第61話「比較にならない②」
夜。
家。
静か。
いつもと同じはずなのに。
少しだけ、空気が重い。
レオはソファに座って、ラーナを見る。
「……で?」
「……なに」
視線を合わせない。
「さっきから何」
ラーナが、少しだけ止まる。
「……別に」
「別にじゃない」
即。
「顔に出てる」
逃げ道を塞ぐ。
ラーナが、少しだけ息を吐く。
観念したみたいに。
「……今日の女の人」
「……うん?」
「ああいう人の方が」
言葉が止まる。
「……いいんじゃないの」
レオが眉を寄せる。
「……どういう意味」
ラーナが少しだけ視線を落とす。
「……大人っぽいし」
「……ちゃんとしてるし」
「……その」
少しだけ、言いにくそうに。
「……私みたいに細くないし」
一拍。
「……胸もあるし」
レオの思考が止まる。
(……は?)
「……何それ」
ラーナはそれ以上言わない。
でも。
視線は上げない。
「……レオだって、そういう方が好きでしょ」
ぼそっと。
(……まじか)
レオが、ゆっくり息を吐く。
低く。
「いや、そんなん重要じゃないでしょ」
即否定。
ラーナが少しだけ顔を上げる。
「……でも」
「でもじゃない」
被せる。
一歩、近づく。
「なんでそこ比べるの」
「……比べるでしょ」
小さい声。
「比べない」
即。
「……俺は」
一拍。
「ラーナがいいから一緒にいるんだけど」
ラーナが止まる。
「……それじゃだめ?」
静か。
でも、逃げてない。
ラーナの思考が少し遅れて追いつく。
(……それは)
わかってる。
でも。
「……なんで」
出てくる。
「……なんで私なの」
レオが少しだけ目を細める。
「……それ聞く?」
「……聞く」
一拍。
レオが、少しだけ考える。
「……顔も好きだし」
ラーナが固まる。
「……性格も好きだし」
「……仕事でテキパキしてるとこも好きだし」
「……素直じゃないとこも好きだし」
一つずつ。
「……全部含めて、ラーナがいい」
静かに言い切る。
ラーナの思考が、止まる。
(……無理)
顔が、熱い。
「……あと」
レオが少しだけ声を落とす。
「細いのも普通に好きだけど」
ラーナが一瞬で真っ赤になる。
「……やめて」
「なんで」
「……恥ずかしい」
レオが少しだけ笑う。
「……今さら」
一歩。
距離が詰まる。
「……ほんとにさ」
「なんでそんなことで不安になるの」
ラーナが少しだけ視線を逸らす。
「……なったから」
正直。
一瞬。
静かになる。
そのあと。
レオが、軽く抱き寄せる。
「……もうさ」
「比べるのやめな」
一拍。
「俺が選んでるの、ラーナなんだから」
ラーナの手が、少しだけ服を掴む。
(……ずるい)
でも。
離れない。
「……わかった」
小さく。
そのまま。
少しだけ、体を預ける。
レオが、ほんの少しだけ安心したように息を吐いた。




