2-07. 製造ライン
日本の古アパートに帰り、ラップトップで『コンビニ おにぎり工場』と検索した。
某大手コンビニチェーンの公式サイトに、おにぎり製造ラインの動画がアップされていた。まさか、公式が無料で手の内を晒してくれているとは、ありがたい時代だ。
さて、動画を見てみよう。
まず、機械で米飯をほぐす。まあ、これは人間がやっても、そこまで差は出なさそうだ。
次に計量。異世界にはキッチンはかりはないようなので、容器の体積で量るのが現実的か。具も同様に、スプーンか何かで、一定量をはかり取ればいい。
ラインの途中でレーンがすぼまり、両端の米飯が持ち上がって、具材が中に押し込まれる。
で――ああ、なるほどな。型に入れて上から押し、三角形に成形しているのだ。
そりゃそうだ。『握る』という行為は、機械化するには曖昧すぎる。
一定量の米飯をはかり取り、型に詰め、上から押し込む圧力を一定にする。これなら、誰が作っても、同じおにぎりができる。
よし、作りかたは分かった。ならば後は、同様の作業が異世界でもできるように、道具や作業工程を設計すればいい。
◇ ◆ ◇
翌日は、事務所一階の来客ロビーに集まった。
二階の会議室は有料だが、短時間かつ他人に聞かれて問題ない話であれば、他の来客の迷惑にならない範囲で、ロビーで打ち合わせをしても良いとのことだった。
「おにぎりを作るのに、木型を使おうと思うんだけど……」
念のため、やや抑えた声で切り出した。
調べたところ、日本では、おにぎりを成形するための木型が普通に売られていた。しかし、そのまま使うには問題があった。
異世界に、おにぎり木型が存在するか分からない。無いと考えたほうが良い。つまり、日本から持ち込んだとして、正しく『おにぎり木型』だと解釈される保証がないのだ。
まあ、とりあえず持ち込んでみれば、正しく変換される可能性もある。
だが、異世界で別のモノに変換されたとしても、俺には地球世界おにぎり木型にしか見えず、誤変換の事実が認識できないという問題があった。
妙な解釈をされてしまったことに気づけず、そのまま使用した結果、何らかの問題を引き起こす恐れがないとは言い切れない。
「木の加工ができそうな人、知らない?」
と尋ねた。
異世界でおにぎり木型を使う、もっとも安全で確実な方法は、現地で『異世界おにぎり木型』を製作することだった。イチから木を削りだし、望みどおりの木型を作ってもらうのだ。
「そのための組合」
ヒナが即答した。それから、マリーを一瞥する。
「マリー、仲介依頼する。たぶん、木工組合を紹介される。行って、木型を作れる人、探してもらう」
「分かった。ちょっと待っててね」
マリーが受付嬢に頼んで、白紙の書類を貰ってきた。綺麗な字で、さらさらと何か記入していく。
「木型って、どんなもの? 大きさや、かたちは? 何個必要?」
「ええと」
サイズ感は、あらかじめ通販サイトで確認していた。まずは大まかな形状を伝えて試作を依頼し、うまく行けば、まとまった数を注文したい。
マリーは俺の説明に頷き、書類に何か追記した。裏面には、俺が大まかな設計図を書き込み、マリーに補足説明を書いてもらった。
できた書類を、マリーが受付に提出した。
いわく、後日、木工組合への紹介状を貰えるとのことだった。
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