これこそが勝山の醍醐味です
休憩を終え、スポーンされたモンスターを狩り2階層への階段にたどり着いた。
「思ったより時間がかからないですね」
「数が少なかったせいね。ま、それだけスポーンまでに時間がかかるってことなのよね」
そう言って、手のひらサイズの手帳にメモを取っていく。勝山ダンジョンは調査隊の派遣が後回しにされているらしく、知らないことが沢山あるようで。なんだろう、とっても生き生きしている。
「さぁ、この下は未知の2階層ね。人類最初の第一歩よ」
思ったんだが、自分の状況。危険で面倒なダンジョン調査に巻き込まれているとしか思えない案件。
「ほらほらボサッとしない」
「おわっ」
グイッと腕を引っ張られ足がもつれてしまい、階段を横向きで転げ落ちた。レベルのお陰で頑丈だから特に大した怪我はなかったけど、視界が回る。
「わぁー、見てみて。これって地層? 壁が奥まで広がっているわ」
漸く視界が戻り見渡すと、確かにダンジョンの壁ではなく、崖に挟まれ一本道がずーと続いている。辺りには岩や石がゴロゴロ転がり、何処かで見たことがある風景だ。はて、どこだったっけ?
「これって、アレよね。恐竜博物館で体験できる「化石発掘!! 」 そう、それそれ。こうやって、適当に選んだ石を割ってみて「割るなら、私に任せて、ふん」 ……跡形もない…だと?! 」
手の中にあった石は見事にチリと化し、空気と混ざりあい見えなくなった。
「ドヤ顔だけど、今のは失敗だからね。ほら、ちゃんと謝って」
「ごめんなさい」
俺に怒られショックを受けたのか、ルコは岩の上で丸くなった。こんな無防備でいいのかと聞くと、「敵の気配ない」 と言って、さらに丸くなった。上から見たらドーナツの形をしてそうだ。
「モンスターの出現はなしね。ふむふむ、もしかしたら、ここってお宝エリアじゃないのかしら」
「いやいや、2階層でそんなうまい話があるわけないでしょ」
北浅井ダンジョンなんて、大人1人を軽々殺れる化物がいるんだぞ。
「えー、化石取り放題じゃないの? 勝山だし、そういう階層があってもおかしくないと思うよー。というわけで、持ってきました。MyハンマーにMyブラシ」
え、この人発掘する気満々だ。というか、やるなら目的果たしてからしてくれませんかと思う。
なんて、強気に言えない俺って情けない。
「何か面白いモノが出てくるかもよー。っておお! 見てみて、いきなり当たりだよ。これってあんもごごごご」
東堂さんの口に青い触手が入り込む。なんと、化石発掘をしていた石から突然モンスターが現れ、今まさに襲われている。
と悠長な事をしている場合じゃない。すぐさま手から落ちたモンスターに斬りつける。タコや貝に似た手応えが伝わる。
触手を失ったモンスターがバランスを崩し、背負っている貝殻の重みに負け横に倒れた。そこへトドメを刺すため、眉間と思われる場所をつく。
「プギョーーー」
変な鳴き声と共に生き絶えた。その後、小さな魔石を残し消え去った。
「あーーー」
窒息は免れたのか、東堂さんが声をあげる。よかったーなんともなさそうだ。
「私のアンモナイトの化石」
うん、無事でよかった。
「まさか、発掘した化石がモンスター化するとは驚きね。こんなネタ、政府に売りつけたらいくらで買ってくれるのかしら」
にししと悪い顔をしながら、悪知恵を語る。フリーになった途端、真面目ないい子ちゃんを捨てたという。本来は興味のある事にしかやる気が出ない、不真面目な悪い子なんだと。
「その情報はどうやって伝えるつもりですか」
「そりゃあ、石を掘る、化石発見、モンスター化する前にマジックバックに入れる。あら、やだ。完璧すぎてにやける」
ダメだ、こいつ。
「モンスター化するスピードに勝つつもりですか? 」
「そりゃそうよ。さっきは浮かれて油断してたから、先手取られちゃっただけだもん」
いや、絶対無理だ。
そんなこと言って、運悪く恐竜の化石でも掘りあててみ? 死が見える。
「ううーん。カメラは使えないし、口だけの情報は信頼性に欠けるのよね。だからと言って、自衛隊にここまで来てもらうのも大変だよ? 」
「それなら、ダンジョン入り口で待っていて貰って、一旦ルコたちにモンスターを全滅させましょう。その後ならスポーンするまで時間があります。2階層まで連れて行けますよ」
「それなら私の案より成功確率が高いわね。よし、採用」
「ただし、本来の目的を達成してからですよ」
ここまで来たのは、俺たちのレベル上げなんだからな。サブイベントは後回しだ。
「えぇー、そんなぁー」
「とにかく、ここのモンスター出現条件がわかったんですから、次の階層に行きましょう」
「え、ここでレベル上げしないの? 」
「ランダムで何が出てくるかわからないですよ? 最悪肉食恐竜を元にしたデカイのが出て来たら、みんな即ご飯にされますよ」
命は大切に。冒険者に必須な心構えだ。
危険な事には足を突っ込まない。戦うより逃げ切れだ。
「主人、主人………できた」
「ギュルル」
ギギギと振り返ると、ヨダレが垂れたティラノサウルスが現れた。ルコたん、まじ勘弁。
「「あーーーーー」」
一階層への道はティラノサウルスに塞がれているため、全力疾走で下層への階段を探す。レベルによる身体強化からか、命がかかっているためか足が止まらない。幸い真っ直ぐ一直線の道しかない。
「あるじーー?」
ルコが呼んでるけど、振り向けない。無理。
必死に走る最中、大きな影が身体を覆った
「あ」
生暖かい粘液が腕を飲み込んでいく。




