第43話「覚えてるよね」
朝。
カーテンの隙間から、光。
静かな部屋。
隣。
ラーナは、まだ眠そうに目を開ける。
「……ん」
少しだけ、ぼんやり。
視界に入る。
レオ。
起きてる。
というか。
明らかに、寝てない。
「……おはよ」
「……おはよ」
声が低い。
でも、はっきりしてる。
一拍。
「……覚えてる?」
ラーナが、少しだけ止まる。
「……?」
首を傾ける。
ほんの少しだけ。
考える。
「……どこまで?」
(……やっぱりか)
レオが、ゆっくり息を吐く。
「……覚えてないんだ」
「……曖昧」
正直。
レオが、少しだけ笑う。
でも。
その目は、全然笑ってない。
「……昨日さ」
一歩、近づく。
「めちゃくちゃ煽ってたけど」
「……そうなの」
自覚なし。
(……ほんと無自覚)
そのまま。
一拍。
「……明日覚えとけよって言ったよな」
低く。
ラーナが、少しだけ目を上げる。
その瞬間。
押し倒される。
ベッドに。
「……レオ」
驚きはある。
でも。
拒否はない。
「……いいの?」
レオが、少しだけ止まる。
距離、近いまま。
ラーナを見る。
「……いいよ」
あっさり。
(……いいのかよ)
一瞬。
不安がよぎる。
(まだ酔ってるんじゃないか?)
(また覚えてないとか言われたら)
止まる。
ラーナが、少しだけ首を傾ける。
「……なに」
「……ほんとに覚えてない状態じゃない?」
レオの声が、少しだけ低くなる。
「……大丈夫」
一拍。
「今はちゃんとわかってる」
まっすぐ。
視線が、合う。
(……無理)
もう。
止まれない。
そのまま。
距離を詰める。
触れる。
唇。
昨日とは違う。
止める理由が、ない。
ラーナも、逃げない。
むしろ。
少しだけ、近づく。
手が、レオの服を掴む。
ぎゅっと。
離れない。
レオの呼吸が、少し乱れる。
「……ほんとにさ」
「なに」
「昨日の分、全部だから」
「……うん」
あっさり受ける。
(……やば)
そのまま。
もう一度。
距離が、ゼロになる。
今度は。
完全に。
遠慮がない。
でも。
乱暴じゃない。
ちゃんと。
確かめるみたいに。
ラーナの手が、少しだけ強くなる。
「……レオ」
「なに」
「……昨日の」
「ん?」
「……ご褒美ってやつ」
一拍。
「……まだ足りない」
(……無理)
レオの理性が、完全に切れる。
「……あとで後悔しても知らないからな」
「しない」
即答。
その一言で。
レオが、小さく息を吐く。
もう止める理由は、どこにもなかった。
距離は。
もう最初から。
戻る気なんてなかったみたいに。
そのまま。
どちらからともなく、距離を埋めていった。




