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孤独なダンジョン攻略  作者: 主食がお菓子
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敵の正体

次に目が覚めた時は、涙に濡れた東堂さんの姿だった。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


左手にポーションをかけながら謝り続ける姿に、俺の心がぎゅっと苦しくなった。そんな思いをさせる為に、ここへ誘った訳じゃない。


自分の無力さに、無意識に唇を噛んだ。


「東堂さん、意識が戻ったんですね」


俺の掠れた呼び声に、持っていたポーションを滑らせ抱きついてきた。いたたた、東堂さん首締まるよ。


苦笑いしつつ、大丈夫だからと声をかけるも一向に離れてくれない。ルコの時といい、俺は人を心配させる天才だなと、不甲斐なさに心が痛くなる。


そう感じていると、さっきまであった重さが身体から抜けている事に気づく。不思議に思い、東堂さんに目で訴えると、涙を袖で拭きながら遠くを指した。


そこには、何もない場所でジュエリードールと対峙するルコの姿があった。


「ルコ、良かった。無事だったんだ。あれ? シノビは? 」


「気づいたら、いなくなっていました。おそらく、幻覚がとけたからだと思う。残った鉱石は払っておいたわ。そんな事より、私……高橋くんをまた傷つけてしまった。この手で、この手で。何度も」


「その事はもういいですよ。こうして治してくれたじゃないですか。東堂さんが無事なら、俺は満足です」


優しすぎますよ、バカーとなぜかポカポカ殴られた。理不尽。


「ルコは? 俺の目には無事の様に見えますけど、無理していませんか? 」


あいつは主人である俺の為に無茶をする。それが使い魔としての使命なのか本能なのかわからない。が、生死に関わるなら、俺を見捨てて逃げてほしい。


「特に大きな怪我はなさそうよ。それよりも怒りで爆発寸前みたい」


おぅ、それは避難した方がよさそうだ。身体を持ち上げようと腕に全体重をかける。うっ、痛い。


「1番酷い怪我は高橋くんです。支えるので、肩に腕を回してください」


よいしょっと、なんとか壁際まで足を引きずりつつも動けた。壁に背を預け、楽にしていると、


「ふざけるな」


ルコの怒声が響いた。


「イミティーションドールの癖に、人間を食い物にした罪。お前の企み諸共、私が粉砕する」


イミティーション?

よくわからない単語と、おぞましい言葉が聞こえた。


「イミティーション……もしかして、宝石の模造の事かしら」


目がまだ赤い東堂さんが、ボソッと呟く。模造? そういえばどこかで聞いたことあるような。


「宝石は人を魅了する、とても価値がある素晴らしいものよ。反面、それに似せた模造品が世に出回る事があるの。特にターコイズは古来からその存在が確認されていると聞くわ」


「つまり、あのジュエリードールは宝石がその模造品だからイミティーションドールってことか」


ドコォーー


轟音にハッとすると、壁にめり込むジュエリードールことイミティーションドールがいた。驚くもつかの間に、扇がルコではなく俺たちの方へ飛んできた。


「主人」


ルコの叫びも虚しく、俺の肩に直撃する。服は破け、胸当ての一部がボロボロと床に落ちる。皮膚から肉が見え、血がとめどなく流れる。


東堂さんのポーションと的確な応急処置で血は止まったが、もはや肩に力がはいらない。血を流し過ぎたか、頭がクラクラしてきて貧血を起こしている。


「主人ー」


擦り寄るルコに大丈夫だと、頭をポンポンする。


「あれは一体なんなんだ? お前の仲間か? 」


「あれは、ジュエリードールを造った博士の好奇心。模造の宝石で造った紛い物」


「そいつはルコより強いのか? 」


「ジュエリードールは模造に負けない。あれは、ジュエリードールの力を奪った悪食。扇がそう」


そう言い、俺の肩を斬った後壁にのめり込む扇をさする。これは本来あいつの持ち物じゃなかったのか。


「イミティーションドール。モデルはターコイズで、戦闘スタイルは幻覚。歌声により錯覚を起こして、相手を撹乱させる補助タイプ」


つらつらと相手の性能を述べるルコに、こいつ本物のルコ? と疑惑を抱いてしまったのはここだけの話。


「扇は斬殺スタイル。悪食のじゃない」


それなら、この扇は本来なら別のドールが所持している筈なのか。


「この扇の持ち主が隠れているかもしれない」


「ない。ここには悪食の気配だけ」


「それと、人間を食い物にしたって」


「悪食、たくさんの人間をエネルギーにした。ここのモンスターと一緒に残らず食べたと言った」


ルコの発言に東堂さんがみるみる青ざめる。


「一年前の事件は、あのドールが起こした出来事っていう事。そんな前から既にドールが存在していたなんて」


ジュエリードールの発見は、俺がダンジョン特典でルコに出会ったのが初めてだと思っていた。が、実際はそれよりも一年前に、人を襲うモンスターとしてダンジョンに住み着いていた。


問題はその事件を起こした張本人を倒し、生きて地上に戻れるかだ。


「ルコはイミティーションドールを倒せるか? 」


「粉砕上等」


逞しい答えに、思わず笑ってしまった。そうだ、ルコはいつだって前向きに進む。俺の怪我に泣きそうになるが、危険な場所でも必ず倍返ししようと乗り込む勇気を持っている。


「ルコ、アイツを粉々にして来い」


「了解であります」


敬礼ののち、壁から抜け出そうとしているイミティーションドールの元へ飛び込み、粉砕剛拳を叩き込んだ。


仕事が早い。さすが戦闘妖精、ルコのなせる技だ。


強烈なラッシュを浴びるも、さすが戦闘妖精、簡単にはやられてはくれない。至る所から衝撃音が聞こえる。


「さすがターコイズお姉様。身体が粉々になりそうですわ」


「チッ、いい加減砕けろ」


滅多打ちにされているのに、表情を変えない。上から見下す様は、なんとも腹が立つ。


「ふふふ。でも、わたくしの方が上手の様ですわ」


「かはっ」


ルコの背中に扇の刃が刺さる。


「あーん、また失敗してしまったわ。この武器、どうやって斬撃を飛ばすのかしら? イマイチ加減がわからないわ」


そう言って何度も何度も、扇がルコを傷つける。


「あ……くぅ」


次第にルコの身体がボロボロになっていく。


「形勢逆転…と言ったところですわね」


相手をフルボッコにしていたはずなのに、逆に大ダメージを受け苦痛に顔を歪めている。


「お前のどこにそんな力が」


本来ならジュエリードールとイミティーションドールには、圧倒的に力の差がある。そうルコは思っているのかもしれない。だから、相手の異常なタフさに精神的に押されている。


「さぁ、食事の質かしら。それとも量かしら。あなたたちもわたくしのエネルギーにして差し上げますわよ」


真上から扇が垂直に落ちてくる。ルコが避けた場所には、真っ二つにわかれた岩が残っていた。


「食材が逃げてはいけませんのよ」


2つの扇が交互に降ってくる。それをなんとかルコはかわしている。


「はっ」


扇に拳を入れても、跳ね返されるだけでダメージが入っていない。そう見える。


ヤバイ。ルコがここまで苦戦するなんて初めてだ。

傷はだいぶ治ったが、助けに入れないもどかしさに涙が出そうだ。



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