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島ねこコテツと山神の呪い  作者: たらふく
21/35

二十一、慎平との出遭い



俺は当てもなく、一晩中歩き続けた。

ほどなくして東の空から陽が昇った。


河川敷からどれほど離れたのか見当もつかないが、俺はまだ川べりにいた。

水を飲んでから、草むらで一休みすることにした。


俺はどこへ行きゃええんじゃ・・

島には帰れんし、かといってソラのもとへ戻るわけにもいかんし・・

フクもマサも、どないしとんじゃろうの・・


「あれ・・こんなところに黒猫がいる・・」


一人の人間が俺を見つけた。


「きみ、野良猫かい」


そいつは小柄で細い若い男性で、どうやらランニングをしていたようだ。


「おいで~、怖くないよ」


そいつは俺を呼んだが、俺は警戒して動かなかった。


「僕、猫が好きなんだよ~、ほらほら」


手を出して俺を撫でようとした。


「シャア~~!」


俺は牙を見せて威嚇した。


「えっ!なに、その牙。嘘だろ・・」


俺は隙をついて逃げ出そうとした。


「ちょ!ちょっと待って!僕、きみと話せるかも知れないんだよ!」


え・・

俺は一瞬立ち止まった。

話せるて・・どういうことなら・・


「ちょっと待ってよ。今、出すからね」


そいつはズボンのポケットの中から、電話のような物を出した。


「スイッチオン!っと。ほら~鳴いてごらん」


なに言よんな・・こいつ・・

けれども俺は、ひょっとしてと思い、話してみることにした。


「お前は誰なら」

「あっ・・反応があった。えっとー、ああ、僕?僕は小松こまつ慎平しんぺいって言うんだよ」


えっ・・こいつ・・俺の言葉がわかっとるが・・


「きみの名前は?」

「俺は、コテツ」

「えっと~・・ちょっと反応が遅いんだよね。待ってね。ああ・・コテツって言うんだ」


ほ・・ほんまじゃ・・わかっとるが・・

俺はこの人間を通して、何とか呪いを解いてもらえないかと思った。


「慎平・・とか言うたの・・」

「えっと・・ああ、うん、僕、慎平」

「俺・・遠い島から来たんじゃ・・」

「ちょ・・ああ~~もう・・やっぱり改良が必要だな・・もう一度言ってくれる?」

「島から来た」

「え・・ああ、そうなんだ。島から来たんだね」

「そうじゃ」

「で、ここで何をしてるの?」

「俺の言うこと、信じてくれるんか・・」

「えっと・・ああ・・うん、もちろん信じるよ」

「俺・・百年前の猫に憑りつかれとんじゃ・・」

「ちょっと待ってね~。なになに・・えっと・・えっ!それってどういうことなの?」

「話せば長ごうなるんじゃけんど・・」

「どれどれ・・えっと・・ああ、そうなんだ。この機械ね、僕が作ったんだよ。それでさ~まだ完成品じゃないんだ。だから話が長くなるとややこしいんだ」

「そ・・そうか・・」

「そうそう。短いのだとすぐに反応するんだよ。あっ・・もしよかったら僕んちに来ない?」

「え・・」

「ゆっくり話を聞くためには、ここじゃ無理だし、僕、学校もあるからね」

「そうか・・」

「僕、きみを抱っこしてもいい?」

「ああ・・」

「ありがとう」


そして慎平は俺を抱き、歩いた。

慎平の身体は温かかった。

そして俺を抱く腕も、とても優しかった。


「僕さ~、陸上選手なんだ~」

「それは、なんなら」

「走る練習をして、大会とかも出るんだよ」

「大会?」

「大勢で走って、競うんだよ」

「へぇ~」

「僕、走るの好きなんだ~」


これはなんの偶然か・・

山神も走りたい言よった・・

俺も広い大地を走り回ってやると、約束した・・

人間も、走るのが好きなんじゃな・・


「慎平・・」

「なに?」

「お前、年はいくつなら」

「僕、十五歳だよ」

「えっ・・俺より年下なんか・・」

「そうなの?コテツはいつくなの?」

「俺は、人間でいうところの二十歳くらいじゃ」

「あはは、そうなんだね。先輩だね~」


慎平は、とても嬉しそうに笑っていた。

こいつは・・ええ人間なんじゃな・・


「さあ~着いたよ」


やがて慎平の家に到着した。

そこは、どこにでもあるような普通の家だった。

キハチやシンバの家とは、全く違うの・・


「ただいま~」


慎平が大きな声で家の人に挨拶をした。


「おかえり~」


奥から母親らしき声がした。


「お母さん、猫、連れて来たよ」

「あらヤダ~また?」


母親が奥から出てきて、呆れた顔をしていた。


「もう~慎平、いい加減にしてよね。これで何匹目?」

「今回は、絶対に友達になれるよ」

「そんなこと言って。あんたが猫と話すたびに、出て行ったじゃないの」

「あの時は、まだ未完成も未完成だったからだよ。今回はちゃんと話せたんだ」

「はいはい。ちゃんと世話はしなさいよ」

「はーい」


慎平は二階の自室へ俺を連れて行った。


「ここが僕の部屋だよ」

「そうか・・」

「あっ・・もう充電しなくちゃ。ちょっと切るからね」


そう言って慎平は、機械の電源を切った。


「これがなくても話せたらいいんだけどな~」

「そうじゃな・・」

「わかんないよ~、なんて言ったの?」

「そうじゃな」

「お腹空いた、かな?」

「違うけに・・。いや・・腹も減っとるが・・」

「あっ、そうだ。僕が学校へ行ってる間は、外に出てもいいよ。でもあまり遠くへ行かないでね」


俺は、コクリと頷いた。


「おおっ!わかってくれたんだね」


俺はまた、コクリと頷いた。


「あはは、コテツって頭がいいんだな~。お腹空いてるよね」


俺は三度みたび、頷いた。


「はーい。じゃ、持ってきてあげるから待っててね」


慎平はそう言って部屋から出て行った。

俺は窓辺へ行き、外を眺めてみた。

川は見えとる・・

ここは・・ソラから遠くない場所なんじゃな・・


「コテツ~、はい、ご飯ね」


慎平はキャットフードと皿を持って、部屋に戻ってきた。


「たくさん食べるんだよ~」


慎平は餌を皿に入れ、俺に出してくれた。

俺は、遠慮なく食べた。


「あっ、水だ。水を忘れてたよ~」


慎平は部屋を出て、水を取りに行った。

部屋を見渡すと、猫の写真があちこちに貼られてあった。

慎平は、そうとうの猫好きなんじゃな・・


慎平が戻り、俺は水も飲み、お腹が一杯になってしばらくその場へ寝ころんだ。


「もうすぐ充電が終わるからね~」


慎平は独り言を呟いていた。

それにしても、猫の言葉がわかる機械を発明するとは、慎平はかなり頭がいいんだろう。

未完成とはいえ、俺は感服していた。


「よーしっ。充電完了~~」


そう言って慎平は、機械のスイッチを入れていた。


「さあ~ゆっくりでいいから、話してね」

「なにから話せばええんかいの・・」

「そうだな~、島を出たわけから」

「うん・・」

「旅行とか?」

「そがなええもんじゃねぇんじゃ・・」

「そうなんだ・・」

「俺・・百年前に死んだ、猫に憑りつかれとんじゃ・・」

「あっ・・充電したばかりだから、反応がいいね。えっと・・なになに・・ああ、それそれ、それだよ。どういうことなの?」


そして俺は、時間をかけて話をした。

すると慎平は、信じられないという風に、驚愕していた。


「だから・・その牙なんだね」

「そうなんじゃ・・」

「憑りついている猫を、コテツから追い出さないとね・・」

「そうしてくれんか・・」

「うん、努力してみる」

「じゃがの・・」

「なに?」

「俺の牙や爪を取り除こうとすると、山神が出てきて、させんように抵抗すると思うんじゃ・・」

「なるほど・・」

「最悪・・人間を殺すかも知れんのじゃ・・」

「そっか。わかった。とにかく、僕が色々あたってみるよ」

「うん・・」

「じゃ、僕、今から学校へ行くから、帰るまで待っててね」

「ああ、わかった」

「ちなみに、僕の母は、大丈夫だから。怖がらなくてもいいからね。それと父は海外で仕事中。だからこの家には僕と母だけなんだよ」

「そうか・・」


そして慎平は制服に着替え、家を出て行った。

俺は慎平が何とかしてくれると、希望を持ち始めていた。

飼い猫になるつもりはないが、あのままだと、いつ誰が襲ってくるかも知れない。

俺は危険を回避するために、しばらく慎平の世話になろうと決めた。

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