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孤独なダンジョン攻略  作者: 主食がお菓子
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名物ダンジョンへの憧れ

モンスターの気配が途切れた。


「どうやら層の殲滅が完了したようね。せっかくだからリポップまでの間に、昼食をすませましょう」


そう言って、ランチョンマットやら重箱やらが手際よく並べられていく。ここのモンスターは化石が眠る土地のダンジョンだけに、リポップが遅いのだという。だが、強力なモンスターなだけに冒険者は来ず、今までスタンピートギリギリの数を保つだけに留まっていた。つまり


「駆除業者なんて始めたつもりはないんですけど」


「でも、ジュエリードールがのびのびと狩りをするには好条件でしょう?」


「ムムム、たしかに……」


他所の冒険者がいない、短期間で大幅なレベルアップが望める北陸県内のダンジョン。ここは確かにそう言える場所だ。


「福井の名物ダンジョンといえばどこだろう」


「福井は三国と鯖江ダンジョンよ」


「三国? 鯖江はあれだよね、眼鏡の産地」


「三国には福井が誇る魚介の宝庫、魅惑の食糧ダンジョンとしてダンジョン名鑑だけでなく雑誌にも紹介されている有名ダンジョンよ。鯖江はモンスターが全て眼鏡のネタダンジョンなんだけど、知らないの? 」


なんでも、海沿いの町三国のダンジョンに出没するモンスターは魚類系らしい。ドロップ品は全て海産物だという。なんとも懐もお腹も満たされそうなダンジョンだ。つい手に力が入り、おにぎりの具が飛び出しかける。


「目玉は5階層のボス、キングクラブよ。ドロップ品は爪や甲殻なんだけど……ある条件でカニ身が手に入る」


「カニ身……」


ごくんと喉がなった。越前蟹を元にポップするモンスターなら、不味いはずがない。食べてみたい。是非ともキングクラブがドロップする蟹の味を堪能してみたい。


「銀座の高級店に卸されるカニ身。誰もが喉から手が出る程欲しがるモノだけど、入手困難なのよ」


「その条件がネックとか? 」


「ええ、キングクラブは名の通り頭は王冠の様な形をしていて、沢山のクラブ達を従えているわ。なのに、参加人数は足の数と同じ10人に決まっているの。それ以上も以下もダメらしく、人数が合わない場合はボス部屋に入ることもできないの。」


なるほど、元々10人パーティーなら問題はないが、即席でパーティーを組むとなると連携が取りづらくなる。そんな状況でボスと従えているモンスターを相手にするのは厄介だ。


「それなのに、カニ身はドロップ品じゃないの。苦労して倒しても手に入るのは爪や甲殻のみよ」


「え、じゃあ、カニ身はどうやって。まさか剥ぎ取りですか」


「消滅するまでの時間内に剥ぎ取られるならね。そうじゃなくて、部位破壊なの」


「部位破壊? 」


「そ、部位破壊」


あの某モンスターを狩ろうぜでよくやった、あの尻尾切りや、ツノ破壊と同じ事か。


「キングクラブの関節を集中攻撃し、落ちた足をすぐさま回収する必要があるの。そのまま放置していたら、すぐダンジョンに取られるからヒヤヒヤもんよ」


それをやってのける冒険者がいるというのだから、驚きだ。まさに職人といえる。


「ジュエリードールの力があれば、部位破壊ぐらい可能だと思うけど。人数指定がネックよねー」


ああーカニ食べたーいと、玉子焼きを頬張るその姿はまるでリスかハムスターの様だ。ほっぺがパンパンに膨らんでいる。もうちょっと上品に食べようよ。


「俺もカニが食べたいです」


「それなら、彼女たち抜きで戦えるように力をつけなきゃね。午後もふぁいとー」


「おーー」


ルコなしでダンジョンに挑む…かぁ。レベルは結構高い方だと思うが、戦闘技術がそれに追いついている気がしない。力のごり押しなら出来るかもしれないが、数を相手に力を発揮できるか自信がない。


「そもそも知らない誰かとパーティーを組む事自体ハードルが高いよな……」


冒険者としての課題が山積みだなーと、渋いお茶を流し込む。


「主人、離れるのは嫌」


そもそも主人離れが出来ないので、お金を稼いで稼ぎまくって手に入れる方法しかないようです。


「大丈夫だよ。そんなことするはずがないじゃないか。あははは」


何かを掴もうとする手が端に映るので、冷や汗が止まらない。


「ローラ、やめて。ゆるしてぇー」


地雷を踏んでしまったか。口は災いの元、今度からは思ったことを無闇に口に出すのはやめよう。


「そういえば、三国ダンジョンは食糧に恵まれている所で有名だけど、もう一つ興味深い話があるのよ。何かわかるかな? 」


にひひと不気味笑いに引いた。

興味深い話? ダンジョンの事だから、モンスターか、出現場所………ああ、もしかしてアレか。


「一応確認なんですが、出るんですか? 」


「何とは聞かないけど、出るみたいよ。しかも日が傾く夕方辺りから」


あー、この手の話はあまり好ましくない。女々しい話にはなるが、俺はそっち系が苦手なのだ。


「夕方以降ですか、そうですか。行くならやはり、日が高い日中が一番ですね」


「あれれー? お兄さん幽霊が怖いのかな」


ええ、そうですよ。この歳になって恥ずかしいけど、ホラー系の話から映画まで全部ダメなんだよ。


「そのダンジョン、東尋坊に出来たんですね」


「そうよ。けど、その名前だとホラー系苦手な人が嫌がるから三国なの」


恐竜、眼鏡、魚介に幽霊。福井のダンジョンはすごく賑やかだな。もちろんいい意味でだ。


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