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金持ちから貧乏転生~金を取るか人を取るか~  作者: 有明


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14/20

第14話:横取り

金運最強、人運最悪だった男が――

異世界で“真逆の運命”を背負わされます。


ゆるく読める逆転系コメディです。

空気が、変わった。


 さっきまでの流れが嘘みたいに、静かになる。


「面白いことやってるらしいな」


 知らない男が、ゆっくり近づいてくる。


 後ろには、三人。


 全員、同じ匂いがする。


(盗賊……でも、別口か)


 さっきまでいた連中とは違う。


 雰囲気が、少しだけ荒い。


「……なんだよ」


 俺は一歩前に出る。


 レナは何も言わない。ただ、少しだけ位置をずらした。


 逃げ道を見てる。


 いつもの動きだ。


「その商売、俺らにも混ぜろよ」


 男が笑う。


 軽い口調。でも、目は笑っていない。


「断る」


 即答した。


 間を置く理由がない。


「は?」


 空気が、一気に冷える。


「もう組んでる相手がいる」


 顎で後ろを示す。


 さっきの盗賊たちの方向。


 もう見えないが、関係は伝わるはずだ。


「だから無理だ」


「……へぇ」


 男が、ゆっくりと首を傾げる。


「“先約”ってやつか」


 にやりと笑う。


「律儀だなぁ」


(めんどくせぇ)


 嫌な予感しかしない。


「でもさ」


 男が一歩近づく。


「それ、俺らには関係ないよな?」


 距離が詰まる。


 自然と、体に力が入る。


「どけ」


 短く言う。


「帰る」


「帰さねぇよ」


 即答だった。


 後ろの三人も、さりげなく道を塞ぐ。


(詰んだな)


 逃げ道は、ない。


 周りに人はいるが、誰も近づかない。


 関わりたくない、って顔してる。


(そりゃそうか)


 俺でもそうする。


「なぁ」


 男が手を伸ばしてくる。


「金、どんくらい持ってんだ?」


 袋に視線が落ちる。


(……来たな)


 完全に、“奪う目”だ。


「関係ねぇだろ」


「あるんだよ」


 笑う。


「これから関係作るんだからさ」


 手が、袋に伸びる。


 その瞬間。


「……やめときな」


 低い声。


 振り向かなくてもわかる。


 さっきの盗賊の男だ。


「……あ?」


 新しい男が振り返る。


「なんだお前」


「そいつ、俺らのだ」


 淡々とした声。


 でも、はっきりしている。


(来たか)


 正直、少しだけ安心した。


 だが――


(これ、まずくねぇか?)


 空気が、一気に重くなる。


「……はは」


 新しい男が笑う。


「縄張り主張ってやつ?」


「そんなとこだ」


「へぇ」


 視線が交差する。


 どっちも引かない。


 周囲の空気が、さらに冷える。


(最悪だな)


 完全に、巻き込まれてる。


「じゃあさ」


 新しい男が口を開く。


「そいつら、どっちに払うんだ?」


「は?」


 思わず声が出た。


「お前らに払って、俺らには払わないっておかしくね?」


 にやにやと笑う。


「同じ“守ってやってる側”だろ?」


(……クソ)


 話が、変な方向にいってる。


「こいつらは俺らの客だ」


 元の盗賊が言う。


「後から来たやつが口出すな」


「順番とか知らねぇよ」


 即返し。


「力がある方が取る。それだけだろ」


 空気が、張り詰める。


(これ……やばいな)


 ただの揉め事じゃない。


 取り合いだ。


 俺たちを巡って。


「なぁガキ」


 新しい男がこっちを見る。


「どっち選ぶ?」


「……は?」


「俺らに来いよ」


 にやりと笑う。


「そしたら、もっと楽に稼がせてやる」


(信用できるかよ)


 でも、断れば――


(即敵か)


 横を見る。


 レナも状況は理解している。


 でも、動かない。


 下手に動けば、一気に崩れる。


(どうする)


 選択を迫られている。


 でも――


(これ、選ぶ問題じゃねぇだろ)


 どっち選んでも地獄だ。


「……どっちにも行かねぇよ」


 口から出たのは、それだった。


 静かに。


 でも、はっきりと。


 その瞬間。


 空気が、凍る。


「……あ?」


 二つの視線が、同時に刺さる。


「何言ってんだお前」


「舐めてんのか?」


 圧が強くなる。


(……でもな)


 ここで流されたら、終わる。


 完全に、“物”になる。


「俺たちは、俺たちでやる」


 言い切る。


「勝手に取り合うな」


 沈黙。


 数秒。


 やばいくらい長い。


 そして――


「……ははっ」


 新しい男が笑った。


「いいねぇ」


「面白い」


 でも、その目は冷たい。


「じゃあさ」


 一歩、近づく。


「守り、いらねぇってことだよな?」


「……」


「なら、遠慮いらねぇな」


 空気が変わる。


 完全に、敵意。


(終わったな)


 そう思った、その瞬間。


「待て」


 元の盗賊が口を開く。


「こいつはまだ使える」


「知るかよ」


「今潰したら、誰も得しねぇ」


 短いやり取り。


 でも、意味は十分だった。


(……ああ、そうか)


 俺たちは、“金を生む存在”だから止まってる。


 それだけだ。


「……チッ」


 新しい男が舌打ちする。


「つまんねぇな」


 視線を外す。


「今日は引いてやる」


 だが――


「次はねぇぞ」


 その一言だけ残して、去っていく。


 空気が、一気に緩む。


 でも――


(全然安心できねぇ)


 むしろ、悪化している。


「……最悪」


 レナが呟く。


「縄張り争いに巻き込まれた」


「……だな」


 短く返す。


 理解している。


 これはもう、“商売”じゃない。


(戦いだな)


 しかも、逃げ場なし。


「ねぇ」


 レナが静かに言う。


「これ、もう限界」


「……」


「本気で抜けないと、終わる」


 その言葉は、今までで一番重かった。


 こうして俺たちは――


 稼ぎすぎたせいで、“奪い合われる側”にまで落ちていた。

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