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金持ちから貧乏転生~金を取るか人を取るか~  作者: 有明


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4/20

第4話:盗賊に好かれて、全財産なくなりました

金運最強、人運最悪だった男が――

異世界で“真逆の運命”を背負わされます。


ゆるく読める逆転系コメディです。

――村の外。


 それは、俺にとって“未知”であり、“チャンス”であり、そして――


(……普通に怖ぇな)


 ただの森だった。


 だが、村の周囲とは明らかに空気が違う。人の手が入っていない分、静かで、重い。


「リオくん、ほんとに大丈夫?」


 後ろから不安そうな声。


 振り返ると、案の定ついてきているガキどもがいた。


「……なんで来た」


「だって心配で……」


「一人じゃ危ないよ!」


(いや、お前らが来てる方が危ないだろ)


 喉まで出かかったが、飲み込む。


 どうせ止めても来る。


 それがこの世界で学んだことの一つだ。


(……とにかく、さっさと終わらせる)


 俺の目的はシンプル。


 この村の外で、ちゃんと“金を稼ぐ”こと。


 人運が通じない相手に対してなら、まともな商売ができるはず――


 そう思っていた。



「おい」


 低い声が、背後から落ちてきた。


 振り向く。


 そこにいたのは――三人の男。


 ボロい装備。濁った目。腰には短剣。


(……はい、来ました)


 どう見ても、まともな相手じゃない。


 いわゆる“盗賊”ってやつだろう。


「ガキがこんなとこで何してんだ?」


 男の一人が、にやりと笑う。


 子どもたちが一斉に俺の後ろに隠れた。


(まぁ、そうなるよな)


 だが、不思議と恐怖はなかった。


 むしろ――


(ここだな)


 と、冷静に思っていた。


 こいつらなら、間違いなく“好意”なんて持たない。


 つまり――


(やっと普通に交渉できる)



「商売しに来た」


 俺は一歩前に出る。


「はぁ?」


 盗賊たちが顔を見合わせる。


「……ガキが商売?」


「そうだ」


 ポケットから、前に仕入れた(もらった)食料の一部を取り出す。


「これを売る」


 シンプルに提示する。


 前世でもよくやったやり方だ。


 余計なことは言わない。価値を見せて、相手に判断させる。


 それでいい。


 ――普通ならな。



「……はは」


 一人が、吹き出した。


「おい、こいつおもしれぇぞ」


「マジだな。こんな状況で商売とか」


 そして――


「気に入った」


 その一言で、空気が変わった。


(……あ?)


 嫌な予感がした。


 次の瞬間。


「お前、いい度胸してるな」


「俺、そういうやつ好きなんだよ」


 盗賊の一人が、ぐっと距離を詰めてくる。


 近い。


 そして、やたらと笑顔だ。


(……ちょっと待て)


 この感じ。


 嫌というほど知っている。


 これは――


(“好かれてる”やつだ)



「ガキ、名前は?」


「……リオ」


「リオか。いい名前じゃねぇか」


 肩をバンバン叩かれる。


 痛い。


「なぁリオ、お前のこと気に入ったからよ」


 男は、にやりと笑って――


「全部もらってやるよ」


「は?」



 ――一瞬だった。


 気づいた時には、手に持っていた食料も、ポケットの中の銀貨も、全部なくなっていた。


 抵抗?


 できるわけがない。


 相手は大人、こっちは五歳児だ。


 それに――


「ありがとな、リオ!」


「また会おうぜ!」


 満面の笑みで、盗賊たちは去っていった。



(……は?)


 取り残された俺は、しばらくその場に立ち尽くしていた。


 後ろでは子どもたちが震えている。


「り、リオくん……大丈夫……?」


「……ああ」


 大丈夫じゃない。


 全然大丈夫じゃない。


 だが、それ以上に――


(なんなんだよ、これ)


 理解はしていた。


 いや、理解してしまった。



 人運は、ここでも発動していた。



 だがそれは――


 “助けられる形”じゃなく、“都合よく扱われる形”で。



「……クソが」


 思わず、口から漏れた。


 前世では、人に嫌われて搾取された。


 今世では、人に好かれて搾取される。


(どっちにしろ、取られる側かよ……!)



「でもリオくん、すごいよ……」


 子どもたちが、ぽつりと呟く。


「怖い人たちなのに、仲良くなってた……」


「うん……普通なら絶対ダメだったよ……」


 ――褒められているらしい。


(嬉しくねぇよ)



 だが、一つだけ収穫はあった。


(……使い方、間違えてたな)


 この能力は、“交渉”には向いていない。


 むしろ――


(戦闘回避とか、時間稼ぎとか、そっちだ)


 そう考えれば、価値はある。


 少なくとも、殺されずに済んだ。



「……帰るぞ」


 俺は背を向ける。


 財布は空。


 手元には何もない。


 だが――


(やり方は、見えてきた)



 こうして俺は――


 “人に好かれるほど損をする”という、このクソみたいな能力の本当の使い方を、ようやく理解し始めた。


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