不敵な笑み
ボロボロの身体で敵に向かっていく後ろ姿に、すがることしかできない俺。そんな俺を嘲笑う様に、イミティーションドールは高笑いする。
「さぁさぁさぁ、いつまで持つのか見ものだわ」
縦横無尽に飛んでくる扇を、かわし続けるルコ。反撃の拳は、未だ傷を与えれていない。力の差に愕然とする。
「なーんてな」
戯けた仕草でルコは扇を掴み、フリスビーの様に投げた。その切っ先が、相手の頬に傷をつける。
「なぜですの。どこにまだそんな力が」
「お前は戦闘妖精を理解出来ていない。こんな茶番、してる時点でアウト〜」
クルッと回転し、その勢いでかかと落としならぬひざ落としをお見舞いする。
「痛いじゃない。 がふっ」
今度はひじのアッパー。
散々受けた傷が嘘の様な、滑らかな動きだ。
「あーーー、もう。おかしいわよ。あり得ない」
「ところがどっこいキーーック」
「ぐふっ」
さっきまでのシリアスは一体なんだったのだろうか。そう思いたくなるほど、ルコはふざけている。俺の涙を返せ。
「いいか、教えてやる。戦闘妖精は主人の盾であり、剣でもある。見ろ」
そう言って、相手の顔にひじをぐいーっと近づける。頬をぐりぐりやられて嫌そうだ。
「傷が…治りかけている」
「そう。エネルギー吸収による自己治療。扇から溢れるお前のエネルギーをもらった」
「わたくしのエネルギーですって」
「戦闘妖精、食事も手を抜かない」
そこは戦闘に集中してもらいたい。
「だから? 」
「ん? 」
「傷が癒えたなら、また、傷だらけにすればよろしいのよ」
扇に横腹を挟まれる。それでもルコは不敵に笑う。
「いただきます」
扇を鷲掴みにする。エネルギーを吸収しているのか、顔に艶が出てきた。
「対象物に触れれば、エネルギーを食える。そんな知識もないのか三流め」
カランと、床に放り投げる。ボロボロだった身体は以前よりも輝きを増しているようだ。
「さて、教育の時間だ。ジュエリードールの実力を身体に叩き込んでやる」
右頬、腹部、左肩、顔面。
容赦なく剛拳を叩き込む。
それでも弱音は吐かず、目は怒りの炎を上げていた。
ドールとはここまで強靭で、ここまで恐怖とは無縁の生き物なんだろう。既に10発を超えている。が、反撃にと扇がルコに直撃する。
「すごい…。これは人間が扱っていいもののレベルを超えているよ」
その言葉に昔の怪獣アニメを思い出す。街を巻き込み乱闘する様が、今のルコたちに被る。
パリンッ
何かが割れた音が響いた。
ハッとし、目を凝らす。イミティーションドールの様子がおかしい。
「な、なぜ? 」
胸にある宝石紛いが割れた音だった。今はポッカリと穴が空いている。
「過度なエネルギーに耐えられず割れた。お前が偽物である証拠」
「身の丈に合わぬ力は身を滅ぼす」
ドヤ顔で言い切る。その言葉、一体誰に教わったのだろうか。
「と、ママが言ってた」
おかあさーん、いつもルコに何を読み聞かせているんだ。俺はてっきり、絵本や児童書など可愛らしいモノだと思ってたのに。
「滅ぶ? わたくしが? なによなによ、わたくしは自由なのよ。生きるも死ぬもわたくしが決める事」
「"ラスト チャプター" 」
そう言って不敵に笑い、無数のナイフに身体を貫かれた。ナイフによって裂けた部分から黒いモノが出てくる。全て出し尽くした後は、泡となって消えた。
「あれは……なんだ」
黒いモノは1つに纏まり、人の形になった。




