第六十六話 水
「水よ敵を流し去れ!水龍」
アクアさんが強力な水魔法を放つ。でも、それでもイフリートはビクともしなかった。いや、それどころかだんだん強くなっているような気がした。イフリートの様子に、私とアクアさんも何かが可笑しいと思った。
「もたもたしていると、どんどん強くなりますよ。私の時もそうでしたから。」
トルテさんが、忌々しげにイフリートを睨みながら呟くように言った。その発言に私もアクアさんも驚いた。今の状態でも結構強いのに、これ以上強くなるの!?私は、スッと息を吸い、魔法の詠唱に入った。
「水よ敵に降り注げ!水雨」
更に術式展開、一定時間、同じ属性の魔法しか使えない代わりに威力があがる。近距離から撃てば打つほど威力があがる。同じ属性の魔法を使えば使うほど威力があがる。武器を所持していない時のみ威力があがる。
のこの四つだ。あまり固定し過ぎると、逆に後が辛くなりそうなので、予め考えておいた術式の一つだった。
特に私がトルテさんに付き合ってもらったのには、確認してもらうためだった。水の魔法がどれだけ低温になるのかと言うことを。実際に水の魔法を使った時にふと思った。氷を直接ぶつけるよりも氷に近い温度の水の魔法を使った攻撃の方が効果があるんじゃないかと。
普通に氷の魔法だけを使用すれば、氷が砕けてダメージを与える事も出来るだろう。でもトルテさんに問いかけたところ、炎に一番効くのは水属性だと決まっていた。氷は効くには効くけど、水よりもはるかに威力は落ちると聞いた。
だったら、氷に近い温度にまで下げた水の魔法を、更に術式で能力を上げて強化した方が、効果があるんじゃないのか?そう私は考えた。頭はそんなに良くないけど、料理に使うような知識を用いれば私にもこのくらいの子とは考えつくことはできた。
それに私の考えは間違っていなかったようだった。段々イフリートの体が真っ黒く固まっていくのを確認すると、私とアクアさんで追い打ちをかけるように魔法を放った。
「水よ敵を流し去れ!水龍」
「水よ敵に降り注げ!水雨」
流石にこれだけ効果のある魔法を放つと、イフリートは完全に固まり動かなくなった。そして、私は固まったイフリートに蹴りを入れた。ガラガラと音を立てて崩れたイフリートを眺めて、笑った。
「私は伝説を滅ぼした!」
「え!?喜ぶのそこかよ!?」
「お見事です。魔王様。」
私の言葉にアクアさんが驚きにツッコミを入れ、トルテさんが笑顔で私を抱きしめた。トルテさんを眺めていると、いつの間にか傷が無くなっていることに気が付いた。
「トルテさん傷は?」
「もう治りました。」
ですから、心配しなくてもいいと申しましたのに、と続かられた言葉に私は何と無く納得した。確かにあれだけ傷の治りが早ければ、戦闘の間に治っていそうですよね。




