ランク5のダンジョン
妙立寺カラクリダンジョン。
寛永時代、武士を潜伏させ、城を攻め落とさんとする敵を欺く寺として建てられた重要文化財。隠し扉に城への隠し通路など、カラクリが寺の中に組み込まれている。だが、戦に使われた記述はない。
「どこから見てもただの寺だなぁ」
場違いなゲートが階段の先に見える。
「妙立寺自体は破損が少なく、ダンジョンによる損害はありません。ただ…」
階段を登りきった先、ゲートの横に巫女が立っていた。ランク5のダンジョンには、時たま無謀な挑戦者が現れる。そのため、ゲートとは別に管理人が存在する。
「なんて場所に穴があるんだよ」
前方に集中していたら絶対に気づかない。そんな絶妙な場所にダンジョンの入り口があった。
「そこはもともと敵を葬るカラクリの一つ。今はダンジョンに飲まれ、口となり階段が存在します。高橋様ですね、東堂さんから話は伺っています。人喰いのダンジョンへようこそ」
「は、はい……人喰い? 」
「知らないのですか? アレは一年前、当時日本のトップランカー赤井 裕二 ( あかい ゆうじ )、彼がこのダンジョンに挑み消息を絶った。彼の救出に駆けつけた実力者も誰1人帰らす、100人を飲み込んだと恐れられています。その後、挑む者は命知らずの馬鹿ばかり」
トップランカーが生き残れなかったダンジョン。俺、場違いな所へ来てしまった。
「2階層までなら、なんとか救出できます。御武運を」
一段一段が重い。何度も出入り口を振り返り、下りていく。下りきると、全て木造りのダンジョンが現れた。
「ルコ」
「私、出撃します」
リュックから飛び出し、なぜかトリプルアクセルを決める。
「いきなりどうした」
「不思議な胸の高鳴りがあります」
ルコのいた世界に似ているのか?
懐かしい、何か惹かれるモノがあるのかソワソワしてて落ち着かない様子だ。
「今日は無理せず、手堅く1階層のモンスターを攻略していこう」
歩くたび床が軋む音を立て、古い家屋を連想させる。この階層のモンスターは名前しか知らない。というのも、ダンジョン発見時に派遣された自衛隊探索チームは、参加した鑑定士を残し全滅したためだ。 それ以降生存率は1桁を割り、鑑定士の証言で名前だけが残っている。
「敵がどこから現れらか予想できない。ルコ正面だけじゃなく、周りに注意するんだ」
「了解であります」
途端、左壁の板がクルンと回転し、何かが飛び出してきた。
「ご飯」
すかさずルコが攻撃を開始する。いつもならそこであっという間に肉片に変わるが、
「潰せない」
ルコの粉砕剛拳が当たるも、モンスターは衝撃に耐え、ルコに小刀を振るう。手に小さな切り傷ができた。
「粉砕失敗。被害軽傷」
初めての反撃にルコの動きが止まった。
が、それも僅かな時間だった。
「粉砕」
「粉砕」
「粉砕」
相手に反撃する隙を与えたえない、ラッシュをかました。殴る殴る殴る。その度、一撃で潰れない相手を見て、嬉しいのか声がどんどん高まっていく。
「ふn……あああああ」
後ろの壁から新たな敵が飛び出し、背中に小刀がもろに食らってしまった。
「ルコおおおお」
落下するルコに手を伸ばす。
地面すれすれに、身体を抱きしめた。
上から敵の攻撃が降り注ぐ。ルコに当たらないよう、覆い被さる。すでに装備は細切れになり、久しぶりの痛みが走る。
「主人、主人」
「大丈夫。救援信号を出したから救出が来るまでルコは俺が守る」
薄れていく意識の中、手に持っていた救出要請用のスイッチを押した。これで助けが来る。
「ああああああああ」
俺の背中の向こうで、何かがぶつかり合う音が遠くに聞こえてくる。そこで意識が途切れた。




