表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
72/76

第72話「その先」

 合格発表、当日。


 部屋は静かだった。


 いつもと同じ時間。


 同じ場所。


 でも。


 空気だけが違う。


 ラーナはソファに座っている。


 スマホを持ったまま。


 画面はまだ開いていない。



(……見れば終わる)



 指が動かない。


 レオは少し離れたところにいる。


 机の前。


 同じように、スマホを伏せて置いている。



(余裕って言ってたのに)



 心臓だけが、うるさい。


 お互い、何も言わない。


 言えば崩れそうだった。


 数秒。


 数十秒。


 時間の感覚が曖昧になる。


 ラーナが先に息を吐く。



「……見る?」



 小さい声。


 レオは少しだけ顔を上げる。



「……一緒に?」


「……どっちでも」



 本音じゃない。


 でも、それ以上言えない。


 レオが立ち上がる。


 ラーナの隣に座る。


 距離が少しだけ近くなる。


 それだけで、少しだけ落ち着く。



「……せーので見る?」


「……うん」



 スマホを持つ手。


 ほんの少しだけ震える。



「せーの」



 画面を開く。


 一瞬。


 時間が止まる。


 番号を探す。



(ある)



 でも、声が出ない。


 ラーナが先に息を吐く。



「……受かってた」



 レオも画面から目を離さないまま。



「俺も」



 その瞬間。


 張り詰めていたものが、一気にほどける。


 でも。


 大きく喜ぶわけでもない。


 ただ、静かに息を吐く。



(終わった)



 ラーナはスマホを置く。


 そのまま少しだけ力が抜けて、肩が落ちる。


 レオも同じように背もたれに寄りかかる。


 無言。


 でもさっきまでの沈黙とは違う。


 軽い。


 ラーナがぽつりと呟く。



「……よかった」



 レオはそれを聞いて、小さく笑う。



「な」



 それだけ。


 それだけで、十分だった。



(終わった)



 長かった時間。


 やっと全部、区切りがついた。


 でも。


 すぐ次がある。





「……この先さ」



 レオがぽつりと口を開く。



「どうする?」



 ラーナは少しだけ視線を落とす。



「……どうしようか」



 曖昧な答え。


 空気が少しだけぎこちなくなる。



「同棲するときも言ったけどさ」



 レオが続ける。



「俺、そういう意味で考えてるからな」


「……うん」



 分かってる。


 最初から。



「……で、どうなの」


「……なんのこと?」


「わかるだろ」


「わかんない」


「わかる」



 少しだけ、詰める。


 ラーナは視線を逸らす。


 でも。


 手が動く。


 いつかと同じように、


 レオの服の裾を、そっと掴む。



「……逃げないで」


「ちゃんと言ってよ」



 小さい声。


 でも、はっきりしてる。


 レオが一瞬止まる。



(……ずるい)



 逃げられない。


 少しだけ息を吐く。



「……金ないから」


「何も用意してないけど」


「いいよ別に」



 即答。


 間。


 レオがまっすぐ見る。



「……結婚、してくれる?」



 一瞬。


 ラーナの指が少しだけ強くなる。


 でも、迷わない。



「……いいよ」



 短い。


 それだけ。


 でも、全部だった。


 レオは何も言わない。


 ただ。


 ラーナの手を引いて。


 静かに抱き寄せる。


 ラーナも、そのまま預ける。


 もう。


 離れる理由は、どこにもなかった。

いよいよ最終回が近づいてきました!まさかここまで書くとは、、後少しだけお付き合いください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ