第64話「待ってる側」
夜。
部屋は静か。
机の上、課題。
ペンは動いてる。
でも。
(……集中できない)
スマホを見る。
まだ来ない。
(……大丈夫って言ってた)
わかってる。
でも。
(……やっぱ無理)
今日はラーナのチームの飲み会の日だった。
再三、気をつけるよう伝えたが、気が気じゃなかった。
そのとき。
通知。
『今から帰る』
(……よかった)
ほっとした瞬間。
そのまま電話をかける。
『……なに』
「いや、なんとなく」
一拍。
「……今1人?」
『同じ方面の人たちと一緒に歩いてる』
「……男いる?」
『まぁいなくはない』
(……はぁ)
「……電車とかずらして1人で帰ってきて」
『……なんで』
「酔ってるラーナ、本当に危なっかしいから」
一拍。
「心配」
少しの沈黙。
『……分かった』
通話が切れる。
レオは小さく息を吐いた。
(……ほんと、心臓に悪い)
⸻
しばらくして。
玄関から音。
ほぼ同時に立ち上がる。
ドアが開く。
ラーナ。
「大丈夫?」
「なんもなかった?」
「……ん」
少しだけ、目がとろい。
(……酔ってる)
「……飲み会中もそんな顔だったわけじゃないよね?」
「……たぶん」
一拍。
「今レオしかいないから、気抜けただけ」
レオが一瞬止まる。
(……そういうこと言うな)
「……それならいい」
一歩。
中に入れる。
「レオ」
「なに」
次の瞬間。
無言で、抱きつかれる。
(……は?)
「……レオいないと、つまんない」
直球。
レオの思考が一瞬止まる。
(……やめろ)
「……相当、酔ってるな」
「酔ってない」
「酔ってる」
「酔ってない」
一拍。
「……だからいいよ」
(完全に酔ってる)
「ダメです」
「酔ってます」
「お風呂入って寝てください」
ラーナが少しだけ見上げる。
「……ベッドで待っててくれる?」
(……は?)
一瞬で理性が揺れる。
「……わかった」
「待ってるから、とりあえず行ってきて」
「……わかった」
ぱたぱたと離れていく。
レオはその場で顔を覆う。
(……無理だろ)
⸻
寝室。
ベッドに横になる。
でも。
眠れるわけがない。
(……ほんとやめてほしい)
ドアが開く音。
ラーナ。
何も言わずに。
そのまま潜り込んでくる。
距離、近い。
「……近い」
「普通」
「普通じゃない」
一拍。
「……だって、レオ待っててくれたから」
(……無理)
限界。
そのまま、抱き寄せる。
ラーナも、何も言わずに身を預ける。
静か。
(……このまま寝ろ)
そう思った瞬間。
もぞ、と動く。
「……なにもしないの?」
(……やめろ)
「しない」
「なんで」
「明日どうせ覚えてない」
「……いいのに」
「よくない」
一拍。
「俺が」
少しだけ声が落ちる。
「あと、明日も早いでしょ」
ラーナが少しだけ黙る。
「……わかった」
静かになる。
そのまま。
ラーナはすぐ寝落ちる。
でも。
無意識に、寄ってくる。
くっつく。
(……ほんとやめてくれ)
レオは天井を見る。
(……寝れるわけないだろ)
小さく息を吐く。
腕の中の温もりは。
離せなかった。




