第68話「もう動かない」
ソファ。
ラーナはそのまま、少しだけ体重を預ける。
(……もう無理)
レオの肩。
ちょうどいい位置。
「……我慢しなくていいってこと?」
「だめ」
「ケチ」
「ケチじゃない」
即答。
レオはため息をつく。
「本当に疲れてるなら風呂入って寝な」
「……ん」
返事だけ。
動く気配なし。
「……一緒に入る?」
「入らない」
即。
その瞬間だけ、ラーナが少しだけ起き上がる。
(そこは早い)
レオが小さく笑う。
ようやく動く。
⸻
風呂上がり。
ラーナはタオルで髪を拭きながらリビングへ。
レオは机に向かっていた。
「まだやってるの」
「ちょっとだけ」
淡々と。
ラーナはその背中に近づく。
そのまま後ろから、軽くくっつく。
「……なに」
「疲れた」
(知ってる)
レオはペンを止めない。
「触っていいってこと?」
「だめ」
「はぁ」
短い溜息。
「レオも早くお風呂入って」
「一緒に寝よ」
さらっと。
レオの手が一瞬止まる。
「はいはい」
返事は雑。
でも、ちょっとだけ早く片付ける。
⸻
しばらくして。
レオが風呂から出ると、リビングは静かだった。
ラーナ。
ソファで寝落ちしている。
(……またか)
「ラーナ」
声をかける。
「……ん」
動かない。
「ベッド行くよ」
「……ん」
完全に寝てる。
レオは少しだけ息を吐く。
「……ったく」
軽く文句を言いながら。
抱き上げる。
軽い。
「……っ」
ラーナが一瞬だけ目を開く。
「自分で歩く」
「もう遅い」
即。
そのまま寝室へ。
ラーナはすぐに力を抜く。
(……ずるい)
レオの腕の中。
結局。
いちばん安全で、いちばん落ち着く場所だった。




