第50話「いつもの延長」
休日。
駅前。
人通りはそこそこ多い。
でも、平日よりは少しだけゆるい。
ラーナとレオは並んで歩いている。
「……で」
ラーナが言う。
「どこから見るの」
「とりあえず不動産屋」
「……順当」
同棲。
決まってから数日。
こうして普通に物件を見に行く流れになっている。
特別な感じは、あまりない。
でも。
少しだけ、違う。
“決まったあとの行動”になっている。
⸻
「条件は?」
「広さ優先」
「家賃」
「まあそこそこ」
「……曖昧」
「ラーナは」
「静かならいい」
「それはわかる」
会話は、いつも通り。
でも。
内容だけが、少し未来寄り。
歩きながら。
ふと。
ラーナが口を開く。
「……レオって」
「実家だよね」
レオの足が、ほんの少しだけ止まる。
すぐに、戻る。
「……うん」
短い返事。
「ずっと?」
「ずっと」
「一人暮らししたことないの」
「あるにはある」
少しだけ曖昧。
ラーナが、ちらっと見る。
「……どっち」
「してた時期もある」
「……ふーん」
それ以上は、聞かない。
でも。
完全に納得したわけでもない。
「……なんで今まで実家なの」
静かに、続ける。
レオが、少しだけ視線を逸らす。
「……楽だから」
軽く言う。
でも。
ほんの少しだけ、間がある。
「……それだけ?」
ラーナが聞く。
レオは、少しだけ笑う。
「それだけじゃダメ?」
ラーナは、一瞬だけ考えて。
「……別に」
いつもの返し。
でも。
少しだけ柔らかい。
数歩、歩く。
「……じゃあ」
ラーナが言う。
「今回が初めてってこと」
「まあ」
「ちゃんと出るの」
「うん」
一拍。
「……大丈夫なの」
レオが、少しだけ眉を動かす。
「何が」
「いろいろ」
曖昧。
でも。
ちゃんと気にしてる。
レオが、少しだけ息を吐く。
「……まあ、なんとかなるでしょ」
軽い。
いつも通り。
でも。
ラーナは、それを少しだけ見ている。
「……そ」
それ以上は、踏み込まない。
でも。
完全に興味がないわけでもない。
(……なんか)
(引っかかる)
言葉にはしない。
そのまま。
不動産屋の前に着く。
「ここ」
「……普通」
「入るよ」
扉を開ける。
空気が変わる。
“これから”の場所を探す空間。
ラーナが、少しだけ中を見る。
その横で。
レオは、ほんの一瞬だけ立ち止まる。
(……家、出るのか)
軽く言ったつもりだった。
でも。
ちゃんと決めたことでもある。
そのまま、中に入る。
ラーナも続く。
まだ。
お互いの“過去”は知らない。
でも。
同じ方向には、進んでいる。
その距離は。
近いようで。
まだ少しだけ、余白があった。
同棲編に突入しました……!マジでこんな続かせる気なかったんですけど楽しすぎて気づいたらこんなことに……。まだまだ続きます!笑




