第53話「無意識の侵略」
同棲、数日目。
「……ラーナ」
「なに」
「寝相、悪くない?」
朝。
ベッドの上。
ラーナは、普通に起き上がる。
「……普通」
「いや普通じゃない」
レオが即答する。
「昨日、蹴られたんだけど」
「蹴ってない」
「蹴ってた」
「覚えてない」
「だろうな」
一拍。
「あと普通に横断してくる」
「……は?」
「最初あっちだったのに」
「起きたらこっちいる」
「……そんなに動かない」
「動いてる」
完全に平行線。
「……証拠あるの」
ラーナが言う。
レオが無言でスマホを出す。
「え」
動画。
暗い画面。
ベッド。
最初。
ラーナはちゃんと端にいる。
⸻
数分後。
じわじわ。
近づく。
さらに。
普通にレオの上に乗りかかる。
「……は?」
ラーナの声が止まる。
動画の中の自分。
完全に無意識。
そのまま。
腕を回す。
抱きつく。
止まる。
「……」
再生が止まる。
「……ね?」
レオが言う。
「……知らない」
即答。
「いや今見たでしょ」
「知らない」
顔が、少しだけ赤い。
(……無意識でこれ?)
レオが思う。
「……やばくない?」
「やばくない」
「普通に抱きついてたけど」
「……それは」
一瞬、詰まる。
「……仕方ない」
「仕方なくない」
一拍。
「……じゃあ離せばいい」
ラーナが言う。
「無理」
即答。
「なんで」
レオが少しだけ笑う。
「起こすのめんどい」
「……起こして」
「やだ」
「なんで」
一瞬。
「……かわいいから」
ラーナの思考が止まる。
「……は?」
「無意識でこっちくるの」
さらっと言う。
「反応できないし」
「避けないし」
「そのまま来るし」
一歩近づく。
「正直、やばい」
「……何が」
「我慢的に」
一瞬。
空気が止まる。
「……じゃあ」
ラーナが言う。
「別で寝る」
「それはやだ」
即答。
「なんで」
レオが、少しだけ距離を詰める。
「来るから」
「……」
「無意識でも」
一拍。
「俺のとこ来るし」
ラーナの視線が逸れる。
「……それは」
言い訳が出ない。
「……知らない」
小さく言う。
「知ってる」
被せる。
「……昨日も」
「一昨日も」
「その前も」
一歩。
さらに近い。
「毎回来てる」
ラーナの耳が赤くなる。
「……やめて」
「何が」
「言わないで」
「事実」
逃がさない。
⸻
その日の夜。
ベッド。
ラーナは、明らかに距離を取って寝る。
(……来ない)
レオが思う。
(……意識してる)
少しだけ、面白い。
でも。
(……ちょっと寂しい)
一瞬。
手を伸ばす。
止める。
(……いや)
(これは待つやつ)
そのまま、目を閉じる。
⸻
数時間後。
静かな部屋。
ふと。
布団が、少し動く。
気配。
近づく。
(……来た)
レオは目を開けない。
そのまま。
ラーナの腕が、触れる。
少しだけ。
探るみたいに。
そして。
服を、掴む。
(……やっぱり)
そのまま。
距離が詰まる。
ぴったり。
完全に。
無意識。
レオが、小さく息を吐く。
(……無理だろこれ)
手を、少しだけ動かす。
ラーナの背中に触れる。
逃げない。
むしろ。
さらに近づく。
(……終わり)
そのまま。
軽く、抱き寄せる。
反応、なし。
完全に、寝てる。
レオが、少しだけ笑う。
「……ほんと無理」
小さく呟く。
でも。
そのまま、離さなかった。




