第七十四話 完成品
自分の部屋で眠っていると、コンコンとノックの音が響いた。眠い目を擦って、ドアを開けるとアクアさんの姿があった。
「どうか、したんですか?」
「完成したんだって。」
笑顔で告げられた一言に、私も笑顔になり、急いで美月の部屋に向かった。バンッと部屋を開ける。
「何ができたんですか!?」
私は美月の部屋に突入するなり、そう叫ぶように問いかけた。そんな私の行動に美月は驚いていたものの、嬉しそうに笑顔で、完成した武器を持ち上げた。
「剣?」
木製だけど、一目で剣だと分かる出来栄えに私は驚いた。美月から剣を拝借して、そっと眺めた。流石に、持ち手のサイズが美月のものだから、私の手にはサイズが大きすぎた。流石に切れ味は無いが、鈍器の類として扱う分になら、調度良いのかもしれない。
そんなことを考えながら、私は美月に剣を返した。
「こういう工作とか、得意なんですか?」
短時間で木だけを使い仕上げたとは思えないクオリティに、私は美月に問いかけた。私が問いかけると美月は照れた表情を見せ、呟くように言った。
「弟とに、もっと小っちゃいのをよく作ってたんだ。」
続いた言葉に私もアクアさんも微笑んだ。
「さて、武器も作ったことだしさ、討伐に言ってみようぜ!」
続けられた言葉に美月は顔を曇らせた。ギルドに引きずられながら向かう中美月は半ば叫ぶように言った。
「ちょっと待って!まだ防具作ってないから!」
「武器があれば、なんとかなる!」
アクアさんは美月の制止も聞かず、そのままコーンラビットの討伐依頼を受けて、コーンラビットの群れに遭遇した。
「角生えてるよ!?あれ、刺さったら痛いでしょ!?」
最初に会った時はもう少しクールな子だと思ってたけど、結構チキンな子だったんだ。と1人納得していた。
「ほら、試しに剣で叩いてみろ、危ないと思ったら、俺たちが加勢してやるから、な!」
笑顔で語りかけるアクアさんに、諦めた様に美月はコーンラビットに向けて剣を振りおろした。キュウッと小さな悲鳴を上げてコーンラビットはあっさりと倒れた。あまりのあっけなさに美月は目を見開いて驚いていた。
「嘘!?一撃!?弱くない!?」
剣を片手に茫然としていた。まあ、アクアさん曰く、子供が素手で挑んでも倒せるレベルらしいですからね。私は微笑みながら美月を眺めた。
茫然としている美月の頭をポンポンと撫でながら、アクアさんが笑顔で声をかける。
「な!弱かっただろ?」
「確かに、これならいける!」
そう言うと、美月は嬉しそうに笑いながら、コーンラビットの群れに飛び込むように走って行った。意外とたくましい子ですね。手作りの剣を片手に、コーンラビットの群れに単体で挑むとは、初心者とは思えない無茶ぶりだった。




