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第71話「終わった日」

 国家試験前。


 2人とも、これまでで一番勉強していた。


 同じ部屋。


 同じ机。


 でも。


 一言も交わさない日もある。


 それでも。


 お互いの存在は、ちゃんとそこにある。


 それで十分だった。


 言葉がなくても、崩れない距離。





 ――当日、朝。


 特別な会話はない。


 自然に、それぞれ家を出る。





 ――夕方。


 試験終了。


 家。


 ラーナは先に帰っていた。


 ソファ。


 そのまま、寝落ちている。


 玄関が静かに開く。


 レオが帰ってくる。



(……いた)



 少しだけ肩の力が抜ける。


 レオはゆっくり近づく。


 ブランケットを手に取る。


 そっとかける。


 その瞬間。



「……ん」



 ラーナが目を開ける。



「おはよ」


「……ん」



 まだ寝ぼけている。


 レオが少しだけ笑う。



「……どうだった?」


「……ん?」



 ワンテンポ遅れる。



(起きてないな)



 レオはその様子に少しだけ肩を揺らす。



「試験」


「ああ……」



 ラーナは少しだけ目を閉じる。



「……たぶん、大丈夫」



 一言。


 レオはそれを聞いて、少しだけ息を抜く。



「そっか……たぶん俺も」



 それで十分だった。


 結果じゃなくて。


 ここまで来たことが。


 やっと。


 一区切り。


 少しの沈黙。


 でも、今は重くない。



「とりあえず飯つくるわ」


「……ん」



 ラーナはそのまま、また目を閉じる。


 キッチンから音がする。


 包丁の音。


 火の音。



(戻った)



 ラーナはぼんやりと思う。


 いつもの日常。





 夜。


 ベッド。


 いつもなら、少し距離を空けて寝る。


 でも。


 今日は違った。


 どちらからともなく。


 距離が詰まる。


 触れる。


 そのまま、自然に寄る。



「ラーナ」


「……ん」


「おつかれ」


「……レオも」


 一拍。


「……うん」



 それだけ。


 それだけで、十分だった。


 静かなまま。


 そのまま、眠りに落ちる。


 隣の呼吸が、ちゃんと近い。


 久しぶりに。


 何も気にしなくていい夜だった。

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