第15話:逃げない理由
金運最強、人運最悪だった男が――
異世界で“真逆の運命”を背負わされます。
ゆるく読める逆転系コメディです。
「逃げるべき」
レナは即答だった。
場所は村の外れ。人目が少ない場所まで移動していた。
「このまま続けたら確実に潰される」
「……」
「もう商売の段階じゃない。縄張り争いに巻き込まれてる」
正論だった。
何一つ間違っていない。
「だから、一回全部捨てる」
「……は?」
「この村出る」
迷いのない声。
「今ならまだ間に合う」
(間に合う、か)
頭では理解している。
でも――
「やだね」
自然と口から出た。
レナの眉が動く。
「……なんで」
「ここまで作ったの、全部捨てるのか?」
「命より大事?」
「違う」
即答する。
「でも、ここで逃げたら一生このままだろ」
「……」
「奪われて、逃げて、また奪われる」
前世と同じだ。
「それが嫌なんだよ」
少しだけ、間。
レナは何も言わない。
「勝てるの?」
「わからん」
正直に言う。
「でも、このままじゃ負けるのは確定」
「……」
「なら、一回勝ちに行く」
レナが小さく息を吐いた。
「無茶」
「知ってる」
「でもやる」
沈黙。
数秒後。
「……勝算は?」
「ない」
「は?」
「でも作る」
レナが呆れたように目を細める。
「どうやって」
「簡単だろ」
少しだけ笑う。
「“あいつら同士で潰させる”」
空気が変わる。
「……本気?」
「本気」
「リスク高すぎ」
「今も高い」
レナは黙った。
考えている。
「……失敗したら?」
「終わり」
「成功したら?」
「自由」
短い沈黙。
「……」
「……」
「……やるなら」
レナが口を開く。
「中途半端はダメ」
「わかってる」
「徹底的にやる」
俺は頷いた。
こうして――
逃げる選択を捨てて、逆転の準備が始まった。
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