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孤独なダンジョン攻略  作者: 主食がお菓子
16/31

眠るルコ

「知らない天井だ」


気がついた時は、真っ白い部屋中でベットに横たわっていた。


「日向、ルコちゃんを危険な目にあわせてっ。この親不孝者」

「ふべぇっ」


母さんから強烈なビンタを受けた。


「痛いじゃない。なんでこんなにも顔のお肉固くなっちゃったの」


レベルの所為だと思います。


「ここは? 俺ダンジョンで意識を失ったはずだけど」


「ここは市立病院の1人部屋です。高橋くん、この度は私の軽率な判断であなたを危険な目にあわせたこと……探索者を守る者として大変失礼いたしました」


東堂さんが涙を流し、俺の手を掴む。


「温かい。よかった」


そう言って綻ぶ彼女の目元にはクマが薄っすらと浮かんでいた。


「日向、あなた3日も目を覚まさなかったのよ。どれ程心配したか分かっているの」


「3日!! 身体が怠いわけだ。それより、ルコは? ルコはどこにいるんだよ」


「ルコちゃんは別室で安静にしてるわ。東堂さんがポーションをいくつも提供してくれてね、まだ目を覚ましていないけど、傷は良くなっていたわ」


そっか……よかった。


「ただ、手や足がどうなっているのかわからない状態なの」


手、そうだった。ルコの身体はもともとひじ、ひざ下がない。いつも彼女が意識して空間から出しているのだった。


「ポーションのあまりは持っている。今すぐにでもルコちゃんの元へ行ってあげて」


点滴を支えに、ルコの病室へ向かう。俺は背中に大量の切り傷や刺し傷、打撲があったがポーションで傷は塞がった。たが、ポーションは傷跡を消す効能はなく、痛々しい跡が残っている。


そう東堂さんに言われ謝られたが、


「ルコを守った勲章だから気にしないでください」


と返した。

母さんも、そこまで気悩むことはないと東堂さんを励ましている。


部屋に着き入ると、ルコが横たわっていた。その目は未だ閉じ、生きているのかわからない程微動だにしない。本来のドール…人形のように静かにそこにいる。


「ルコちゃん、日向が来てくれたわよ。あなたも早く目を覚ましてちょうだい」


優しく頬をさすりながら、母さんが呼びかける。が、ルコは反応を示さず重い空気が漂う。


「ルコ、ルコ起きろ。ダンジョンへ行こうよ、ご飯食べたいだろう」


俺も声をかけるが反応はない。【ダンジョン】この言葉にすぐ飛びついてくるルコからは、想像もしない静かさだ。「ご飯」といつもリュックから飛び出していたのが、嘘のようだ。


「東堂さん、ルコは3日間ずっとこの状態なんですか? 」


「えぇ、ポーションをかけ傷も体力も回復したと思うわ。だけど、それだけ」


ということは、ルコはずっとご飯を食べていない。


「もしかして……エネルギー不足? 」


「どういう事? 」


「以前ルコの食事事情を話しましたよね。実はあの日、ルコはご飯を食べていない。その前にモンスターにやられ、俺が庇ったから、一度もエネルギー吸収を行なっていないハズです」


もし、ルコがエネルギー不足によって眠りにつくスリープ状態ならば、エネルギーを供給すれば起きるかもしれない。


「何をあげればいいの? 今からうちに戻って作ってくるわ」


「いや、母さんは無理だよ。ルコのご飯は、その……モンスターのミンチから吸収できるものだから」


静寂が訪れる。


「日向……あんたルコちゃんになんてもの食べさせているのよ!」

「ふべらっ」


また強烈なビンタを食らった。そして悶絶する母さんを見る。俺の顔の強度を忘れたか。


「では、私は今からダンジョンに潜りミンチ肉を回収してきます」


「いや、待った。それは無理だ」


「なぜっ、………ドロップ化現象ですね。見落としていました」


モンスターのサイズによってドロップする時間が異なる。東堂さんが持ってこようとしたラビットは、ミンチ肉に出来てもその後1分と待たずにドロップ化される。東堂さんも知っている情報だけど、頭から抜けるほど気持ちが切羽詰まっていたのだろう。悔しそうに唇を噛んでいる。


「持ってくるのではなく、ルコをそこへ連れて行きましょう」


「あんた、また馬鹿なことを」


「母さんは黙ってて。大丈夫、行くのは北浅井だよ。あそこのラビットで試してみる」


「念のため、私もついていくわ」


ということで、院長を説得し退院をした。その足でダンジョンへ向かった。


「さぁ、行こう」


ルコを背負い、ラビットを目指す。


「あの、1つだけ教えてくれませんか? 」


「いいけど、なにを? 」


「どうして俺たちにあのダンジョンを進めたんですか? 東堂さんの情報網なら、あそこのダンジョンがどれほど危険か耳にしているでしょう? 俺はレベルが上がっていたから、1階層ならイケるかもって軽い気持ちで挑んでしまったけど。教えてください。なぜ、あのダンジョンを選んだんですか? 」


俺の言葉に目を開く。言いたくないのか、俯いてしまった。


「ルコちゃんなら、もしかしたらと思って」


「え? 」


「高橋くんはルコちゃんの強さを聞かされて、思ってしまったの。この子なら、妙立寺ダンジョンの事件の原因を探れるんじゃないかって。でも、蓋を開ければ私の浅はかな考えが、高橋くんたちに大怪我を負わせてしまった。ダンジョン職員失格よ」


そうだったのか、変に期待させてしまった俺にも非があるな。未知の存在であるジュエリードール。兵器になり得る可能性があるからこそ、ダンジョン攻略にうってつけだ。遅かれ早かれ、こうなってもおかしくはない。



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