新しいカードと鑑定鏡
朝起きると、机にあるカードを見てニヤける。
(ダンジョンクリアおめでとうございます。裏試験を合格されましたので、カードの書き換えを行います。こちらが新しいカードです)
西野さんたちと別れた後、家に直帰ではなく斡旋センターに寄り道した。何故ならダンジョンクリアを果たし、めでたく初心者卒業を果たしたからだ。
そこで受け取ったカードを、こうして今眺めている。新品になったカードは依然と違い、白から青に色が変わっている。これがランク2以上に挑める者の証だ。
( いいですか? ランク2以上のダンジョンに挑む権利を得ましたが、それは逆に死ぬ危険が上がったとも言えるのです。これからは挑むランクは自己判断になります。決して無謀な選択はしないようにお願い致します)
ランク5以外のダンジョンが無条件で入れる事になった為、初心者卒業後の死亡率は全体で1番高いと言われている。
センターの人も口酸っぱく注意を促しているが、なかなか改善の兆しが見えないと落ち込んでいた。
俺も次は今江ダンジョン……俺が発見したダンジョンに挑もうと思っていた。ランク3と言われているのに、入る権利を得るとついつい足を運びたくなってしまう。
いけない、この誘惑が命取りになるのかもしれない。
顔を洗い、気を引き締める。今後、ランク2でレベルを上げていかなければならない。それにはルコの力が必要だ。だが、未だ課題としてルコの粉砕スタイルの改善が必要だ。
昨日は西野さんたちのお迎えという予想していなかったイベントが有り、鑑定鏡が使えなかった。なので、先ずは鑑定鏡でレベルを調べよう。
ついでにルコのご飯も済ませてしまおう。
「主人、行くのか」
クマさん柄のパジャマ姿のルコが眠そうに部屋へ入ってくる。母さんと東堂さんが買い込んだルコ用の服の一つ。ピンクの生地に茶色と白色のクマがハグしているデザインだ。
昼間はダンジョンで暴れ、夜はエネルギー消費を抑える為、母さんと一緒に寝ている。起きかけは起動に時間がかかるのか、ぽーっと気が抜けた顔をしている。
「うん。ダンジョンに行くから、パジャマ脱いできなよ」
「ぷぱぱーい」
寝起きは頭が回らないのか、返事が面白い。妹が出来た気分だ。パジャマをその場で脱ぎ捨てて、いつもの姿に戻る。
「完了であります」
……脱ぎ捨てたモノは俺が洗濯カゴに入れておく。
「ご飯」
「もう少し待て。先に鑑定鏡に行く」
リュックから飛び出そうとしていた所を抑え、更衣室から買取受付に行く。
「すみません、鑑定鏡を利用したいのですが」
「おはようございます、高橋様。まだ誰も来ていませんので、どうぞご利用くださいませ」
鑑定鏡の噂を聞きつけわざわざそれだけに来る輩が現れた。鑑定鏡で見るレベルは個人情報扱いされる為、事前に予約か当日確認で完全貸切になる。朝早く出てきた為、まだ先客がいなくすぐに利用できる。早起きは三文の徳ってな。
鏡の間の鍵を受け取り、部屋へ案内してもらう。入ると、正面に姿鏡サイズの鑑定鏡があった。
「手をかざすと、身体から伝わる魔力を感じ取り鑑定を始めます。では、ごゆっくりどうぞ」
言われた通り手をかざす。すると、身体から何かが流れていく感覚が腕、指先へと伝わる。
これが魔力?
探索者はレベルを得るのと同時に魔力を身体に宿すそうだ。スキルや魔法をアイテムで習得出来るのも、この魔力があるからこそ可能になったのだ。なので、モンスター狩りを経験していない一般人は、いくら金をつぎ込みアイテムを得ても、全く使えないアンティークになる。
魔力を読み取ったのか、鏡に文字が浮かぶ。
タカハシ ヒナタ
異形を従える者 レベル23
HP 230/230
MP 125/125
スキル 異形からの贈り物1 強運
………何だこれ。
異形を従える者って職業? 称号? よくわからないが、厨二臭がにおう。
異形ってまさかルコの事か。リュックに目をやり考える。ルコは造られたと言っていた。ならそいつがこのダンジョン、数々のアイテムを造った存在なのか? んー、謎が深まるばかりだ。
それにしても、レベルが23とは昨日まで初心者だったやつとは思えない高レベルだ。それだけ、ビックラビットが強敵だったという事か。このスキルの片方は、おそらくルコからの経験値献上の事を指すのだろう。強運は……身に覚えがないな。
「主人、私のデータはまだですか? 」
「あぁ、ごめんごめん」
意外にレベルに関心があるのか、ルコがまだかまだかと急かす。ルコに手を鏡にかざしてもらい、浮き出た文字を読み上げていく。文字を読めるまでに達していないからだ。
ルコ (ターコイズ)
異形の者 レベル◯☆□
種族ジュエリードール
スキル 首締1 粉砕剛拳5
魔法 リフレッシュ ◯☆□
レベルと魔法の一つが文字化けして読めない。異形の者……やはり異形はルコの事を指しているのか。最近覚え、ビックラビットに使っている首締めがスキルレベル1……。に対して粉砕剛拳なんて恐ろしいスキルが5になっている。いつも盛大に肉片を撒き散らしているのが、このスキルなのだろう。
いろいろツッコミたいが、鏡が答えてくれる訳がなく、さらに謎が深まり頭を抱えながら部屋を後にした。
「レベル」
「あー、なんか凄かったよ。どれぐらいって聞かれても、読めないぐらいとしか言えないけど」
「読めない。それは、神の領域」
「あはは、強ちそうかもしれない」
ジュエリードールそのものが、モンスターの域を超えた存在なのかもしれない。なら、圧倒的な力を持つのも納得出来る。だが、モンスターを統べる側ではなく、なぜ人間のしもべに治るのか理解出来ない点がある。
ジュエリードールは誰の何の為に存在するのか。
「ご飯」
ラビットを絶滅に追い込む姿に、人間側にいてくれて良かったと胸を撫で下ろす。
結局レベルを知ることは出来なかったが、首締めの様になんらかの方法で新しいスキルを獲得出来るかもしれない。粉砕から離れた攻撃スキルがゲット出来ることに期待しよう。




