第7話:稼げるようになった、はずだった
金運最強、人運最悪だった男が――
異世界で“真逆の運命”を背負わされます。
ゆるく読める逆転系コメディです。
――それから、一週間。
結論から言う。
金は、稼げるようになった。
「これ、全部でいくら?」
「銀貨五枚だな」
「高い」
即座にレナが切る。
俺は横で、にこにこと商人を見る。
「でもさ、これいいよな」
「ああ、わかるか坊主!これはな――」
商人の顔が緩む。
(はい、発動)
そこからは、流れ作業だった。
俺が“欲しがる客”になる。
レナが値段を叩く。
相手は俺を気に入って、売りたくなる。
結果――
「……チッ、持ってけ」
相場より安く手に入る。
「売るぞ」
「うん」
そして別の場所へ。
「それ、売ってくれないか?」
村人が声をかけてくる。
俺は少し考えるフリをしてから――
「いいよ」
笑う。
「ほんとに!?ありがとう!」
――即決。
しかも、向こうは“少し高くてもいい”と思っている。
なぜなら――
(俺だから)
結果。
「……銀貨八枚」
レナが、小さく呟く。
「仕入れが五枚。利益三枚」
(マジかよ)
思わず笑いそうになる。
この一週間で、同じことを何度も繰り返した。
そのたびに、少しずつ金が増えていく。
「もう一回いく」
「うん」
回す。
ひたすら回す。
仕入れて、売る。
仕入れて、売る。
繰り返すだけで、金が増える。
「リオくんすごい!」
「また買っていい!?」
「次もお願い!」
人が集まる。
笑顔が増える。
金も増える。
(……これ、勝ちだろ)
正直、そう思い始めていた。
「調子乗りすぎ」
横から、冷たい声。
レナだ。
「まだ安定してない」
「いやでも――」
「たまたま上手くいってるだけ」
即切り。
「それに」
レナは周囲を見る。
「目立ちすぎ」
言われて、気づく。
確かに。
人が多い。
集まりすぎている。
「……別にいいだろ」
「よくない」
即答。
「人が増える=トラブルも増える」
「……」
「あなたの“それ”は、プラスだけじゃない」
少しだけ、間を置いて。
「むしろ、マイナスの方が大きい」
(……まぁな)
それは、もう嫌というほど知っている。
――一週間前。
森の中で、盗賊に囲まれた。
そして、笑顔で全部持っていかれた。
(あれと同じだ)
人に好かれる。
だから油断する。
だから――奪われる。
「でも、今は稼げてる」
「今は、ね」
その言葉が、妙に引っかかった。
その時だった。
「へぇ……面白いことやってんじゃねぇか」
低い声。
空気が、変わる。
振り向く。
そこにいたのは――
「お、久しぶりじゃねぇかリオ」
あの時の男だった。
(……来たな)
一週間前。
森の中で、俺から全部を奪っていった盗賊。
「ガキのくせに商売か」
にやりと笑う。
「しかも、結構稼いでるみたいだな?」
視線が、俺たちの手元――銀貨に向く。
(最悪だ)
あの時と同じだ。
違うのは――
今は“奪う価値がある”ってこと。
「なぁリオ」
男が、親しげに肩を組んでくる。
「元気にしてたか?」
笑顔。
前と同じ、嫌な笑顔。
「俺はよぉ、お前みたいなやつ好きなんだ」
知ってる。
だから、奪われた。
「だからさ」
ぐっと、距離が近づく。
「今回も、ちょっと分けてくれよ」
周囲の空気が、静かに凍る。
(……やっぱりこうなる)
一週間で稼いだ分。
全部、ここで持っていかれる可能性。
横を見る。
レナは、すでに状況を理解していた。
視線が動く。
逃げ道、人数、距離――全部見てる。
(どうする)
選択。
戦うか。
逃げるか。
渡すか。
そして――
俺は、笑った。
「……いいよ」
男の顔が、ぱっと明るくなる。
(クソが)
わかってる。
これが最適解じゃないことくらい。
でも――
(ここで敵対したら、全部終わる)
今はまだ、“守る力”が足りない。
だから――
(飲むしかねぇ)
こうして俺は――
一週間かけて積み上げた金を、再び奪われるかもしれない状況に立たされた。
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