第63話「翌朝の立場逆転」
朝。
光。
カーテンの隙間から差し込む。
ラーナはゆっくり目を開ける。
(……だるい)
軽く寝返りを打つ。
その瞬間。
(……あ)
思い出す。
昨日。
⸻
「ラーナに会いたくなるくらいには酔ってる」
⸻
「ほんとかわいい」
⸻
「今日、だいぶ我慢してたから」
⸻
(……やばい)
一気に覚醒する。
顔が熱い。
布団を少しだけ引き上げる。
顔、隠す。
(……消えたい)
「起きた?」
声。
(……終わった)
ゆっくり視線を向ける。
レオ。
寝室のドアの前。
普通にコーヒー持ってる。
いつも通り。
……のはず。
でも。
口元、少しだけ笑ってる。
「……起きた」
声、小さい。
目、合う。
ラーナ、即逸らす。
「……どうしたの」
わざとらしい。
「……別に」
「顔赤いけど」
「違う」
即。
レオが少しだけ笑う。
「昨日のこと思い出してる?」
(……やめて)
「……思い出してない」
「嘘」
即バレる。
「……何」
ラーナが少しだけ睨む。
レオがゆっくり近づいてくる。
「“無理”って言ってたじゃん」
ラーナの思考が止まる。
「……言ってない」
「言ってた」
「言ってない」
「言ってた」
距離、どんどん詰まる。
「……処理できない、とか」
(……無理)
ラーナが布団を被る。
「……やめて」
「なんで」
「……ほんと無理」
昨日と同じこと言ってる。
レオが小さく笑う。
(……昨日、だいぶ言ったしな)
(そりゃ無理にもなるか)
「それ昨日も聞いた」
布団越しに、少しだけ引っ張る。
「出てきな」
「やだ」
即答。
「なんで」
「顔見られたくない」
正直。
レオが少しだけ止まる。
「……じゃあ」
一拍。
「見なきゃいい?」
「……は?」
次の瞬間。
布団ごと引き寄せられる。
「……ちょ、なに」
「見てないでしょ」
確かに。
顔は見られてない。
でも。
距離、近すぎる。
(……ずるい)
ラーナの手が、無意識に服を掴む。
レオが少しだけ声を落とす。
「……昨日さ」
「めちゃくちゃ可愛かったよ」
ラーナの思考が止まる。
「……やめて」
「なんで」
「……思い出すから」
レオが小さく笑う。
「じゃあ忘れなきゃいいじゃん」
「無理」
即答。
レオが少しだけ息を吐く。
「……ほんとさ」
「昨日あんなことしといて」
一拍。
「今それ?」
ラーナが少しだけ黙る。
そのあと。
小さく。
「……あれは」
一拍。
「……レオが悪い」
レオが止まる。
「……酔ってたし」
「……距離おかしかったし」
ぼそぼそ。
「……あんなこと言うから」
「は?」
「……ああなったの、レオのせいだから」
レオが少しだけ笑う。
「……いや」
「ラーナでしょ」
「……でも原因はレオ」
「……酔ってたのそっちだし」
正論。
レオが一瞬黙る。
(……確かに)
でもすぐ戻す。
「……で?」
「今日も無理?」
低く。
ラーナが一瞬固まる。
(……何それ)
でも。
逃げない。
ほんの少しだけ。
布団の中で、距離を詰める。
「……無理じゃない」
小さく。
レオが止まる。
(……まじか)
数秒。
沈黙。
「……昨日よりやばいぞそれ」
「……知らない」
そのまま。
どっちも、もう引かなかった。




