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第二十七話 魔の洞窟

「此処か?魔の洞窟って場所は。」


目的地に着くと、アクアさんは私とロランさんを眺めてそう言った。


「間違いないよ。」


「此処って……。」


 確信を持ってキッパリと言うロランさんを眺めて、私はポツリとつぶやいた。ここは私とウォルフが初めてであったあの場所だった。見れば見るほど、不気味なほど薄暗い洞窟。


「入るよ。」


そう言って進んでいくロランさんに私は叫ぶように言った。


「明かりも無しに入るんですか!?」


こんな暗がりでは、何も見えないだろうと思った。


「躑躅よーく見てみろ。」


 アクアさんが何やら洞窟の中を指さし、私に向かって何か見えないか?と聞いてきた。何かって言われても、何も見えなかった。言われたとおりにじーっと見つめていると、キラキラと薄暗い洞窟の中で一部分だけ、キラキラと光っているのが見えた。


「光ってる?」


半信半疑にそう呟くと、アクアさんはニコリとほほ笑んだ。


「正解。あれは、人間には見えない。俺たち魔族にしか見えない特別な道だ。」


覚えとくと、いいことあるぞ。と私の頭を撫でながらそう言った。


「道が見えたことだし、行くぜ。」


 そう言うと、私の手を引いて先に行ったロランさんの後を追う様に、急ぎ足で進んだ。しばらく歩いていくとロランさんとウォルフの姿があった。


「ウォルフ!」


私はウォルフの姿を見つけると急いで駆け寄った。


「上手く、魔法は発動したようだな。」


私を眺めて、満足そうにそう呟いた。


「問題はこの後でしょ?」


満足そうにしているウォルフを呆れた目線で見ながらロランさんがそう言った。


「分かっている。」


そう言うとウォルフは真剣な表情で私と向き合う形になった。


「これから復活の儀式を行う。」


「復活?」


「早い話、トルテのヤンデレの原因である、ウォルフを蘇生させて、トルテの生贄としてささげようって話。」


 あっさりと説明するロランさんの隣でウォルフが何処となく悲しそうな表情をしていた。若干プルプルと震えていて、涙目だったのには気付かないふりをした。


「おいおい、復活なんて出来んのかよ?」


 アクアさんは、信じられないようなものを見る目で、ロランさんとウォルフを見ていた。


「普通ならできないけど、躑躅がいるからね。多分何とかなる。」


「私?」


復活と言われて、まず一番最初に私が連想した言葉は、生贄、だった。


「私、生贄にされるんですか?」


思わず情けない声が出てしまった。そんな私の様子に三人がギョッとしていた。


「いや、しないしない。そんなことしないから、泣かないでよ。」


 ロランさんは私の考えをすぐに否定していた。何だ違うのか、自分で考え出したことだけど、その考えを否定されてホッとした。


「俺も一瞬そう思ったけど、違うなら何を対価にするんだ?」


「魔力だ。」


あっさりとウォルフが答えた。


「魔力ってどうやって捧げるんですか?」


「まあ、捧げるというよりは、躑躅の魔力を媒介にしてウォルフの体を生成するんだよ。」


媒介?体の生成?色々と不思議な単語が出てきて、私は若干混乱した。


「そう言えば此奴、体が無い?」


ポツリとアクアさんの漏らした言葉に、私は少しウォルフから距離をとった。


「体が無いから、躑躅に協力して作ってもらうんだよ。さしずめ今のウォルフは生霊ってとこかな。」


「だが、重要なことに気が付いた。」


ウォルフは私をじっと見つめながら、ボソリと呟いた。


「躑躅の魔力が足りないようだ。」


「「「は?」」」


ウォルフの呟いた一言に、私たちは揃って戸惑いの声を上げた。


「足りないって、どういうことですか?」


 話の内容がいまいち理解できなかった私は、思わず問いかけた。アクアさんとロランさんは私をじっと眺めて、それぞれ納得の声を漏らした。


「確かに足りてないね。」


「あと少しだけってとこだな。」


二人して難しそうな顔をしていた。


「これでは復活の儀式が行えない。」


ウォルフが残念そうに言った。


「じゃあ、この後どうするんですか!?」


「特訓だな!」


 私の問いに、アクアさんが嬉しそうに答えた。何やらテンションも高く、よっしゃあ!とばかりに拳を握っている。


「特訓するために、マスターのところへ出発するぜ!」


 そう叫ぶとアクアさんは魔の洞窟来る時の様に、私とロランさんを担ぎ、まるで絶叫アトラクション並のスピードで、走り出したのだった。


「ちょ、だから何で俺まで担ぐ必要があるんだよ!?」


ロランさんは担がれるのが嫌いなようで最後まで文句を言っていた。


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