第16話 鉱山急襲
そして、トラックからは屈強そうな盗賊団の兵が降りてくる。
頭目は、中でも腕利きの者をよこしたようであった。
直ぐに作戦会議に入り、奇襲をかけることにした。
「…………ということで、今回はこの作戦でいく。」
元指揮官であったガルナがまとめ、皆 作戦準備に入った。
何故か突入する全員が腰回りにダイナマイトを何本も巻き付けていく。
真夜中になり辺りが静まり返ると、いよいよ作戦開始。
暫く鉱山の様子をうかがう。すると、入口からトラックではなく、一台の小さな車が出てきた。
「妙だな…。」
ゼオンが訝し気に見ていると、セレスが反応する。
「もしかして、伝令の車では…?」
「ああ、その可能性が高い。セレス、あの車を付けてくれないか。あともう一人頼みたいが…。」
すると盗賊の兵たちの一人が立候補した。
「俺がやらせてもらいます。」
その男はガルナの馬を借り、セレスと共にその車を追って行った。
そして、いよいよ奇襲攻撃にかかる。
まず、ゼオンとカイザーそれに盗賊の兵数名が偵察のときに使った岩の隙間から中へ入っていく。
通路を慎重に歩いていきドーム状の空間に出ると、下では偵察時と同じように採掘作業が進められていた。
身をかがめながら横に広がり、ゼオンが合図をする。
盗賊の兵たちは一斉に亡者兵へ向けてマシンガンを放つ。
突然の敵の襲来に亡者兵たちはパニックになる。
すぐさま精鋭の亡者兵が反応し銃を撃ち返してくる。
ゼオンとカイザーはそこから飛び降りて精鋭の亡者兵に斬りかかった。
捕らえられている者たちは、手押し車や抱えていた岩を投げ出し逃げまくる。
盗賊の兵たちも下へ降り、攻撃を加えながら逃げ惑う人々を入口へ誘導する。
ガルナと共に入口付近に隠れて待機していた盗賊兵たちは、中から人々が出てくるのを確認するとガルナの指示で一斉に突入する。
そして、人々を追ってくる亡者兵たちを片端からなぎ倒していく。
人々が抜け出ていくのを見計らい、中で亡者兵と応戦しているゼオンたちは腰に巻き付けていたダイナマイトを、そのまま辺り一面に投げ込んでいく。
捕らえられていた人々が全員脱出するとゼオンたちも入口へ向かって走る。盗賊兵は追ってくる亡者兵たちへマシンガンを乱射し足止めする。
全員が出てきたタイミングで、ゼオンは一本のダイナマイトに火をつけ入口に投げ込んだ。
すると、その一本の爆発に連鎖して、あちこちに投げ込んでおいたダイナマイトは次々と着火され大爆発が起こった。
鉱山は入口から崩れ、坑内の天井も崩れ落ち亡者兵を一網打尽にしながら鉱山は埋まった。
トラックの近くでは、ルイーザとラル兄弟が逃げてきた人々を誘導し次々に数台のトラックへ分乗させていく。
捕らえられていた人々を全員乗せ、護衛のため数名の盗賊兵が乗り込むとそのまま走り去っていった。
残ったアランと盗賊兵たちは、崩落した鉱山を見つめていた。
「これで第一段階完了ですな。」
ガルナがそう言うとゼオンが応えるように、
「ああ、あとは偵察に出たセレスと盗賊兵の帰りを待とう。」
夜が明けるころ、セレスと同行していた盗賊兵の二人が戻ってくる。
しかし、その顔は少しばかり青ざめていた。
「どうだ…?」
とゼオンが問う。
「あの車を追っていくと、山の向こうにある城に辿り着きました。暗闇に佇む不気味な雰囲気の大きな城に。あの時ルイーザさんの言っていた まさに西の方角です。」
セレスが答えた。
「やはり、黒い影の本拠地があったか…。」
――そのころ、その城では鉱山との連絡が突然途絶えたことが黒い影に報告されていた。
「なんだと!何が起こっている!すぐ鉱山へ行き状況を確認しろ!」
黒い影は、その状況を聞き激怒し城は混乱していた。――
ゼオンはアランのところへ行き、頭目に会いたいと願い出た。
アランは頷くと、残っているトラックに乗り込み、そのままゆっくり走り始めた。ゼオンたちは馬に乗り、そのあとを付いて行く。
数時間走り続けると山の裾野から平地にかかる辺りに明かりが瞬く大きなテント張りの野営地が見えてきた。
野営地の前では頭目が腕を組みアランの帰りを待っていた。
野営地の前にトラックを停めると、アランは頭目のところへ行き耳打ちをする。
頭目はニヤッとして、トラックの後ろから現れたゼオンたちを見ていた。
「ようこそ、我が野営地へ!」
頭目は、まるでゼオン達が来るのを予期していたかのようであった。
「この度は、援軍を送ってもらい感謝している。」
「どうってことはない。こっちもあの黒い連中にはちょうど迷惑しているところだったからな。さ!ご一同、野営地の中へ案内しよう。」
頭目はニマッと下卑た微笑みを浮かべながら野営地へと入っていく。
ゼオンたちもそれに続くと、中では先ほど救出した村人たちが手当てを受けたり食事を与えられたりしていた。
皆、その光景に一瞬ぎょっとする。
「俺たちが村人に施しをするのがそんなに珍しいか?」
「いや…そうではないが‥‥。」
「俺たちは、金持ち専門の盗賊なんだよ。こんな村人たちから何かを奪うなんてことはしねぇ。」
この頭目は意外と切れ者であった。金持ちから奪うときも必要なものしか奪わない。全部を奪って金持ちたちが破綻しても困るのだ。
「さて、お前さんたち。何か相談があって来たんだろ?」
頭目が問うと、ゼオンは答えた。
「ああ、実は黒い影の拠点を突き止めた。」
「それで、俺たちにも付き合えってことか?」
「率直に言ってしまえば、そういうことだ。」
頭目は腕を組み少し考えるように目を細めた。
「確かに、あいつらには迷惑している。でけぇツラして堂々と俺たちの縄張りに入ってきやがる。うちの雑魚どももおかしくなっちまうから、うかつに手出しできんし…。それに…お前には誰一人殺されなかった恩義もあるしな…。で? いまどんな状況だ。」
頭目が案内したテーブルに座り、ガルナが不気味な黒い鉱石の鉱山を破壊したことなどの状況を説明した。
城へ偵察に行ったセレスと同行した盗賊の一人も城の様子や周辺の状況を報告した。
ラルとルネの兄弟は、隣のテーブルで下端盗賊の持ってきた温かいシチューとバゲットに舌鼓を打っている。
ルイーザがその不気味な黒い鉱石の説明をする。
「亡者兵たちのエネルギーの源になっているのはサマルナイトという鉱物よ。
石炭とサマルナイトには黒い石という以外共通点は無いのだけど、その多くは何故だか石炭の埋まっている層の更に下の層から見つかるの。
特徴としては光沢のある漆黒の石で光が反射すると七色に輝くわ。
サマルというのは古代語で魂を集める者という意味で、ナイトは鉱物を表す接尾語。
私たちの種族では、昔この鉱石を使ってある呪術を行っていたけど今は危険が多くて使われなくなっているわ。
しかし…この鉱物の特徴を知っている者は私たち種族しかいないはずなんだけど…。」
「それでは、セフィリア族の誰か…、ということですか?」
セレスが尋ねた。
―― ルイーザは既にゼオンには伝えておいた、かつてセフィリア族に反旗を翻したゾルガという男がいたことを話した。
その話を皆 真剣に聞いていた。
テーブルについている頭目と幹部数人に、それぞれが一通り状況を説明し終わると、盗賊たちが用意してくれた料理で食事をとり、その晩は盗賊の野営地で休息することになった。
食事が終わると、カイザーは頭を抱え再び何かを思い出そうとしていた。
「どうした?カイザー。」
「あの暗闇の中の城…。」
「そうか!カイザーはあの城に入ったことがあるんだな?」
「ああ、薄っすらと覚えているんだが…。」
そこへ、ルイーザがお茶を淹れて二人に持ってきた。
「どうしたの?」
「ああ、カイザーがあの城に覚えがあるらしいんだ。」
ルイーザがカイザーの様子を見る。
「どうやら、黒い影はカイザーが正気に戻った時、支配されてからの記憶を封印する仕掛けを仕込んでいたようね。」
カイザーは凄まじい精神力でその封印を断ち切ろうとしていた。
「私も手伝うわ。」
ルイーザはカイザーの額に手を置き目を閉じた。
カイザーの意識を掴むと封印されている記憶に意識を集中する。
「ここはやはり強固に封印されているようね。」
カイザーのこめかみに青筋が立ち汗がしたたり落ち、記憶を取り戻そうとする。
その意識をルイーザが増幅させる。
「あ!見えてきたわ…。これが城ね…。」




