↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
75/92

2-41. 茶葉

 話し合いが終わると、マリーは昼の片付けと夕飯の支度のために事務所へ戻り、俺とヒナの二人で、お茶漬けに使う茶葉を探すことになった。


「シロは、黄色おにぎりのほうが良いと思うんだよね」


 赤おにぎりは肉と卵入りであり、それだけで提供する分にはウケがいいだろう。


 しかし、たらふく羊焼肉を食べ、酒を飲んだ後であることを加味すると、さっぱりした漬物入りのほうがふさわしいはずだ。


 もちろん、米飯についても別案を考える、という手もあった。しかし、米飯とお茶という二つの変数を同時に変えると、試行回数が二乗のオーダーでかさんでしまう。


 あまり時間が無い以上、米飯はすでに成功した開発済みメニューの中からアタリをつけ、固定してしまったほうがいい。


 そういうわけで、俺たちは黄色おにぎりを三個作ってタッパーに詰め、市場を訪れた。


「○○○○、○○○○○」


 ヒナに連れて行かれたのは、茶葉の店ではなく、例の香辛料店だった。


 ヒナが老店主にひととおりの事情を説明すると、彼は席を立ち、俺たちを連れて外に出た。わざわざ自分の香辛料店を閉め、三軒先の茶葉店に入った。


 老店主は、おにぎり入りのタッパーを茶葉店の店主に差しだした。それから、流暢な現地語で事情を説明し、合いそうな茶葉を紹介してほしいと頼んだ。


 茶葉店の店主は、おにぎりを一口かじった後、三種類の茶葉を試飲させてくれた。老店主がひとつ、俺とヒナは半分ずつ黄色おにぎりを食べながら、一緒にお茶を飲む。


 日本の米+異国情緒スパイス+現地ハーブティーという一見ちぐはぐな取り合わせのお茶漬けだったが、意外なほどよく合った。やはり、専門家に、現物を食べたうえで提案してもらえるのは強い。


 使う茶葉を決め、必要量+αを購入した。香辛料店で追加の黄色スパイスも買い、老店主と別れて帰路につく。


「ねえ、ヒナ。スパイスのおじさんって、なんであんなに良くしてくれるの?」


 と尋ねた。


 黄色スパイスが香辛料店の売り上げになるといっても、たかだか500円。なのに、わざわざ自分の店を一時的に閉めてまで、馴染みの茶葉店につないでくれたのだ。


 いったい何が、彼をそうまでさせるのだろう。


「――パパ、最初は、ひとりぼっちだった。若い時、少しのお金で、カゴだけ背負って、行商はじめた。おじさんは、その時からの友だちなんだって」


 ヒナは、どこか遠い目をしていた。その話を息子に語る時、父親がそういう目をしていたのかもしれない。


 握る手に、ぎゅっと力がこもる。


「パパはね、ヒナだけじゃない、隊商みんなのパパなの。だから、さみしい時もあるけど……ヒナもいつか、パパみたいに良い商売して、皆を笑顔にしたい。それが、ヒナの夢!」


 ヒナは明るく宣言し、こちらを見上げて笑った。父親にそっくりな、人懐こい笑みだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。