海の中にうっすら見える光。
「これ、ペットボトルか。」
実に見事だ。
3m程の大きさとは聞いていたが、違和感など感じることなどまず出来ない。
魚は当たり前の様に入っていた。
引き潮になれば間違いなく魚は出れずに、安易に捕獲出来るだろう。
目で確認出来たペットボトルは3つ。
全部に魚は入っている。
「食べれるかどうかは2人の目に任せればいいな。」
自分で調べられないのはもどかしいが仕方がない。
諦めて、受け入れよう。
その為に精一杯頭を下げたんだから・・・。
そのまま真っ直ぐ行くと、岩場があった。
いくつか蛸壺らしき物も確認出来た。
この蛸壺も見事。
2人とも実にセンスがいい。
いいなあ、いいなあ、こんな風に工夫したり、持って来たものを柔軟に使えて本当いいなあ。
ポテチとコーラなのに能力になっているし、2人に聞いた所、中身を出したのは10個程度だそうだ。
「何でほとんど容器しか使ってないんだよ!」
うらやましいというより嫉妬心が沸いてしまう。
ただ、2人は本当に楽しく今を生きている。
出来れば手助けしたいと思う。
悲しいことに、出来ることはとても少ないが。
蛸壺はポテチが嫌がるだろうから触らず、帰り道を歩く。
朝日は登って、朝を彩ってくれる。
拠点まで戻ると、2人は起きた様だ。
ポテチがうずうずとしながら待っている様な気がした。
朝の感動体験がしたくてたまらないらしい。
「おはよう!水の収穫は少し待ってからでも大丈夫だぞー。」
そう声をかけると、
「待てないよ、早く行こうぜ!」
コーラは絶対叩き起こされてるな・・・。
そう思いながら3人で水の収穫に向かう。




