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つながり  作者: しゃもん
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9.すき間-麗華

 麗華は名門武闘家の一人娘として生まれた。


 母は平凡だったが、麗華は母に惚れた父に似て、美しい顔と高い魔力を持っていた。


 母は優しく、父は厳しかった。


 父の愛は母にだけ向けられ、母の愛は父似の麗華と父に向けられた。


 その当時、この国の王政は物凄く荒れていた。


 血で血を洗うことが日常茶飯事に起きていた。


 母は武闘家の棟梁として、一族を率いて王を守った。


 そんな荒れた時代を超え、王の治世が安定してきた時にそれは起こった。


 武闘の名門である我が一族に裏切り者が出たのだ。


 裏切り者は父に恋した母の部下であり、親友だった。


 父に惚れ、母を裏切って敵方を手引きした。


 母は父を庇って瀕死の状態になった。


「母様。」

 涙で濡れた麗華の顔を弱々しい手で触ると、母は麗華に一族の秘術である”真実の瞳”を授けその場で最後の命令をすると亡くなった。


 一族に入るもの全てに”真実の瞳”をかけろと、そう麗華に母は約束させた。


 麗華は涙ながらに頷いた。


 母を失った父はそれからすぐに病気でなくなり、まだ年若い麗華が一族の後継者になった。


 若いことを理由に反対する一族に”真実の瞳”を掛けて、本当に一族のことを考えているものか、私欲で動いているのかをそれで暴き出し、一族を粛清して行った。


 数年で一族の人数は半減したが、逆に絆は強固になった。


 それからの麗華は美しい顔と強い魔力、それに名門の名をバックに王国の陰に君臨した。


 もちろん社交界でも麗華の持つ魅力は凄まじく、異性にもてまくった。


 しかし、彼らは全て彼女が”真実の瞳”をかけると、ことごとく私欲に走るものばかりだった。


 そんなことが続く中、隣国から王に嫁いできた護衛の中に麗華の心を乱す男が現れた。


 武骨な顔だが彼の筋肉質な大胸筋やムチムチとした尻に目がいった。


 どこの痴女だと己を戒めるも気がつくと目が彼を追ってしまう。


 麗華は迷った挙句、彼を呼び出して酒に酔わせ、そこで”真実の瞳”をかけた。


 彼の口が動く。


 麗華の美しい顔や体に惹かれていると、そう彼が叫んだ。


 この男も他の男と同じか。


 この手で殺そうと剣を振り上げると愛する女に殺されるなら本望だと、そう彼は叫んだ。


 麗華は酔って身動き出来ない男にその場で襲いかかり、翌朝彼に責任をとらせた。


 グラスを傾けながら昔のことを思い出していた麗華の肩を彼の伴侶が後ろから抱きしめてきた。


「何を考えているんだ?」


 麗華は妖艶に笑うと、グラスを傍にあったテーブルに置いて背の高い夫の顔をグイッと引っ張ると口づけた。


「あなたを襲った自分を褒めていたところよ。」


 夫は一瞬嫌そうな顔してから口づけを返し、彼女をベッドに運びながらそっと告白した。


「君に襲われたことは、俺の人生で一番うれしかったことだよ。」

 そう小さく呟いた彼の顔は、真っ赤になっていた。

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