第3話:金を稼ぎたいのに、なぜかタダになる
金運最強、人運最悪だった男が――
異世界で“真逆の運命”を背負わされます。
ゆるく読める逆転系コメディです。
――結論から言う。
このままだと、確実に詰む。
(人はいる。金がない)
シンプルすぎる現実だった。
前世の俺なら、この状況はありえない。人がいなくても、金だけは勝手に増えていった。
だが今は違う。
人がいるせいで、金が減る。
(意味わかんねぇだろ……)
だが、嘆いても仕方ない。
俺には前世の知識がある。
なら――
(ガキでもできる商売、やるしかねぇよな)
⸻
「リオくん、何してるのー?」
翌日。
俺は家の前にしゃがみ込み、真剣な顔で地面を見つめていた。
声をかけてきたのは、いつもの近所の子どもたちだ。
「……商売の準備」
「しょうばい?」
首をかしげる子どもたち。
無理もない。この年齢でそんなこと考えるやつ、普通いない。
だが俺は違う。
(まずは原価ゼロでいけるやつ)
そう考えた結果――
「この石、売る」
地面に転がっていた、ちょっと形のいい石を持ち上げる。
「えー?石なんていらないよ?」
当然の反応だ。
だが、ここからが勝負。
「ただの石じゃない。“幸運の石”だ」
「こううん?」
「これを持ってると、いいことが起きる」
――もちろん嘘だ。
だが、商売なんてそんなもんだ。
価値は“作る”もの。
前世で嫌というほど見てきた。
「ほんとに?」
「ああ。昨日これ拾ったあと、パンもらった」
嘘じゃない。
原因は完全に俺の人運だが、そんなことはどうでもいい。
「ほしい!」
――かかった。
(よし、いける)
内心でガッツポーズを決めた、その瞬間。
「リオくんが持ってた石なんでしょ?じゃあ絶対すごいやつじゃん!」
「お金払うよ!」
子どもたちが、ポケットから小銭を取り出そうとする。
(勝ったな)
確信した。
これで、ようやく“稼げる”。
そう思った――
その時だった。
⸻
「おーいリオ!何してるんだ?」
ガタイのいい男が近づいてくる。
近所の鍛冶屋のおっさんだ。
「……商売」
「商売ぉ?」
怪訝そうな顔で、俺の手元を見る。
「その石を売るのか?」
「そうだ。“幸運の石”だ」
堂々と言い切る。
すると――
「はははっ!おもしれぇな!」
おっさんは豪快に笑った。
そして次の瞬間。
「いいぞ、その根性気に入った!」
――ドンッ!
と、俺の手に何かを押し付けてきた。
重い。
これは――
(……パン?)
いや、パンどころじゃない。
肉、野菜、果物、その他もろもろ。
どう見ても“仕入れ”レベルの量だ。
「これ、やるよ!」
「は?」
「商売するなら腹減ってちゃダメだろ!」
「いや、そういう話じゃ――」
「あとこれも持ってけ!」
さらに銀貨を数枚、無理やり握らされる。
(ちょっと待て)
状況が、理解できない。
俺は今、“売る側”だったはずだ。
なのに――
「リオくんすごーい!」
「応援してる!」
子どもたちまで、なぜか拍手している。
そして結局――
石は売れなかった。
代わりに、なぜか大量の食料と金だけが手元に残った。
⸻
(……いや、おかしいだろ)
完全に逆だ。
売って稼ぐはずが、もらって終わっている。
しかも今回は運よくプラスだが――
(これ、続かねぇぞ)
毎回こんなことになるとは限らない。
むしろ、この“人運”のせいで、まともな商売が成立しない可能性すらある。
(……考えろ)
前世の経験をフル回転させる。
この世界、この環境、この能力。
全部ひっくるめて――どう勝つか。
そして、一つの結論にたどり着いた。
⸻
(“売る相手”を変えるしかねぇ)
⸻
好かれる相手に売るからダメなんだ。
だったら――
(俺を知らないやつに売ればいい)
つまり。
この村の外。
人運が通用しない場所で、勝負する。
⸻
「……決めた」
小さく呟く。
その瞬間。
「どこ行くのー?」
背後から声が飛ぶ。
「ちょっと遠出する」
「えー!?じゃあ私も行く!」
「俺も!」
「私も!」
(……やっぱりこうなるか)
頭を抱えたくなる。
だが同時に、少しだけ口元が緩んだ。
――一人じゃない。
それだけは、前世よりマシかもしれない。
⸻
こうして俺は――
“人運が通用しない場所で金を稼ぐ”という、新たな無理ゲーに挑むことになった。
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