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孤独なダンジョン攻略  作者: 主食がお菓子
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ツアーとブギーピック

裏試験合格を目指し、今日は一気にボス部屋へ行きダンジョンクリアと高い目標を掲げてた。入り口で意気込んでいると、見慣れた顔があった。


「あら高橋様、これからダンジョンですか? 」


「西野さん」


斡旋センター初日に窓口で対応してくれたお姉さん、西野 瞳 (にしの ひとみ) さんが装備姿で現れた。


「これからダンジョンですか? 」


「えぇ、今日はツアーが入りまして。臨時収入の為の副業です」


ツアーというのは、探索者資格を取得してから一週間の間、斡旋センターの社員を自費で雇い、探索者としての実戦講習を行ってもらうモノだそうだ。ちなみに、政府非公認である。だが、違法にはならないので探索者ブームが落ち着いて人手に余裕が出来た所では、よくある事らしい。


「人によって変動しますが、ツアー料金も1人最低5千円からありますから、高卒の方も利用しやすいですよ。政府非公認なので、大々的に利用を呼びかけられないのが残念です」


それだけ収入がいいのか。センターの職員は公務員だ。政府としても副業を認める訳にはいかないから、非公認扱いなのだろう。


「だから、特に案内がなかったんですね」


「いえいえ。ツアーを受ける方の殆どが、人生一度は体験してみたいという理由ですから。旅行会社経由で知ったという人もいます。本気で探索者上位を目指す人は、何事も自力で成し遂げる人ばかりですから、高橋様は素質があります」


「ははは、ありがとう。あと、ここはセンターじゃないので、様ではなくさんでとお願いします」


「そうですね。失礼しました」


話し込んでいると、奥からガシャガシャと金属が擦れる音がしてきた。


「ごめんなさーい。着替えに時間かかっちゃいました……ってあれ、高橋くん? 」


重そうなメイル姿で現れたのは、飲み会で絡んできた橋場 梨花だった。酔っ払いの戯言だと思っていたら、まさか本気で探索者になるとは、驚いた。


「見てみて、防御はバッチリ。重さと見た目がマイナスポイントなんだよね」


素材が金属だからな。しかし、金持っているな。メイルって探索者専門店で取り扱っているクロム鋼鋼材が使われているんだぞ。重いが強度、硬度に優れている。


「武器は……弓だよな。それ」


「中高、弓道部だったんだよー」


「私もです。お揃いですね」


そう言って、扱う弓を見せてくれた。橋場とは違い、モンスターの素材が使われていて見栄えがいい。


「ツアーは3階層まで行きますので、張り切ってカッコいい所をみせますよ」


「結構深くまで行くんですね」


「2階層は素通りですから」


えー、ビックラビットとツーショット撮りたいのにーと橋場がゴネた。お前もう30歳なんだから、我慢しろと言いたい。


「ビックラビットは倒せない事もないのですが……初見ちびりますよ? 」


その一言で大人しくなった。


俺はルコが居たから巨体で殺されかけたとはいえ、どこか心に余裕があった。ソロで遭遇したら間違いなく漏らす自信はある。


「ではお先にー」


と、2人はダンジョン内へ消えて行った。


「主人、行かないのか? 」


リュックからピョコっとルコが顔を出す。


「行くよ。でも、人気がない場所まで食事はお預けな。リュックの中で大人しくしててくれ」


女性にルコの食事シーンはお見せできない。ましてや、スプラッタにするルコの脅威的な破壊を知られる訳には行かないので、ダッシュで3階層に着くまで隠れてもらう事にした。



「あー、緊張したー」


汗でジャージが蒸れる。無事に3階層に着いたが、途中のビックラビットの壁ドンには肝が冷えた。音がする方角を避けたので、なんとか遭遇しなくて済んだからよかったものの。


「毎度、こんなに緊張して汗だくになるなら、他のダンジョンに行くわ」


北浅井ダンジョンを避ける探索者の気持ちがよくわかった。


さて、ここからルコを先頭に立たせる。


「ご飯」


「いや、まだだ。4階層にしよう」


西野さんがツアーは3階層までと言っていたので、念には念を入れて、食事は4階層にしてもらおう。


しぶしぶ飛んでいくルコの後ろを駆け足でついて行く。3階層はキラーバット。コウモリに似たモンスターだ。頭上から襲ってくるため、ルコも天井を警戒している。


運悪く襲ってきた1匹を壁に殴りつけ、その場を去った。俺も素材が惜しいが、ルコの後に続く。集団に遭遇した場合は強行突破し、邪魔な奴をナイフで切り裂いていく。ビックラビット6体分の経験値のおかげで、問題なくキラーバットを仕留める。


休憩を入れつつ、走る事30分。漸く階段にたどり着いた。キラーバットの返り血をルコに洗浄してもらい、4階層に下りた。


「ご飯ー」


「まっt 」


あっという間に闇に消えていった。仕方なく、1人ルコの帰りを待つ。どこからか破壊音や断末魔が聞こえてくる。随分待たさられたストレスが溜まっていたのか、一段と激しい。


4階層は豚に似たモンスター、ブギーピック。ピンク肌に鋭い牙と長い一角が特徴だ。必殺のツノアタックで、相手を仕留める。イノシシ顔負けの突進野郎だ。


それが今ルコによって簡単に殺されていく。


「満足」


ラビットの時同様、俺用に捕まえたブギーピックを投げてよこした。すかさずナイフで仕留め、素材を剥ぎ取った。


「ラビットより時間がかかったな」


「私もそれだけ成長している」


ルコもレベルが上がっている。その為エネルギーの蓄積量が増加し、食事量が増えたのだろう。


「帰ったら、買取センターの鑑定鏡で見てみような」


東堂さんの権限で、この度買取センター北浅井店にレベルがわかる鑑定鏡が導入されたのだ。これはダンジョンの宝箱から発見された鑑定水晶を、改良して壁掛け型の鏡にしたモノだ。全国で導入が進み、今日この過疎化ダンジョンにも導入されたのだ。


更衣室でソワソワしたなぁ。でも、見るならダンジョンをクリアした後の方がいい。なので、未だ自分のレベルがどれだけなのか知らない。


剥ぎ取りも慣れたもので、あっという間に皮と肉と角と牙になった。


「骨も使えそうな気がするけど、値段が安い割にスペースを取るから持っていけないんだよな」


ビックラビットの時も思ったが、骨はかなりの強度があり素材としてはいい。だが、太く、長いので1本でもリュックに収まりきれない。マジックバックなど収納機能があるアイテムがなければ持ち帰って買取に出せないのである。


「骨は諦めるしかないか」


あとはドロップ品の魔核を回収し、ダンジョンを進んだ。


「うおっ、素早いなぁ」


ツノアタックを決めてくるブギーピックをなんとかかわしながら、ナイフでダメージを与える。動きが速く、なかなか致命傷にならない。


レベルは上がっているが、一撃がまだまだ弱く、倒すのに10分以上かかった。


漸く倒したブギーピックを剥ぎ取るが、皮は傷が酷く、角も欠けていた為、買取額が下がると落胆した。ルコの方は相変わらずで、ドロップ品の魔核しか回収できない。首締めするには首の長さが足りなかったようだ。


本命はボス部屋なんだし、気にせず次に行こう。そう自分に言い聞かせ、階段を目指した。


ブギーピックとの戦闘に慣れてきた所で、階段にたどり着いた。


「この先がボス部屋になっている5階層だ」


「主人、私負けない」


「ああ、行こう」


階段を下りた先にある閉ざされた扉を目にし、一度深呼吸をする。


さぁ、行こう。


手をかざすと、自然に扉が開いた。


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