懐かしい気持ち
裕二に…バンドを組まないかそう言われた一週間後僕は、退院した。理由はもう手の施しようがないなら…せめて家で過ごしたいその意見を、医師に言い許可を貰えたからだ。荷支度をして…病院を後にする…玄関に向かうと…裕二と恭太郎が待っていた。
「よっ!1週間ぶりだな」
そう言い手を振る裕二に僕は振り返しこう言った
「久しぶり感覚じゃないだろ?」
ツッコミを入れた後に恭太郎に
「久しぶり…元気にしてた?」
恭太郎と会うのは…三年ぶりだ。だからなのか話の始まり方がぎこちない。
「久しぶり…まぁ…うんしてたよ」
恭太郎も、昔と変わらなかった。それを目の当たりにすると少し安心する。とゆうか二人とも変わっていないんだよな
「二人とも…変わって無いな」
裕二と恭太郎は、馬鹿みたいに笑いながら僕に言った。
「お前もな」
そんな感じに会話を進めながら病院を出て恭太郎の車に、乗り込んだ。恭太郎が車のエンジンを掛けた十秒後に、カーオーディオから歌が聞こえる。僕も裕二も恭太郎も…いやあの時にいたメンバーならこの歌をよく口ずさんで帰路を歩いていた。
「メンソールの煙草持って。小さな荷物で楽園に行こう楽園に行こう。大きな船で」
僕は懐かしい気持ちと恭太郎のセンスに賞賛の思いを、持ちながら
「THE YELLOW MONKEYか…懐かしいな」
そうだな…この歌は良く祐介と恭太郎が歌ってたな。僕はこの歌の時だけはギターだけだった。瞼を閉じるとその時の、光景が目に浮かぶ。ふと…僕は静かに笑った。
「フッ…変わらないな」
そう言った後に恭太郎は、運転をしながら明るい表情で
「当たり前だろ?後…コレから居酒屋行くぞ」
渋い所にを選んだ恭太郎に僕は
「渋つ…」
そう言葉を吐いていた。
車に乗り十分が経過していた。車内で聴いた曲は、懐かしい物ばかりだった。
「着いたぞ」
裕二に言われ僕は触っていた携帯を、スリープモードにしながら車から出た。いつものセリフを吐きながら
「ああ…すまない」
目的の居酒屋に着き席に付く…恭太郎がオーダーの確認をとる。
「僕は…ノンアルコールビール頼むけど…二人は?」
裕二は自信満々な口調と表情で恭太郎に、こう言った。
「モチのロン!ビールでっ!」
僕はいつも週末に飲むアルコールを頼むことにした。
「カシスソーダで」
僕らはそれぞれオーダーをとった後談笑した。思い出話や世間話と酒と肴で。
店に入ってから一時間半たった頃僕らは、居酒屋を後にした。初めて昔遊んだ友達と呑んだ気がする。それにしても…裕二があんな酒豪だとは
「よぉし!今から廻の家行こうや!」
ビール六杯呑んでも…平常なのだと…それにしても何故僕の家なのだろう。気になってしょうがない
「なんで僕の家?他の場所でもいいだろ?」
僕はそう言い自分の家に行くのを躊躇った。しかし…他に行くところが無いのか…恭太郎も裕二も
「廻の部屋の方に久々に行きたいからさ」
そう言われると仕方ない行くとしよう。あまり人を入れたくないが…
「まぁ…良いけど」
しかし…その判断が後であんな事になるとは僕は知らなかった。
家に着くと二人はこんな会話していた。
「なぁなぁ!廻の部屋変わったかな?俺すげぇ気になるんだよな」
「意外に変わってなかったりして」
どうやら相当人の部屋を見るのが楽しみらしい。まぁそれもそうか貸スタジオが使えなかった日は、僕の部屋で練習をしていたのだから。
「ガチャン」
鍵が開く音が響いたその数秒後玄関のドアが開く音が響く。
「キーィ…」
そして僕は言う。いつも仕事や散歩に行った後家に帰る時のように
「…ただいま」
一週間ぶりに言った言葉だった。家に僕が入った後立て続けて裕二と恭太郎が、あの言葉と共に入ってきた。
「お邪魔します」
まるで…三年前の自分を夢に見た様な感覚が懐かしかった。早速僕は二人を、自分の部屋に連れて行った。二人は向かう途中ひとつひとつ言葉を漏らしながら
「この階段…懐かしいな!」
そう裕二が言うと恭太郎は頷き階段を上がりながら
「ああ…確かに」
と静かにそう返していた。階段を昇る音と、二人の談笑だけが家に響き渡った。
「トン…トン…トン…スルスル…」
二階に上がり切り、僕は自分の部屋のドアに手をかけ二人に言った。
「変わってないから…変な期待はしないでくれ」
二人はつまらなさそうな表情を、しつつ楽しみにしているらしい。
「ガチャ…キィィィ…」
扉が開かれた時の乾いた音もそのままだったようで…二人は興奮していた。
「うぉぉ…変わってねぇ!」
当たり前だ。この言葉が浮かんだが…心に留めておこう。さてお客様が来たらまず、お茶を出さないといけない。僕は、荷物をコンポの上に置きこう言った。
「お茶入れてくる」
僕はこの時コンポの上に荷物を置くべきではなかったのかもしれない。お茶を入れ終わり部屋に戻ろうと向かい…自分の部屋の前に着いた時だった。
「有り得ねぇ…この紙に書いてある事がホントなら…アイツは!」
裕二がそう言いかけた事で、僕は全てを理解してしまった。僕は部屋のドアを思っきり開ける。
「ガチャ…キーィ…ドンッ!」
僕は裕二が手に持っている紙を見て…恭太郎が青ざめてる所を見て…全てを悟り…言った。
「その紙…見たんだな…裕二…恭太郎…」
二人は無言だった。それもそうだ無理もないだって事実を、知ってしまった。僕は後残り僅かな時間しか過ごせないとゆう事に僕はもう…自分自身の事を言うしかなかった。
「その紙…病院からの診断書なんだ…僕は後残り僅かで…死ぬ…」
そう言うと恭太郎は、落ち着きを取り戻し僕に質問した。
「なんで…言ってくれなかった?」
僕は言った自分らしい答えを
「言った所で誰も対処出来ないから」
二人と僕の間に沈黙が走る。恐らく二分か三分…それぐらいたった後に…裕二が今更また提案してきたのだ。
「…だったらよ!…最期に!俺ら三人組らしい事しようぜっ!バンドとか…なっ!」
僕は裕二が言った言葉に反対意見しか出て来なかった。
「今更…もう遅いよ…だって考えろよ…何年前だ三年前だぞ…今更…出来るわけがない」
そんな言葉を吐き座り込む僕に裕二は声を、荒らげて言った。
「だったら…お前はこのまま死んでもいいのかよ!廻!俺らの夢を…お前は…叶えずに死んでいくんだぞ!自分の夢でもある…バンドをやるって夢を!」
そう言われた後だった。僕は人として最低最悪な言葉を言ってしまったような気がする。
「ごめん…もう夢とか…どうでも良くてさ」
そう言った後…裕二は黙り込んでしまった。僕は胸糞悪いこの空気が嫌になり…こう言った。
「悪い…今日はもう帰ってくれ」
そう言うしかなかった。あれから三十分ぐらいたっただろう。僕は自分の部屋の椅子に座り込み…机を思い切り叩き付けていた。
「バチンッ!」
部屋中に、乾いた音が響き渡った。その後僕は窓際に立てられたエレキギターを見ていた。見ていると裕二のあの言葉が頭を過ぎる。
「夢を叶えられずに…死んでもいいのか…か…フッ」
僕は笑う事しか出来なかった。辺りに僕の不気味な笑い声が聴こえるだろうそう考えながら。
「明日…考えるか…」
僕はそう言い…ベッドに横たわるのだった。




