表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/42

VS暑慧鬼 R3

 相手の奥の手と秘密兵器を引き出し、いよいよ戦いは最終局面へと突入した。

 敵の自爆という制限時間がある以上、これが本当に最終ラウンドとなるだろう。


 だが、状況は芳しくない……どころか、詰みかけている。


 なにせ今もばぁちゃんが畳みかけているが、身体を覆う炎の膜に遮られ、攻撃が届かない。

 逆に、向こうの攻撃は全て食らってしまっている。

 パイプ椅子の効果で、防御や回避を封じられてしまっているためだ。

 

 いや、おかしいだろ!何でパイプ椅子にそんな効果が付与されてんだよ!


 しかし、四天王が優勢といったわけでもない。


 四天王が纏った炎は敵からの攻撃を守るだけでなく、四天王自身を焼いているのだ。

 今も、何かが焼ける嫌な音と共に全身から黒煙を立ち上らせている。

 この調子なら、タイムリミットの前に自滅するかもしれない。


 だが、そもそも四天王を倒したら自爆が解除されるのかも不明なのだ。

 最悪、術者の死がトリガーになって発動するタイプかもしれない。


 こんな状況なわけだから、本来なら逃げ一択だ。

 しかし、リングを覆う風の膜のせいで、それすら叶わないのだ。


 考えれば考えるほど無理ゲーだ。

 最初のボス戦でこんなのをぶつけてくるとか、糞ゲーにも程がある。

 

 ……いや、まぁ、考えがないわけじゃない。

 上手くいくかはわからないが。


 だが、ほかに手だてが思いつかない以上、やるしかあるまい。

 本当は、俺ではなくばぁちゃんの方が適任なのだが、今こちらへ呼び戻したことによって四天王のヘイトがこちらへ向くのも不味いし、何より今の状態ではこちらの話は通じない。

 

 俺がやるしかないだろう。


 よしっ、やるか!!


 「ラクラさん。もう一度羊羹ハンマーをお願いします」

 四天王から視線を外さずに手元で準備しながら、くっころさんへ再度合図を出す。


 だが、返事はない。


 不思議に思い、クッコロさんの方を見れば、随分と青い顔をしている。


 「大丈夫ですかっ!」

 慌てて駆け寄る。

 まさか流れ玉でも当たったか!?


 「ま……」

 「ま?」

 「魔力切れ……ですわ」

 そう絞り出すように呟くと、ボロボロと大粒の涙を零し、泣き出してしまった。


 魔力切れか……たしかに治癒魔法とか光魔法とか連発してたもんな。


 てか、俺に治癒魔法をかけてた時間が一番長かったし、もしや俺のせいか?

 そう考えるとなんだか申し訳ないな。

 世界の修正で隙を作るのが一番安全だったが、別の方法でいくか。


 「では、巻き添えを食らわないように、リングの端の方へ避難していてください」

 「で……でも」

 「あとは任せてください」

 「……」

 俯くくっころさんに、手元の大きな布を押し付ける。


 「多分ケガするんで、申し訳ないんですが、魔力が回復したらまた治癒魔法お願いします。俺もばぁちゃんも魔法使えないんで、頼みます」

 そう言葉を投げかけると、覚悟を決めて四天王の元へ向かう。


 「あっ、よかったらその飴舐めててください。多分、魔力回復するんで」

 少し歩いたところで、言い忘れたことに気づき、振り返って伝える。


 目をパチクリさせたくっころさんが、布に包まれた飴ちゃんを発見するのが見えた。

 まぁ、休息や糖分摂取で魔力が回復するかは定かではないが、こう言っておけば、ワンチャンプラシーボ効果があるかもしれない。

 何しろウメ味だからな。


 

 さぁ、勝負の時だ。

 ばぁちゃんと四天王が切り結ぶのを少し離れた場所から様子を窺う。


 四天王の炎の浸食はさらに進んでおり、身体表面はすでに炭化している。

 それでも、動いているのだから、もはやバケモノと表現すべきだろう。


 ただ、だいぶ理性は失いかけているようで、お互いに獣のような咆哮をあげて戦っている。


 タイムリミットが近いのかもしれない。



 ばぁちゃんの様子を見て、タイミングを計る。


……


……


……


 今だ!


 手に力をぐっとこめ、全力で四天王の方へ駆け出す。

 近づくにつれ、熱気が容赦なく全身を襲ってくる。

 まだだ!もう少し近づかないと!


 『キェェェェェエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーー!!!』

 このタイミングで襲い掛かるばぁちゃん。

 大丈夫、四天王はばぁちゃんの相手をして、こちらへ構う様子はな……


 「がぁあああああああああああ!!」

 四天王は回転しながら、パイプ椅子をもった腕でばぁちゃんを弾き飛ばし、もう片方の腕をこちらへ振るう。


 「くっ、アイテムボックス!!」

 腕が吸い込まれるとともに、黒円は拡大し、視界を塞ぐ。

 

 ……よし!

 その場に円を固定する。


 『キェェェェェエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーー!!!』

 「が……わか……て……う……うしろ」

 黒円の向こう側で、四天王が振り向くのを感じる。


 今だ!!



 「……な……にが?」



 俺の目の前には、何かで割いたような穴が開き、向こう側の景色が少し見える黒円。

 掌を握りしめてその黒円を解除する。


 目の前にはワナワナと震える四天王の姿。


 覚悟を決めて四天王へ詰め寄る。

 そして、背中から突き出たソレに手をかけると、力任せに引き下ろす。


 ソレはまるでバターでも切るかのように、抵抗なく四天王の身体を引き裂く。

 思わずバランスを崩す四天王。

 高熱に熱された何かを全身に浴びせられるが、それに構うことなく、今度は両手でソレを握りしめ、体勢を崩した四天王の心臓あたりへ思い切り突き刺す。


 「ぐ……が……」


 四天王は勢いよく身体をねじる。

 俺は軽く吹き飛ばされる。


 流石ゴキブリ……しぶといとうか、凄まじい生命力だ。

 傷口から内臓をはみ出させながらも、覚束ない足取りでこちらへ襲い掛かる。


 さっき吹き飛ばされた際に、思わず手を離してしまい、ソレを背中に置いてきてしまった。

 それが分かっているのか、四天王は勝ち誇った顔をしている。

 だが、ちょうどいい。


 『キェェェェェエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーー!!!』


“スッパアァァァァァァッアアアアアアアアアアアアアン”


 「……が?」


 心臓当たりから縦に真っ二つになった四天王。


 慣性でこちらへ倒れこんでくる。


 「アイテムボックス」

 目の前に出現した黒円は瞬時に拡大し……


 その巨体を収納すると、すぐに元の大きさに戻る。


 掌を閉じれば、黒円は音もなくスッと消えた。


 生きた者が入っていれば、アイテムボックスは解除できない。


 つまり……これで戦いは終わり。

 今度こそ今度こそ、本当に俺たちの勝利だ。



 「なんとなんと!大番狂わせ!!全勝無敗の絶対王者を下し、勝利をつかんだのは挑戦者、勇者タローンなのじゃぁあああああああああ!!!」

 

 気の抜けた勝利宣言を耳で捉えながら、思い切り前へ倒れこむ。



 ……あ……駄目だ。


 視界にはいったものを見て驚愕する。


 俺の腕の先についているわけだから、多分俺の掌だと思うのだが、なんか焼きただれて原形を留めてない。

 しかも、熱いという感覚どころか、感覚そのものがないわ。

 そりゃ四天王に身体ねじられただけで手放してしまうわけだ。


 燃え盛る相手につっこんだのだし、これ全身がひどいことになってるんだろうな……。

 まぁ、四天王を倒したのだ……結局止めをさしたのはばぁちゃんだったが、俺もまぁ頑張ったんじゃないだろうか……。


 薄れゆく意識の中そんなことを考える。


 最期に目に入ったのは、リングを切り裂き、さらにどこまでも下へ続く深い穴。


 あぁ……こりゃ、回収は無理そうだな。

 ばぁちゃん気に入ってたし、怒るかな……?

 街へ戻ったら……普通の包丁を買ってあげよう。


 一緒に市場をまわって……さ。


 うん……そうしよう……皆で一緒に選べば、きっとばぁちゃんも……


 そこで、俺は意識を手放した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ