第62話「酔いと本音」
数日前。
「今度、チームで飲み会あるんだけど」
レオが何気なく言う。
ラーナの手が、一瞬だけ止まる。
「……そう」
顔はそのまま。
でも。
(……飲み会)
少しだけ、引っかかる。
「一次会だけで帰るよ」
レオが続ける。
「どうせ長くいても疲れるし」
「……別に」
一拍。
「……大丈夫だよ、行っておいで」
言える。
ちゃんと。
(……気にしてない)
……つもり。
レオは少しだけラーナを見る。
でも、それ以上は何も言わない。
「じゃあ、終わったら連絡する」
「……ん」
そのまま話は終わる。
⸻
当日。
夜。
家。
時計を見る。
まだ、そんなに遅くない。
(……早く帰るって言ってた)
スマホを見る。
通知は、ない。
(……別に)
気にしてない。
……はず。
そのとき。
玄関から、音。
(……はや)
ドアが開く。
レオ。
「……早くない」
「早めに切り上げてきた」
少しだけ、ふらついてる。
顔、ほんのり赤い。
(……酔ってる)
次の瞬間。
距離が、近い。
「……ラーナ」
「なに」
「会いたかった」
即。
ラーナの思考が止まる。
「……は?」
「だから帰ってきた」
まっすぐ。
変な駆け引き、一切なし。
(……無理)
ラーナが一歩引く。
でも。
レオが一歩詰める。
「……ちょっと酔ってるでしょ」
「ちょっとだけ」
「……だからって」
「ラーナに会いたくなるくらいには酔ってる」
(……やめて)
言葉、強すぎる。
レオがそのままソファに座る。
ラーナも少し遅れて座る。
距離、近い。
「……飲み会どうだったの」
「普通」
「……女の人に距離詰められなかった?」
一応。
聞く。
レオが少しだけ考える。
「……いや」
「ラーナの話しかしてないから、特にそういうのなかった」
ラーナの呼吸が止まる。
「……何それ」
「そのまま」
「彼女いるって言ったし」
「写真見せろって言われたけど断った」
(……は?)
「見せたくないから」
ラーナの顔が一気に熱くなる。
(……無理)
「……ほら」
レオが少しだけ笑う。
「そういうとこ」
「ほんとかわいい」
ラーナが固まる。
「……やめて」
「なんで」
「……無理」
短い。
でも。
完全に崩れてる。
レオが、少しだけ距離を詰める。
「……無理ってなに」
「……処理できない」
正直。
レオが少しだけ息を吐く。
距離が詰まる。
ラーナの手が、無意識に服を掴む。
(……ほんと無理)
でも。
逃げない。
レオが、少しだけ笑う。
「……今日、だいぶ我慢してたから」
一拍。
「もう無理」
低く。
ラーナの思考が追いつく前に。
距離は、完全に消えた。




