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孤独なダンジョン攻略  作者: 主食がお菓子
20/31

怯える者と待ち受けるモノ

幻覚をかけた1体。媒体となる鉱石を投じたもう1体。少なくとも2体のモンスターが、この先に潜んでいる。


「ここは一度作戦を練り直す必要がありそうですね。地上へ帰り、出直した方が賢明な判断です」


「いや、敵の姿が確認出来ていない。作戦を考える上でも、先へ進み対象を把握するべきよ」


「何言っているんですか。前回俺たちは死にかけたんですよ。危険過ぎます」


上に戻るべきだと説得するが、


「ダメだ!! 」


「ダメ…なんだ。私のわがままで上には迷惑をかけている。今回成果を上げなきゃ……あの場にいられない」


成果……その言葉でブラック企業時代の記憶がフラッシュバックする。終わらない書類の山。限られた時間でこなすいくつもの商談。成果を上げなければ貶され、俺の居場所がなくなる。


東堂さんの姿が、あの頃の恐怖に怯える俺と重なって見えた。


「わかりました」


「え? 」


「東堂さんにはルコの件や、ポーションで治療して頂いた事。この装備を頂いたお礼があります。……だから、今回はそのお返しという形で、東堂さんについて行きます」


「ありがっ…ありがとう」


万が一何かあっても救援要請範囲内だ。それに、敵と遭遇しても絶対逃げれない訳じゃない。


大丈夫、いける。


「前は俺とルコに任せてください。東堂さんは背後に注意でお願いします」


「わかったわ」


鼻水を拭き取り、いつもの調子に戻ってよかった。テントをしまい、声が聞こえた方へ足を運ぶ。


「確かに、微かに何か聞こえる」


「そろそろ幻覚が現れると思います。警戒してくださいっ」


言ってる側から、左の壁からモンスターが飛び出してきた。これが本物なのか幻覚なのかわからない。左手に掴んだナイフで切りつけてみた。


すぅー、と刃が通り切った感触がない。


「幻覚だ」


「粉砕」


ルコの両手が幻覚を包み込む様に握り込まれる。


バギィ


あっという間に幻覚の媒体に使われた鉱石が粉々になった。


「凄い幻覚ね。モンスターにしか見えなかった」


幻覚効果の高さに、東堂さんは賞賛の声をあげる。確かにこのレベルの幻覚は、低レベルモンスターが扱えるとは思えない。


「ルコの力で潰せるので、更に奥へ進みましょう」


その後も、声のする方へ行く。近づいているのか

、だんだん声量が大きくなり、幻覚も増えていった。ルコの捌ききれない相手は、東堂さんを庇いつつ、壁に激突するよう媒体がある中心部をナイフで流す。


徐々に進んでいくと、ぽっかり拓けた大広間に出た。奥に目を凝らすと、影が見える。あれが、幻覚を使うモンスターなのか?


姿を隠す場所はない。声が幻覚作用をもたらすのなら、それを阻止しなければならない。


思うより先に、ルコが相手に飛びかかった。


ルコの剛拳を扇が防ぐ。


「お前はっ」


「やはり来てしまうのですね、ターコイズ姉様」


ルコの元へ駆け寄ると、容姿は違えど、ルコ同様ひじとひざの先がない人型がいた。


「1階層が騒がしいと思い来てみたら、あら懐かしい気配がするもの。待ち伏せしてみました」


ゆっくりと喋るその姿には光る宝石が1つ。

間違いない。戦闘妖精、ジュエリードールだ。


「そんなっ、ジュエリードール。なんで、このダンジョンに」


東堂さんの鑑定結果も、ジュエリードールと出た。ルコが感じていた気配は、コイツのモノだったんだ。


「くっ、私のスキルレベルでも種族名しかわからない。一体なんなのよ。このモンスターは」




「主人を見つけたのですね。それも非力な低レベル。ふふふ、ターコイズ姉様は物好きな方ですわ」


チラッとこちらを見たと思ったら、俺らを馬鹿にしたように高笑いをあげる。


ドゴォッ


「主人を持てない者が、主人を笑うな」


ルコの右手が、扇を殴る。が、ヒビひとつ入らない。


「腕が落ちましたの? お姉様」


「お前に姉など言われたくない」


「カッチーン。人が下手に出ているというのに、やはり貴女は気に食わないですわ」


扇がルコの右手を跳ね返す。風圧が凄い。


「貴女には、ここで退場していただきますわ」


大音量の声が壁に反響し、こだまする。ジュエリードールを中心に、幻覚であろうシノビが大量に湧いてきた。


「これ、前は手応えあった。あれはわざとか」


「ふふふ、そうよ。あらかじめ脳に刷り込ませ、幻覚をより強くする。その為に野放しにしていた餌。まさかこんな大物がかかるなんて、胸熱ですわ」


「覗き魔」


「うっさいわね。大人しく沈んでなさい」


溢れ出すシノビが、俺たちに襲いかかった。



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