第44話「離れてる距離」
実習オリエンテーション。
「今回の病院実習は、各自別の施設に派遣されます」
ざわつく教室。
配布される紙。
名前と、配属先。
(……は?)
レオの視線が止まる。
ラーナの名前。
——別の病院。
(……マジか)
期間、2週間。
完全に別行動。
顔を上げる。
ラーナも、同じタイミングで顔を上げる。
目が合う。
一瞬。
「……別だね」
ラーナが先に言う。
「……だな」
短い。
でも。
思ってることは同じ。
(……嫌すぎる)
さらに追い打ち。
「なお、基本は2人1組で行動してもらいます」
(……は?)
紙を見る。
ペア欄。
知らない名前。
女性。
(……最悪)
横を見る。
ラーナも、同じ顔。
「……男?」
「……うん」
一拍。
「……そう」
それだけ。
それ以上は言わない。
でも。
空気が、少しだけ変わる。
(……気にしてる)
お互い。
言わないだけで。
ちゃんと分かる。
⸻
その日の帰り。
並んで歩く。
いつもより、少し静か。
「……2週間か」
「……うん」
一拍。
「……連絡は?」
ラーナが聞く。
「毎日する」
即答。
「……電話も」
「する」
即。
少しだけ、間。
「……忙しくても」
「する」
被せる。
ラーナが、ほんの少しだけ息を吐く。
「……じゃあいい」
(……かわいいかよ)
でも。
まだ終わらない。
「……そっちは」
「なに」
「そのペアのやつ」
一瞬、言葉を選んで。
「……距離、間違えんなよ」
「……普通にする」
即答。
「は?」
「実習だから」
「……それはそうだけど」
一拍。
「……レオもでしょ」
「……しない」
即。
「嘘」
「しない」
視線がぶつかる。
少しだけ、火花。
でも。
どっちも分かってる。
避けられない状況。
だからこそ。
余計に気になる。
⸻
家の前。
止まる。
「……2週間だけだから」
ラーナが言う。
「……うん」
「……すぐ終わる」
「……うん」
でも。
どっちも分かってる。
“すぐ”じゃない。
「……レオ」
「なに」
一拍。
「……ちゃんと連絡して」
「するって言ってる」
「……絶対」
「絶対」
短い約束。
そのまま。
少しだけ近づく。
ほんの一瞬。
触れる。
すぐ離れる。
「……行ってらっしゃい」
「……そっちも」
ドアが閉まる。
レオは、その場に少しだけ残る。
(……無理だろ普通に)
ポケットのスマホを握る。
(……毎日連絡する)
決める。
離れてる分。
繋ぎ止める。
絶対に。
手放さないように。
あのラーナがこんな感じになるなんて思ってませんでしたよ……




