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金持ちから貧乏転生~金を取るか人を取るか~  作者: 有明


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第6話:好かれて、騙されて、取り返す

金運最強、人運最悪だった男が――

異世界で“真逆の運命”を背負わされます。


ゆるく読める逆転系コメディです。


 ――昼過ぎ。


 村の広場は、いつもより人が多かった。


 外から商人が来ているらしい。


(……ちょうどいい)


 俺は人混みの端で様子を見ていた。


 色とりどりの商品。布、装飾品、食料。どれも村では手に入りにくいものばかりだ。


 そして――


「……それ、いくら」


 聞き慣れた声。


 視線を向けると、やっぱりいた。


 レナだ。


 小さな袋を握りしめ、商人と向き合っている。


(ほう)


 興味深い。


 あいつが“買い物”をしている。




「銀貨三枚だ」


 商人がにやりと笑う。


「……高い」


「珍しい品だ。これでも安くしてる」


 差し出されているのは、小さなナイフ。


 確かに質は良さそうだが――


(あれ、相場もっと下だろ)


 前世の感覚だが、なんとなくわかる。


 そして何より――


(あの顔、完全にカモ見る目だな)




「……わかった」


 レナが、小さく頷く。


(おい)


 止めるか、一瞬迷う。


 だが次の瞬間。


(……いや、使えるな)


 思考を切り替えた。




 俺は、ゆっくりと二人に近づく。




「それ、いいな」


 わざとらしく声をかける。


 レナが一瞬だけ眉をひそめた。


 商人は――


「お、なんだ坊主」


 すぐに笑顔になった。


(はい、発動)




「そのナイフ、すごいのか?」


「ああ、特別製だ。滅多に手に入らない」


「へぇ……」


 俺は目を輝かせるフリをする。


「欲しいな」


 その一言で、空気が変わった。


 商人の目が、露骨に緩む。




「そうかそうか!見る目あるな!」


(ちょろいな)


 内心で呟く。


 だが顔には出さない。


 あくまで“無知なガキ”を演じる。




「この子、やめた方がいい」


 横から、レナが低く言った。


「それ、相場の倍以上」


「おいおい、何言ってんだ嬢ちゃん」


 商人が笑う。


「ちゃんとした値段だぞ?」


「嘘ね」


 即答。


 空気が一瞬だけ張り詰めた。




(いいねぇ)


 完璧な役割分担だ。


 俺が好かれて、レナが刺す。


 問題は――


(このままだと、また俺が搾取される)




「なぁおじさん」


 俺は一歩前に出る。


「これ、もっと安くならない?」


「うーん……坊主には特別に――」


 来た。


 この流れ、知っている。


 “特別価格”とか言って、結局損するやつだ。




(ここで任せるか)


 一瞬だけ、レナを見る。


 目が合う。


 ほんのわずかに――


 頷いた。




「じゃあさ」


 俺は笑う。


「これと、あれと、それも欲しい」


 適当に商品を指差す。


 商人の目が輝く。


「おお!まとめ買いか!」


「うん。その代わり――」


 一拍置く。


「全部まとめて、安くしてよ」




 沈黙。


 周囲の空気が揺れる。




「……いいだろう」


 商人が笑った。


「そこまで言うなら、特別だ!」


(はい、来た)




 その瞬間。


「全部で銀貨二枚」


 レナが割って入った。




「は?」


 商人が固まる。


「今の話聞いてた?」


「聞いてた。だからその値段」


 淡々とした声。




「ふざけんな、そんな値段で――」


「じゃあいい」


 レナは即座に引いた。


 そして俺の腕を掴む。


「行くよ」




「え、あ、うん」


 引っ張られる。


 そのまま離れようとした――




「待て!」


 商人の声。


 振り返る。




「……二枚は無理だ。だが、三枚でどうだ」


(ほらな)




「いらない」


 レナは即答。


 一切迷わない。




「……じゃあ、二枚半」


「二枚」


「……」




 沈黙。


 数秒後。




「……いいだろ」


 商人が、吐き捨てるように言った。




(マジかよ)


 思わず心の中で呟く。


 完全に、ひっくり返した。




 ナイフと、その他いくつかの商品が手渡される。


 代わりに、銀貨二枚。


 ――明らかに、こっちの勝ちだ。




「……なんで」


 離れた後、俺はレナに聞いた。


「なんで成立した」


「簡単」


 レナは前を向いたまま言う。




「あなたが“欲しがってる客”になったから」


「……」


「向こうは利益を取りに来た。でもあなたを気に入った」


「それで?」


「だから“売りたい”が優先された」




 なるほど。


 理解できる。




「そこで値段を叩く」


「それだけ」




 シンプルすぎる答え。


 だが――


(噛み合ってるな)




「……どう?」


 レナがちらりと見る。


「これが“確実な利益”」




 少しだけ、間を置いて。


 俺は言った。




「組め」




「……は?」




「今の、毎回やれば稼げる」


「……」


「俺が好かれる。お前が締める」


「……」




 数秒の沈黙。


 そして――




「……条件がある」




 初めてだった。


 レナが、“完全に拒否しなかった”のは。




「逃げないこと」


「逃げねぇよ」


「嘘つかないこと」


「必要なことは言う」


「……」




 小さく息を吐いて。




「……いい」




 その一言で。




 俺たちは、初めて“利害で繋がった”。


読んでいただきありがとうございます!

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