7.すき間-長兄と次兄
狭間の長兄が実妹が打ち上げた救援魔法に気がついて執務を放り出すと、慌てて現場に駆け付けてくれた。
そこには消し炭になった何十体もの遺体と第一側妃、そして自分の実妹を腕に抱きしめ微動だにしない護衛の聖がそこにいた。
なにがあったんだ。
長兄の一は地面に横たわっている第一側妃を城に連れて行き、すぐに医師に見せるように部下に指示をすると、今だに身動き一つせず実妹を抱きしめている聖に近づいた。
実妹を受け取ろうと出した一の手は、聖に振り払われた。
「おい。」
「俺が運ぶ。」
一の怒気は聖の冷気に圧された。
人に圧倒されたのは久しぶりだ。
しかし、こいつは何にこんなに怒っているんだ。
だが、こんなところで揉めていても仕方ない。
一は部下に聖が乗る馬を持ってくるように指示を出すと、腕に実妹を抱いた彼を連れて城に戻った。
現場を離れる前に部下にはこの状況を調査するようにすでに指示は出している。
「何があった?」
城に着くと次兄の零次が銀色の髪を振り乱して、城門に駆けつけてきた。
一と同じ母親似の美麗な顔が真っ白になっている。
「第二側妃は?」
一の顔に零次は淡々と現状を説明して来た。
「今のところ命に別状はないようだ。」
そう一に報告した零次の視線が聖の腕に抱かれている実妹に気がついた。
「なんでお前が狭間を抱き上げているんだ?」
美麗な顔が鬼の形相に変わった。
零次は一と違って年が実妹に近いせいか、彼女を溺愛していた。
「”対価の魔法”を使った。」
聖がぼそりと呟いた。
「「なに!」」
一と零次の視線が聖が向ける狭間の左腕に向かった。
零次が聖に抱かれている狭間の腕を触ろうとして、実妹の左腕が肘より先が消失しているのに気がついた。
「何があった。」
聖の襟首を零次が締め上げた。
聖は何も言わない。
あまりの事態に一瞬呆けてしまったせいで、一も身動きが出来なかった。
零次が聖を本当に絞め殺しそうになった所に、彼らの伴侶が飛び込んで来た。
「「狭間様!」」
二人の伴侶は過去に実妹の護衛をしていた。
ものすごい顔で聖の腕から狭間を奪うと、その場から去って行った。
聖は零次に締め上げられたせいで青い顔でその場に頽れ、彼を締めあげていた零次は慌てて嫁たちの後を追っていった。
一は三人が去った後、後始末をするために傍に頽れている聖を担ぎ上げて自分の執務室に連れて行った。
放心状態の聖から状況を聞くと、ちょうど現場から部下が戻って来た。
どうやら犯人は第二側妃のようだ。
聖をその場に放置すると、執務室に駆けつけた父と王の元に向かった。
その頃には第一側妃が懐妊した知らせが王の元に届いていた。
王は第一側妃と狭間の事を知ると、怒声をあげて第二側妃の親族を根絶やしてするよう指示を出された。
はぁ、めんどくせい。
一は第二側妃の親族討伐についてきた聖を横目にで見ながら、帰ったら面倒だなと心の中で溜息を吐いた。