思い出のジャケット
そうして僕は裕二に連れられショッピングモールの中へ入っていった。やはりと言うべきか…時期が時期なのでクリスマスソングやジングルベルが施設内に鳴り響いてる。
「あんま独りでに動くんじゃねぇぞ〜。はぐれたら大変なんだから。」
そう僕に言う裕二に僕は笑いながらこんな言葉を返す。全く…人を何歳だと思っているのか聞きたいところだ。
「おい…僕は小学生か幼児か?違うだろうが流石にそれはしないぞ?」
と…そんな言葉の後に裕二は、口に手を抑えるような仕草をして僕の記憶には無い事を言い放った。
「えー!?廻お前覚えてないのか!?文化祭の時とかよくはぐれてたじゃねぇか?あれれー?俺の記憶違いかなぁ?」
そう笑いながら言っている裕二に、僕は顔一つ動かさず淡々と自分なりの言い分を口に出していた。
「まず…僕は基本一人で周ってた気がするし…仮にお前や祐介…恭太郎と周るとしても…迷ってたのはお前だろうが…後…記憶に無い話をするんじゃ無い。」
と…引きつった笑みを浮かべながら僕は裕二に言っていた。
「あれ!?そうだっけ?わりぃな!昔の事だから忘れちゃったぜ。」
そう言った裕二に僕はいつものように呆れた様な顔で、こんな言葉を口にしていた。
「全く…いつもふざけてるんだから…。」
そう言い合い交わし…ショッピングモール内を二人で周り始めた。
ショッピングモールに入って一時間は経ったと思う。僕と裕二はフードコートで休憩をとる事にした。あれから…靴といい…帽子といい…気が付くと色々買っていた。
「色々買いすぎな気がするのだが…」
僕がそう言うと…テーブルに手を付け立っている裕二がこんな事を言う。
「はぁ?何言ってんだお前?お前が色々持って無かったからだろ?言い方悪いぜ?廻?」
満面な笑みを見せ…勝ちを確定したかのような事を言う裕二に…何時もなら僕は反論している…だが…今回に至っては、僕の人生に関わっているし…本当に外で遊ぶ為の服装なんて持っていないので反論出来なかった。
「ああ…そうだな。」
あまりにも可笑しくて僕は笑いながらそう行った。すると…裕二からこんな言葉が飛んでくる。ここ最近の僕の表情をよく見ているのだろう。言葉の発し方からして…嬉しさが滲み出ていた。
「あれれぇ〜?廻?もしかして…今嬉しかったりするのかぁ?顔に出てるぜ?」
僕はその言葉になんて返せば良いのか分からなくて…でも嬉しい事には変わりなくて…表情を変えずに…こう返していた。
「……さぁな…。」
休憩から一時間が経過し…買い物続きをして…帰ろうとした時。とある服の店前を通ろうとしていた。しかし…その店の前に、差しかかるとあるジャケットが飾られて置いてあった。僕はそれを見てある言葉を、口に出していた。
「………懐かしいな。」
僕はそう口に出し…そのジャケットを手に取る。それを横から見ていた裕二からこんな質問をされた。まるで何かを察したかのように…。
「そのジャケット…お前といい…琴葉ちゃんといい…持ってるやつじゃねぇか?ここで買ったんだな。彼氏である祐介を差し置いてお前……良くやるなぁ?」
そう言った裕二に…僕は首を横に振る。そうして…こんな言葉を口にしてある思い出話を語っていた。
高校二年生の時だった。僕は祐介と琴葉と…このショッピングモールに来ていた。この日は、祐介と琴葉が付き合った記念日で…僕はその付き添いで付いて来ていた。
「ねぇ?祐?どんな物記念品にする?コップ?それとも…キーホルダー?ねぇ〜?何にするぅ〜?」
そう言いウキウキとする琴葉に祐介は、こんな言葉を口にしながら諭していた。
「楽しみなのは分かるけど…はしゃいで怪我しないようにな〜…って高校になって…小学生みたいな事言わないといけないのはなんでなんだわろうなぁ〜。」
そう言った後…祐介は僕の顔を見て一つ謝罪の言葉を出していた。そんなに気にする事も無いのだが…。
「わりぃな…廻。お前にも予定あったりするのにさ…俺が必要ならば…どっかで埋め合わせしような。」
そう言ってくる祐介に僕は、いつもの様に…何かを諭すような言い方でこんな事を言ったのを今でも覚えている。
「いちいちそんな事で気にすんなって。大体…親友二人であるお前らの事だ。僕の事も話題に出すし…気にかけるんだろう?だったら…僕はその思いを汲み取るだけさ。」
そうして僕ら三人はこのショッピングモール内を周り…ある服屋を見つけた。その服屋の、展示ベースに飾られたジャケット…そのジャケットを見て祐介がこんな言葉を零した。
「かっこいいよな…このジャケット。なんか…これ着てエレキベース弾いたりしたいもんだよ。ま!金が貯まって無い今の現状じゃ…無理あるかぁ。」
そう言い笑い飛ばす祐介。僕は、そのジャケットの値札を確認した後祐介と琴葉にこんな事を吐き捨てていた。
「一万二千円…か。なぁ?祐介?琴葉?ちょっと財布出して貰って良いか?」
そう言うと…二人は首を傾げて財布を出した。別にかつあげ…をする訳じゃないので穏やかに言い…僕は店の中に入ろうとする。そんな中祐介が僕の動きを止めるかのようにこんな質問をした。
「なぁ?廻?何する気なんだ?俺らに「財布出して」なんて言ってさ?…まさか。」
と祐介が言うのを制止して僕は店の中に入った。あまりにも強引過ぎたのは…反省点だが。
「まぁまぁ…見てなって。」
そう言い…僕が店の中に入って五分が経過し…二人の元に戻って来た時僕の腕には二つ紙袋がかかっていた。入っているのは…展示ベースに飾られた…あのジャケットだった。
「ほら…カップル二人仲良く同じの着てな。あっその為にちょっと君たち二人に協力して貰った…やり方が強引だったのはすまない。」
そう言い僕はジャケットと二人の財布が入った紙袋を…二人にそれぞれ渡していた。そうして…琴葉が、ベースを弾く時に着てるジャケットの原点になっていった…。
そんな思い出にふけっていると…ふと笑いが止まらなくなる。あの時の僕の強引さは…恐らくこの先通用しなくなると思うと阿呆な事をしたと笑えて来るのだ。
「いや〜懐かしい。まだ飾られていたんだな。結局その後…あの二人が「親友」としての恩返しがしたい…とか言って僕もこのジャケットを買って貰ったんだよな…ほんと……懐かしいよ。」
それを見ていた裕二が真剣な表情になり…僕にこんな事を言った。まるで僕と祐介…琴葉の思い出を大切にするかのように。
「なぁ?廻?ちょっと待っててくれや。俺買いたい物あるから…この服屋よるから。」
そう言った裕二を僕は止めようとしたが…「俺の好きなようにやらせろ」の一言で僕の制止は一蹴されてしまった。そうして五分…店の前で待っていると…裕二が紙袋を二個腕にぶら下げて戻ってきた。僕はそれを見て驚きを隠しきれなかった。
「裕二…お前……」
驚いて言葉が出ない…そんな僕に裕二は、こんな事を言った。まるで僕らの事が成功するのを願っているかのように…。
「バカ…これは俺からの先行投資だからなっ!」




