第2話:好かれすぎて、なぜか貧乏です
金運最強、人運最悪だった男が――
異世界で“真逆の運命”を背負わされます。
ゆるく読める逆転系コメディです。
――気づけば、俺は五歳になっていた。
「リオくん!今日も一緒に遊ぼうよ!」
「ダメよ、今日はうちでご飯食べていく約束でしょ?」
「ちょっと待ちなさいよ!昨日はそっちだったでしょ!」
……うるさい。
朝から家の前で、近所の子どもと母親たちが揉めている。
原因は――全部、俺だ。
(なんなんだよ、この状況……)
前世では考えられなかった。
人に誘われるどころか、用事がある時しか連絡すら来なかった俺が、今は放っておいても人が寄ってくる。
しかも、異常なレベルで。
「リオ、今日はどこに行きたい?」
母さんが優しく微笑む。
この人もそうだ。やたらと俺に甘い。もちろん嫌ではないが、違和感が消えない。
「……別に、どこでもいい」
そう答えた瞬間――
「じゃあうちに来て!お菓子いっぱいあるよ!」
「ダメ!今日はうち!お父さんが新しいおもちゃ買ってくれたの!」
即座に争奪戦再開。
(なんでだよ……)
何もしていない。ただ普通にしているだけだ。それなのに、なぜか好かれる。
理由がわからないのが、一番気持ち悪い。
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だが――問題はそこじゃなかった。
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「すみません、本当に助かります……」
母さんが、深々と頭を下げている。
相手は近所のパン屋の店主だ。
「いいのいいの!リオくんが来てくれるなら、パンくらいいくらでもあげるよ!」
そう言って、紙袋いっぱいのパンを押し付けてくる。
(……またか)
これで何度目だ。
肉屋も、八百屋も、なぜかやたらと“おまけ”をくれる。
普通ならありがたい話だ。
――普通ならな。
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「……母さん」
「どうしたの?」
「うち、金ないの?」
思い切って聞いた。
すると、母さんは一瞬だけ困ったような顔をして――
「……そうね、あまり余裕はないかもしれないわね」
やっぱりか。
この家、明らかに生活がギリギリだ。
服はいつも同じ。家具も古い。家自体もボロい。
なのに、周りから物が集まるせいで、なんとなく回っている。
(いや、おかしいだろ……)
前世の俺は、金だけは無限にあった。
だが今は――
(財布の中身、ほぼゼロじゃねぇか)
試しに小遣いを貯めようとしたことがある。
結果は、最悪だった。
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「リオくん、ごめん!これ壊しちゃった……!」
友達が泣きながら、おもちゃを差し出してくる。
――俺が買ったやつだ。
「……いいよ、気にすんな」
そう言った瞬間、
「リオくん優しい……!」
と、なぜか周りの好感度がさらに上がる。
そして翌日。
「お礼にこれあげる!」
と渡されたのは――石ころだった。
(いや、いらねぇよ!!)
だが断れない。
断ったら悲しそうな顔をするからだ。
その結果――
(気づいたら、金が全部消えてるんだが!?)
そう。
俺は人に好かれる代わりに、“搾取される側”に回っていた。
しかも、全員悪気ゼロ。
純粋な善意で、俺の金を消していく。
(前世と真逆すぎるだろ……)
あの時は、人が離れて金が残った。
今は、人が集まって金が消える。
極端すぎるにもほどがある。
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「リオ」
母さんが、優しく頭を撫でてくる。
「あなたがみんなに優しくしてるから、みんなもあなたが大好きなのよ」
「……それで貧乏になっても?」
思わず本音が出た。
すると母さんは、少しだけ驚いた顔をして――
それから、ふっと笑った。
「それでも、私は今の方が好きよ」
「……え?」
「前よりずっと、幸せそうな顔してるもの」
その言葉に、何も返せなかった。
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――幸せ、か。
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正直、わからない。
だが一つだけ、確かなことがある。
この世界では、前世と同じやり方じゃダメだ。
金は、勝手には増えない。
むしろ、放っておけば全部なくなる。
だったら――
(稼ぐしかねぇよな)
五歳児の脳みそで、そんな結論に至る。
前世の経験がある以上、やりようはいくらでもあるはずだ。
問題は――
「リオくん!一緒に遊ぼう!」
「今日は絶対うちに来てね!」
この、人の多さだ。
(……まず、どうやって一人の時間作るかだな)
金を稼ぐ以前の問題だった。
⸻
こうして俺は――
人に愛されすぎて自由がない上に、金もないという最悪の状況から、人生の再スタートを切ることになった。
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次回から少しずつ“金稼ぎ編”に入っていきます。




