↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
島ねこコテツと山神の呪い  作者: たらふく
PR
11/35

十一、奇怪



「コテツ~」


俺が根城にしている縁側の下で寝ていると、ソラが声をかけてきた。


「おう、ソラか」


俺はゆっくりと立ち上がり、縁側から出た。


「B集落は、どうじゃったんな」

「ああ・・」

「俺の言うた通りじゃったろ」


俺が口籠っていると、様子を察してソラはそう言った。


「ボスには会えんかったが、どうもフクが誤解されとるようでの・・」

「どういうことなら」

「フクが山神を鎮めたことは知っとるようなんじゃが、それをなに勘違いしとんか、恐ろしい猫じゃ言うて、追い返されたんじゃ」

「なんなら、それは・・」

「呪われた猫じゃぁ言うての・・」

「誰がそがな噂を流したんかいの」

「さあ・・噂言うもんは、悪いように伝わり出すと、あっという間じゃけに」

「そうよの。ええ噂やこ、滅多にありゃせんもんの」

「フク、かわいそうに、もう行かん言うて、落ち込んどった」

「そうかあ。まあフクは気の毒じゃったが、どのみち、あそこへやこ、行かん方がええ」

「うん、もう行かんことに決めた」

「それがええ。それより餌を食いに行くぞ」

「ああ、もう定期船の時間か」


俺とソラは、急いで桟橋へ向かった。

桟橋の光景はいつも通りで、多くの観光客が降りてきた。

そして俺たちや、他の猫たちも一斉に餌やり場へ走った。


「お友達がたくさんね」


そこに一匹の猫を抱えた女性がそう言った。

なんなら・・この猫は・・

そいつは、妙に垢抜けした外国のオス猫だった。

俺はそいつと目が合った。


そいつは飼い主の腕をスルリと抜け、地面に脚を付けた。


「あっ、こらこら、シンバ。危ないからダメよ」


女性がシンバとやらを追いかけた。

危ないて・・どういうことなら・・


「やあ、田舎者さん」


シンバが俺にそう言った。


「お前、なんなら」

「あはは、なんだよ、そのダサイ言葉は」

「お前こそ、なんなら。いきなり失礼なこと言いよって」

「ふぅ~ん。ここの猫は、こんな風に餌をもらってるんだ」

「なに言よんな」

「それにしても汚いねぇ・・」

「なっ・・なんやと!」

「お風呂にも入ってないんじゃないの?ブラッシングとかしてるの?」

「ブラッシングて、なんなら」

「あはは。そんなことも知らないんだ。だから汚いんだね」


確かにシンバの黒と白の毛は、光沢があり綺麗だった。


「僕ね、アメリカンショートヘアっていう猫なんだよ」

「それがなんなら」

「僕の飼い主がね、島の猫を見たいって言って、わざわざ東京から来たんだよ」

「・・・」

「猫は汚いけど、いいところだね。空気がおいしいよ」

「東京もんいうんは、そがな失礼なやつばっかりなんか」

「失礼だって?あはは、事実を言ってるだけだよ」

「お前の飼い主も、物好きじゃの。まあ、せっかく来たんじゃし、ゆっくりしていったらええが」


俺はムカついていたが、フクが「みんなと仲良うせんといけん」と何度も言った言葉が頭をよぎり、これ以上歯向かうのをやめた。


「ありがと。ゆっくり景色を眺めさせてもらうよ」


シンバはそう言って、堤防の先の方へ歩いて行った。

その後を飼い主が追いかけていた。


「コテツ・・あいつ、なんなら」


俺の横で会話を聞いていたソラが、そう言った。


「東京もんらしいの」

「なんか、鼻につくやつじゃの」

「まあ、ええが」


そして俺は餌をたらふく食った。

それにしても・・フクが来とらんが・・

あいつ、なにしょんなら・・


俺とソラは腹一杯になり、シンバとは別の堤防の先へ行き、寝そべった。


「フクはどうしたんなら。来とらんが」


俺はそう訊いた。


「どうしたんじゃろの。俺も知らんが」

「あいつ・・まさかB集落へ行ったんじゃねぇんじゃろの」

「まさか。行くならコテツに声をかけるじゃろ」

「そう思うけんど・・」


「ねぇ、きみたち」


そこでシンバが俺たちの傍へ寄ってきた。


「なんなら」


俺は立ち上がり、シンバを警戒した。


「この島の名所とかあるの?」

「名所?」

「見るに値する場所だよ」

「そがなもん知らん。あるとしたら島全体と、この景色じゃ」

「ふーん。つまんないね」

「なんなら」

「東京はすごいよ。とても賑やかだし、活気があってさ」

「東京いうんは、広いんか」

「広いよ。きみたちには想像もできないところだよ」


俺は岡山の「陸」を見たが、シンバの言う東京の「陸」にも興味をそそられた。


「東京いうんは、遠いんか」

「そうだね~。ものすごく遠いよ」

「そうなんか・・」

「えっ、なに?もしかして、東京に行きたいとか思ってる?」

「別に、そがなことやこ・・」

「ダメダメ。絶対にダメだよ」

「なんでなら」

「田舎者のきみなんて、とてもじゃないけど無理だよ。しかも汚いし」

「お前、さっきから汚い汚い言うて、えらいバカにしてくれるんじゃな」


ソラがそう言った。


「バカになんてしてないよ。事実を言ってるだけ」

「せぇで、無理ってどかな意味なら」

「とてもじゃないけど、きみたちみたいな田舎者は、大都会に対応できないって言ってるの」

「東京が、なんぼのもんなら」

「嘘だと思うなら、一度行ってみたら?でも、なにがあっても知らないよ」

「なっ・・なんじゃと!」

「ソラ・・もうええが」

「コテツ・・ほなけんど・・こいつ・・」

「言いたいやつには、言わせときゃあええんじゃ」

「・・・」

「まあ、俺が思うに、東京いうとこが、ほんまにええとこじゃったら、俺らをバカにやこ、せんが」

「なんでなら」

「つまりじゃな・・シンバみてぇに、相手をバカにすることで自分が優位に立つ、そういうところなんじゃろ。せわしないところなんじゃろ」

「なっ・・なんだと!僕をバカにしているのか」

「バカにやこ、しとらんが。そう思うただけじゃ」

「まあいいさ。行く勇気があるなら、どうぞご勝手に」

「お前にやこ、命令される覚えはねぇけに」

「なんだよ。ふんっ」


そう知ってシンバは飼い主のもとへ行った。


「東京もんが、あんなやつばかりじゃと、ろくでもねぇところじゃな」


ソラがそう言った。


「まあ、ええが。それよりフクじゃ。あいつどないしたんなら・・」

「ほんまじゃ。餌はどがにしとるんかいの」

「ちょっと行ってみるか」

「うん」


そして俺とソラは、フクが根城にしている空き家へ向かった。


「おい、コテツ、ソラ」


途中でマサと会った。


「マサ、フクはどうしたんなら」


俺はそう訊いた。


「それじゃが。おい、コテツ・・」

「なんなら」

「お前・・フクを襲うたて・・ほんまか・・」

「えっっ!なに言よんなら」

「フクは、コテツに襲われた・・言よったぞ・・」

「マサ!そがなこと、あるわけねぇが!」


ソラが大声を挙げた。


「いや・・俺もそう思うたんじゃ。コテツがフクやこ、襲うわけがねぇと」

「どうなっとんじゃ!」

「いや・・三日前の夜にの・・突然コテツがやって来て・・「お前やこ、死ね」言うて襲うてきた言うんじゃ・・」


え・・三日前の夜・・?

知らん・・俺はそがなこと知らんし、やっとらんぞ・・


「それ、俺じゃねぇけに。なんか・・勘違いしとりゃせんのか」

「俺も何度も確かめたんじゃ。じゃけどフクはコテツじゃった言うんじゃ・・」

「そがなこと、絶対にありゃせん!」

「でもな・・コテツ」

「なんなら」

「お前のその牙・・どないしたんなら・・」

「え・・」


俺はそう言われ、少し戸惑った。


「お前のその牙・・猫のもんじゃねぇが・・。いつからそがになったんなら・・」

「いや・・これは、数日前・・気がついたんじゃ・・」

「なんで、そがなことになっとるんなら」

「これは俺もわからんのじゃ」

「フクが言うには、長い牙を持っとった言うての。それで姿も声もコテツじゃったと」

「そっ・・そがなっ・・」

「コテツ・・お前、憶えとりゃせんのか・・」

「憶えとるもなんも、俺は知らんが!というか・・俺がフクを襲うわけがなかろう?」

「うーん・・まあええ。とりあえずフクのところへ行ってみんか」

「ああ。今もそのつもりじゃったんじゃ」


俺がフクを襲った・・?

まさか・・そがなこと、絶対にありゃせん!

これはなにかの間違いじゃ。

あっ!もしかしたら・・B集落の猫の陰謀かも知れんぞ。

仲間割れさして、こっちが弱った時に、襲うて来るんじゃねぇんか・・


ほどなくして俺たちはフクの根城に着いた。

中へ入るとフクと母親がいた。


「フク・・」


俺はそう声をかけた。


「コテツ・・」


フクは全く元気がなかった。


「お前・・どしたんなら・・」

「コテツは・・もう俺とやこ・・一緒におりとうねぇんじゃろ・・」

「なに言よんなら!さっき、マサに聞いたけんど、俺はお前を襲うとらんけの!」

「・・・」

「コテツくん・・」


そこで母親のサラが声をかけてきた。


「なんなら・・」

「岡山でのことやら・・フクを面倒見てくれたことには、ほんまに・・感謝しとるんよ」

「・・・」

「じゃけど・・この間の夜は、どうしたんなら・・」

「俺は、そがなことやこ、知らんのじゃ・・」

「じゃけど・・私も見ちょったんよ・・。それで私が止めたんじゃが・・」

「え・・」

「それでフクはこの通り・・脚を怪我しとんよ・・」


フクの脚を見ると、後ろ脚に切り傷があった。


「そ・・それ、俺がやった言うんか・・」

「そうじゃが・・。憶えとらんの・・?」

「憶えとらん・・」

「ほうか・・。それなら仕方がねぇが・・お願いじゃけ、もう二度とこんなことせんで・・」

「せん!そがなこと、これからどころか、これまでもやったことはねぇけ!」

「フク・・こう言よるが、お前はどうすんなら・・」


サラがそう訊いた。


「俺は・・コテツやみんなと、仲良うしたい」

「ほうか・・。コテツ・・フクはこう言うとるが・・」

「当たり前じゃが!仲良うするに決まっとるが!」

「コテツ・・ほんまじゃな?俺、仲良うしてもええんじゃな?」

「ほんまじゃ!じゃから、外へ行かんか!」

「う・・うん!」


こうしてフクは、ようやく外へ出た。

それにしても・・妙な話じゃ・・

俺がフクを襲うわけはねぇ!これは絶対じゃ!あり得ん!

サラも、なんか勘違いしとんじゃ。

黒猫やこ、他にもようさんおる。


俺はB集落の猫の仕業じゃないかと、疑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。